週末婚2016 Vol.3

週末婚2016:なぜ妻は、仕事のトラブルを夫に相談しないのか?

前回までのあらすじ

週末だけ一緒に過ごす結婚・週末婚生活を送る諒介と理帆子。しかし、結婚3周年記念日に理帆子から同居の提案をされ戸惑う諒介。

二人の気持ちが初めてすれ違う形となり、理帆子はそのまま仕事でミラノへ。しかしそこでトラブルが発生。一方の諒介は理帆子とは対照的に仕事のチャンスが到来!?

週末婚2016 vol.2:夫への思いやりがアダになった結婚記念日。そして、ミラノで待ち構えていた罠


神宮外苑の木々は、蕾をほころばせようとしているところで、もうすぐ美しい新緑の季節を迎える。いつもは、清々しい気持ちで通勤ルートであるこの道を諒介は歩いていくのであるが、あれ以来、気持ちはどこか沈んだままであった。

諒介のマンションは青山一丁目にある。広さは50平米弱の1LDKで、家賃は20万円ほどだ。

正直を言えば、今の自分の収入からすればかなり無理をしているのだが、自分の倍以上の賃料のマンションに住んでいる理帆子に追いつきたいと、自分にハッパをかける意味もあってこのマンションを選んだ。

何よりも、テラスからは神宮外苑の美しい緑が臨め、深夜まで仕事がかかることなどざらであるから、事務所のある千駄ヶ谷まで歩いていけることもこのマンションに決めたポイントだった。

それにしても、今更同居をしようとは一体どういうつもりなのか。理帆子の言い分はこうだ。

ー今回のミラノサローネでの仕事が成功したら、私もようやく仕事を選べる立場になると思うの。今よりは落ち着いて仕事をできると思うのね。今まで奥さんらしいことなんて何もしてあげてなかったし、これからはもう少し諒介のためになることをしてあげたいと思って。

今思えばね、週末婚をしようって言ったのは、私の勝手だったかなって思ったの。諒介は週末婚なんて望んでなかったんじゃないかなって思ったのよ。だから、同居してみない?ー

週末婚を始めたのは昨日、今日の話ではない。既に3年も経っているのだ。

そもそも、週末婚を提案したのは理帆子自身である。今度はそれを解消して同居しよう、それも諒介がそう望んでいるだろうから、とは随分と傲慢で身勝手な言い分ではないだろうか。今回の理帆子の提案は、夫である自分をあまりも甘く見下している、と諒介には感じられたのだった。

結婚した友人たちは、数年も経てば、家事の分担だの、小遣いが少ないだの、子どもが出来てからは夫なんてATM扱いだの、と言った愚痴を良く聞くが、そういった不満はなかった。

実際、一緒に住んでいないので、恋愛をしていた時とそう変わったことがないのだ。週末に外食する時の食事代くらいは諒介が払うことが多いが、それとて毎回ではなかった。

家計はお互いに独立し、住居費も光熱費も全く別々である。毎日必ず連絡を取り合う、というルールも決めていないので、物理的な生活の部分では独身時代と何も変わりがなかった。

ただ、変わったのは、自分の気持ちだ。

女々しい、と言われるかもしれないが、素晴らしい才能を持ち、美貌に恵まれ、気高き精神を持った完璧な女が自分の妻なのだ、という紛れもない事実は、諒介の仕事に向かう姿勢を支えてくれた。また、理帆子には及ばないが、結婚してからの仕事は一層順調であることも大きかった。

つまり、万事は順風満帆であったのだ。それをなぜ今、変えようというのか……。

ぼんやりと考え事をしながら外苑の中を歩いていくと、いつの間にか勤務先の事務所に着いていた。

【週末婚2016】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ