崖っぷちアラサー奮闘記 written by 内埜さくら Vol.14

崖っぷちアラサー奮闘記:ホステスを続けるか就職するか。人生の岐路に立たされる!

前回までのあらすじ

北岡涼子、30歳、元女優。社会人経験なし、資格なし、貯金なし。芸能界で活躍したが、徐々に干されて今に至る。就職活動をしようにも、「綺麗」以外の特性がないため続々と不採用通知を受け取る。

そんななか大先輩の小田につれられて足を踏み入れた、銀座の超高級クラブ『銀華』の由紀ママにひょんなことから店にスカウトされ、夜蝶デビューを果たす。

仕事に奮起する涼子に由紀ママから「ママにならないか」と打診が。そして一番信頼している片桐からも転職話を持ちかけられる。

だが、オファーはそれだけに留まらず……。

第13話:崖っぷちアラサー奮闘記:アラサーだけど守り通した女の操、絶体絶命の大ピンチ!!

「転職?」

唐突すぎる片桐の提案に驚き涼子がおうむ返しに聞き返すと、涼子が驚く様を見ながら片桐は話を続けた。

「そう、転職。涼子ちゃんは車の免許を持ってないんだよね? 就職したこともないって言ってたけど、車の免許と宅建の資格を取れば、僕の会社で採用するよ。

涼子ちゃんは営業力がある。最近の仕事ぶりを見て常々感心してたんだ。それに宅建があれば給料とは別に手当も出るし、宅建は一生モノの資格だよ。

行政書士とダブルで取得して独立してる知人もいるから、人生の選択肢を広げることができる。どうだろう、考えてみないか」

――わたしが一般企業に就職できる……!

片桐の申し出に、涼子は喜びの気持ちとともに戸惑う感情が芽生えている自分を発見した。つい先ほど由紀ママから「5年の修行の後、ママにならないか」と打診をされたばかりだからである。

日本一地価が高いこの銀座で店のトップを張るには、相応のプレッシャーを抱えることは想像に難くない。だがその報酬は一般的な職業では得られないほど高額なはずである。

ここ数ヶ月、脳梗塞で倒れた父と父の看病をする母のため月に10万の仕送りをしてきたが、毎日かかる美容院代や帰りのタクシー代に税金が引かれた月27万ほどの給料から仕送りして東京でのひとり暮らしの生活を成り立たせるのは正直、厳しかった。だからこそ、お金のためと割り切って夜蝶になった涼子にとって、高額な報酬は魅力的なのである。

一方で「ちょっと待って。」とママへの道に賛成しない自分もいる。両親にホステスをしている現状は伏せている。

潤沢な仕送りを続けることができたとしても、いまの自分の職業を知ったら、昔気質の両親は悲しむのではないか。30歳にもなれば、子供の幸せが両親の幸せにつながることは解っている。

だとしたらいま、水商売から足を洗い、片桐が提案してくれたプランに乗って地道にキャリアアップするほうがいいのではないだろうか。ホステスを続けながら車の免許と宅建の資格を取り、転職できたら両親に報告して仕送りの額を減らしてもらえばいいではないか。

そもそも月10万の仕送り額など自分には無理だったのに、どうして肩肘張りすぎてしまったのだろう――。と思いを巡らせていると現実に引き戻された。

「片桐さん、あの、わたし……。まだ仕事を始めたばかりだから生活を成り立たせるほうが先で、あの……」

貯金がないと言えずにいると片桐が「心配しないでいいよ。」と涼子の肩に手を置く。

「車の免許とか資格にかかる費用は僕が出すから」
「どうしてそこまでわたしに良くしてくれるんですか?」

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