でも『麻布 かどわき』だと方面が違うか……そう思って歩いていると、
「ここだよ」浩哉の笑顔の先には、野菜がウリのチェーン店があった。
「……野菜がおいしいお店って、ここのこと?」
「さすが!よく知ってるね。さぁ入ろう。」
邪気のない声で答える。ここは某ファッションビルにも入っているチェーン店だ。母親と行ったことがある。しかし、28歳社会人がファーストデートで行く店なのだろうか?
絵理奈は仕方なく店に入った。まだ逃げ出す訳にもいかない。
「……それで、結局このプロジェクトは立ち消えになった。ウチの会社はまだまだ古い体質で、頭の堅い連中が多いんだ。」
23時を回り、彼はまだ熱弁をふるっている。早稲田男子は、女子の反応に限らず、何事にも"アツく”語る連中が多い。浩哉は会社の体質の古さを嘆き、会社を辞め農業を基盤とした会社を起こしたい、と2時間近く話している。
ーこんなこと話してる暇あったら、さっさと起業しなよ……。ー
絵理奈は上の空だったが、何とか相槌を打つことによって会話を成り立たせた。
しかし、我慢の限界を感じた。
「ちょっとごめんね。」そう言って、席を立つ。そして、トイレから戻った絵理奈は言った。
「さっきから頭痛がして……。ごめん、今日はもう帰るね。」浩哉は慌てふためいたが、一刻も早く帰りたそうな絵理奈の様子を見て、よほど具合が悪いと思ったのかタクシー代をくれた。
◆
「いい人なんだけどなぁ……。」期待値が高かった分、散々な気分だった。
家に着いたのと同時に、浩哉から体調を心配する内容のLINEが来た。次はないな、そう思いながらもコニーのスタンプを返信しておいた。早稲田卒として完璧に近いステイタスの男を、易々と手放すのも口惜しい。
早稲田男子・浩哉「店のレベルで男を格付けする女なんて、願い下げです」
一方の浩哉は絵理奈をどう見ていたのだろうか?
ホームパーティーのときから、絵理奈のことは気になっていた。スタイルはまぁままぁだが、顔は上の中レベル。華やかな雰囲気の美人で、男友達にも自慢できそうだ。ワセ女にはない、いい女感を醸し出しているのがいい。
そんな慶應女子とのファーストデート。悩みに悩んだが、よく行くチェーン店を選んだ。野菜が好きだと聞いていたし、チェーン店なら味も安心だ。自然体で、お互い無理をしないデートをすることが浩哉のモットーだ。
しかし、何と言ってもブランド好きな慶應女子。お店選びにはうるさいかもしれない、そう頭によぎったが、店のレベルで男を格付けする高飛車な女は、こちらから願い下げだ。そう思っている。周りの男友達もそんな感じだ。
そんな思惑で絵理奈をあの店に連れて行った。浩哉の話を真剣に聞いてくれ、途中で具合が悪くなってしまったが、デートは成功だと確信した。
次は少し、ムーディーな感じで攻めたい。薄暗い照明の個室で彼女を口説こう、そう思い、浩哉が絶大な信頼を寄せる『裏NO庭』に誘うことに決めた。
◆
絵理奈のLINEに通知が。浩哉から次のデートのお誘いだ。しかし、またもや大学生が行くようなチェーン店で、ひどくがっかりした。
その日は大手総合商社マンとの合コンがある。次のアテがあるうちは、引き際は早い方がいい。早稲田男子は不発に終わったが、様々な男とデートしてじっくり見極めよう、そう思い直し彼のLINEは未読スルーした。
次週3.20更新予定
社会人デビュー組な、総合商社マンとの合コン
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