崖っぷちアラサー奮闘記 written by 内埜さくら Vol.13

崖っぷちアラサー奮闘記:アラサーだけど守り通した女の操、絶体絶命の大ピンチ!!

前回までのあらすじ

北岡涼子、30歳、元女優。社会人経験なし、資格なし、貯金なし。芸能界で活躍したが、徐々に干されて今に至る。就職活動をしようにも、「綺麗」以外の特性がないため続々と不採用通知を受け取る。

そんななか大先輩の小田につれられて足を踏み入れた、銀座の超高級クラブ『銀華』の由紀ママにひょんなことから店にスカウトされ、夜蝶デビューを果たす。

先輩ホステスの杏奈の太客のアフターを紗耶香から頼まれるが、そこには“ある女”の陰謀が……!!


第12話:崖っぷちアラサー奮闘記:どん底涼子の前に現れた紳士は「救い」か「罠」か

『銀華』の閉店後、涼子は客の奥山精一とふたりきりで、六本木にある『FIORIA aria blu(フィオーリア アリアブル)』の個室に入った。奥山は先輩ホステスの杏奈の太客だが杏奈は生理で具合が悪く、代理を頼まれた紗耶香も今夜は都合が悪かったため、涼子がピンチヒッターでアフターを引き受けたためだ。

「芸能人とかスポーツ選手もよく来る店なんだよ」

そう奥山が自慢気に話すとおり、真っ白なソファーが置かれた広々としたVIPルームは邸宅のリビングを想像させる重厚感ある作りで、涼子は「ここが本当にカラオケボックスなの……?」と息を呑んだほどである。

ホテル出身の一流シェフが考案した豚ロース肉のグリルが美味であることはもちろん、スティック野菜は目に美しい彩りを放っている。ホステスは勤務中、食事はできないためお腹が空いていた涼子は、奥山がオーダーしたメニューを少しずつ食しながらも一方では不安が拭えずにいた。

奥山と自分は初めてのアフターだというのに、奥山が当然のように個室という密室をチョイスしたからである。

――片桐さんとだって、個室でのアフターはつい最近が初めてなのに……。

涼子は最低でも週に3回は同伴とアフターをしてくれるうえに、週末はゴルフレッスンまでしてくれる片桐の顔を思い浮かべ、「酔わないようにしたほうがいいかもしれない。」と気を引き締めた。

奥山は片桐より年上の40代後半だが、片桐と同じく若手実業家と呼ばれる部類の人種である。しかし奥山は片桐に比べて、人間としての“品”が欠けているように涼子には映る。片桐と違い、粘つくような視線でにやにやと自分の全身を眺める様子から、涼子はそれを察知していた。

酔わないようにするため涼子は、チェイサーを片手に飲み物を白ワインからウコン茶ハイに切り替える。

「あれ、涼子ちゃんどうしたの? もっと飲みなよお」

奥山に勧められても「そうですよね。もっと飲まなくちゃ。」と硬くなりそうな顔の筋肉を無理にほぐして笑顔でいなし、涼子はトイレへ行くため席を立つ。

部屋に戻って来ると奥山がサザンオールスターズを熱唱している。その横顔を見ながら酒を一口飲むと、涼子は急激な眠気に襲われた。

――なにこれ、どういうこと!? こんなに急に眠くなるなんて、なにかおかしい――。

曲の途中で歌うのをやめ、にやけながら自分を見ている奥山に「なにをしたんですか?」と聞くこともままならず、涼子は意識を失っていった。

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