2016.03.13
学歴カレンダー Vol.1
東京での恋愛。三低がウケる時代になったとはいえ、未だにスペックを無視できない人は少なくないだろう。女性が選ぶ男性は、高収入、高身長、そして、高学歴……? 揃っているに、越したことはない。
なかでも、高学歴の女性にとって、相手の男性の学歴が全く気にならないといえば嘘になる。
神奈川県の公立高校から、慶應義塾大学法学部政治学科を卒業後、丸の内の大手人材会社に勤める絵理奈は28歳。高校時代から10年間付き合った、明治大学卒で電機メーカーに勤める元カレからの「40万円程度の婚約指輪」によるプロポーズを受け、自分が求める世界との違和感を埋められずに、その申し出を断った。
彼女の周りの友人も、“恋愛対象になるのは最低でも早慶レベル”と口を揃える。
絵理奈が様々な学歴の男性とデートを重ね、学歴と恋愛、結婚の相関関係を検証していく。
ホームパーティで出会った、早稲田政経卒のラガーマン。
「ホームパーティー?」
3月のとある日、早稲田出身の男友だちから連絡があった。早稲田出身の男と出会う機会は意外に少ない。周りの友達の多くは慶應出身だし、合コンでも相手は慶應卒が多い。
早稲田男子は垢抜けない、と嫌がる女友達もいる。しかし、バンカラで男らしい雰囲気があるので、絵理奈は嫌いではない。
ホームパーティーには、男女合わせて10人ほど集まった。会場は芝浦のタワーマンション。男性陣は大学時代の留学サークルの仲間らしい。国際色が強く、人としてのレベルが総じて高いと感じた。その中で一人、積極的に声をかけてきた男がいた。浩哉、30歳。赤坂にある貿易関連の会社に勤めている。絵理奈が慶應卒だと知ると、
「絵理奈ちゃんは慶應ガールなんだね。」
と、警戒しているようだった。
早稲田男子が慶應ガールに抱くイメージは、“プライド高そう“、“お金かかりそう“、“欲張りでわがままそう。”
そんな話を聞いたことがある。(そしてそれは、決して間違いではない。)
しかし、早稲田男子は根が田舎者が多そうなので、慶應の華やかさに憧れを持つ男性も少なくないはずだ。絵理奈はそう踏んでいる。
ホームパーティーの後、毎日のように浩哉から来るLINE。既読スルーしても、ガツガツ送られてくるブラウンのスタンプ。女性の扱いにはあまり慣れていないようだ。しかし、絵理奈は元カレと別れたばかり。腕ならしにはちょうどいい。
日々のLINEの中で彼のステイタスをそれとなく聞き出した。高校から早稲田に入り、大学は政治経済学部政治学科に進学。中学まではサッカー、高校からラグビーを始めたらしい。実家は目黒にあり、代々続く政治家の家系。父親は国会議員で、母親は専業主婦。
絵に描いたような早稲田男子だ。予想以上のステイタスに、気持ちが浮き立つのを感じた。
ファーストデートで麻布十番を指定。案外、彼は遊び慣れている?
ファーストデートは、金曜21時、麻布十番を指定された。実は、結構遊び人なのかもしれないと、気を引き締めた。
絵理奈は、早稲田男子に嫌われないよう、分かりやすいブランド物は避けることにした。いつも使っているイヴ・サンローランからFURLAの鞄に持ち替える。
デート当日、浩哉はすでに待ち合わせの改札にいた。ゆっくりと近づきながら彼の様子を観察する。
身長が高く、ラグビーをやっていた彼は、私服よりスーツの方が断然見栄えが良い。左腕に光る時計も、ブランドは分からないが悪くない。スーツの着こなしは及第点、安心して声をかけた。
「浩哉くん! お疲れさま。」今着いたかのように声をかけた。
「おぉ、久しぶり。」彼の目の動きをゆっくり観察する。
「絵理奈ちゃん、今日はできる女って感じだね」彼は少し照れながら言った。
「野菜が好きって言ってたよね?野菜が美味しい和食店を予約したよ。」
絵理奈は胸が高鳴った。和食の『麻布 かどわき』とかだろうか。季節ごとの食材を贅沢に使った会席料理は是非食べてみたいと思っていた。今日はツイてるかも……そう思い、彼のあとをついていった。
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