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  • シンガポール・ラブストーリー Vol.1

    シンガポール・ラブストーリー:34歳・失恋女、傷心のひとり旅で思わぬ恋の予感

    三友商事
    科学薬品部
    アジアマーケティング課
    佐野 誠

    ランチ後、2015年に世界遺産にも登録された植物園『ボタニック・ガーデン』に向かい、道中Facebookで先ほどの男性の名前を検索する。同姓同名でシンガポール在住がひとり。この人だ。アイコンは似顔絵で、カバー写真は東南アジアっぽい熱帯雨林。それ以外は見ることができない。

    一瞬しか見なかったけれど、端正な顔立ちのすらっとした人で、似顔絵よりも実物の方がよっぽど格好いい。ナンパ慣れしているのか、なんの躊躇もなく自然と名刺を置いていった。

    そんなことをぼんやり考えながら、園内を歩いて回った。熱帯の鮮やかな花に溢れていて、気持ちが自然と癒やされていった。特に6万本1000種類もの蘭が植えられた世界最大規模の蘭園は夢の世界のようで、写真の撮りどころもたくさん。やっぱり真希と一緒にきて、ふたりの写真をSNSにアップしたかったな。

    『ボタニック・ガーデン』
    2015年にシンガポール初の世界遺産にも登録された植物園。敷地面積は52ヘクタールと広大で、そこかしこに南国の花々が咲き誇る

    植物園を後にし、近くにある『PS.cafe』でお茶をする。ここは、東京にはまずないロケーションで開放感が凄い。テラス席は森の中でお茶をしている気分になれて、まだお昼だけれどついビールを飲んでしまった。羽田にいた時よりも気分は少しよくなっていた。植物の力は偉大だ。

    『PS.cafe』
    カフェ使いから、本格的なディナーまで幅広い用途で人気の店。近隣は高級住宅街で、有閑マダムたちのブランチもよく見受けられる。ボリューム満点のハンバーガーやフィッシュ&チップスがおすすめ

    今晩何を食べようかと考え、思い出したのが真希との会話だった。

    「やっぱりシンガポールに行ったらチリクラブ食べたいよねー!」

    雑誌のグルメ担当でもある私は真希に提案して、彼女もノリ気になっていたのだ。殻ごとの大きな蟹に甘辛いソースが惜しげもなくかけられた逸品を、存分に堪能したい。

    でも、チリクラブはさすがにひとりでは食べられない。とはいえシンガポールに来てチリクラブを食べないなんて寂しすぎる! どうしても食べたい……と考えていたときに、先ほどの男性のことがふと頭に浮かんだ。

    「もしも何か困ったことがあったら」

    と言っていたけど、私のこのシチュエーションって十分に“困ったこと”ではないか!?

    いま、この国で失うものは何もない。こんな時くらい、いいでしょ。会ったその日であるけれど、彼の会社にメールを送る。

    ________________________
    佐野さま

    突然のメール、失礼します。
    私、さきほどホーカーでお会いした日本人女性の観光客です。
    いまさらですが、はじめまして。小西梨花といいます。
    シンガポールは緑がとても多くて気持ちがいいですね。
    いまは『ボタニック・ガーデン』の隣にあるカフェにいるところです。

    実は、今回は友人とふたりでシンガポールを旅行する予定だったのですが、
    彼女が体調を崩し来られなくなってしまったんです。
    今日の夜、シンガポールでひとり何を食べようかと考えていたのですが、
    もし「これは!」というおすすめがあれば教えてください。

    あと図々しいお願いではあるのですが、
    私どうしてもチリクラブを食べてみたくて、
    もしも今週の夜で空いている日があれば一緒にいかがでしょうか?
    お返事もらえたら嬉しいです。

    小西梨花(090-xxxx-xxxx)
    ________________________

    チリクラブが高額ということが気になったけれど、ちゃんと払うとそのとき言えばいいだろう。Gmailを閉じ、『PS.cafe』を後にする。

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