香港ガールの野望 Vol.3

ディナーの後、丸の内仲通りのイルミネーションへと向かった2人は...?

前回のあらすじ

東京女子・マリと扮した香港人マギーは、丸ビル最上階のレストランにて理想の男性・裕二との食事を楽しんでいた。午後9時40分、勝負の夜に備えるべく化粧室へと向かいお色直しを終えたマギーは、パスポートを紛失したことに気づく。動揺を隠しつつ席に戻ると、そこにはパスポートを持った裕二が立っていた…

前回:香港ガールの野望 Vol.2:極上男を掴みたければ、したたかな女になれ

差し出されたパスポートに、くっきりと刻まれたHONGKONGの8文字

―これは、間違いなく、私のパスポート

マギーはしばらくの間、パスポートを見つめていた。その表情からは、何の感情も読み取れない。

ほんの数秒が、妙に長く感じられた。

「あら、ありがとう!」

約3.5秒間の沈黙の後。にっこりと微笑みを浮かべお礼を述べたマギーは、なんのためらいも見せず男の手からパスポートを受け取った。

「君はもしかして、香港人なの…?」

恐る恐る口を開いた彼に、マギーは顔を上げると、あっけにとられたように裕二の顔をながめ、突然クスクスと笑い出した。

「やだ、裕二さん。これ、私のだと思ったの?」

まるで裕二がエベレスト級のジョークを飛ばしたかのように笑うマギーに、裕二は慌てて首を振る。

「いや、まさか。でも、マリちゃんのバッグから、落ちたものだから…」

バツが悪そうに頭を掻く裕二を横目に、おかしくてしょうがないというように笑いながら、マギーは口を開いた。

「これは、香港人の友人・ラムさんのパスポート。彼女香港でファッションデザイナーをしていて、今研修でうちの会社に来ているんだけれど、今日の午後一緒に出かけた際にパスポートを電車の中に忘れていっちゃったの。明日渡そうと思っていたのだけれど…」

「まさか勘違いされるなんて」と笑いながら話すマギーに、裕二は「ごめん、俺、すごい勘違いだね」と恥ずかしそうに頭を掻いて笑った。

噓も方便。無事ピンチを切り抜けたマギーは、ほっと胸を撫で下ろした。



次の日、午後1時20分。

マギーは日比谷駅から徒歩1分のところにある和食レストラン『春秋ツギハギ』にて、厳選されたA5ランクの黒毛和牛に舌鼓を打っていた。

目の前に座るのは、「キープ君その1・吾郎」。3ヶ月前、東京に住む友人・ナオミの代わりに参加した合コンで知り合った、31歳のメガバンク金融マン。

収入も悪くなく、見た目も決して悪い訳ではないのに、なぜか女たちから本命として選ばれない残念男。

先ほどから聞いてもいないのに、「俺のこんなところが駄目で、あんなところが駄目で」と繰り返す男に、マギーは「そうなんですか〜大変ですね」とオウムのごとく返事をしつつ、昨夜のことを考えていた。

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