香港ガールの野望 Vol.2

極上男を掴みたければ、したたかな女になれ

前回のあらすじ

「シンデレラが王子様のハートを射止めたのは、誰よりも美しく輝いていたから」―そう信じて疑わないマギーは(27歳)は、ファッション、グルメ、そして「美」を愛する生粋の香港ガール。服も名前も全て脱ぎ捨て、お洒落で優雅な東京女子・マリと扮した彼女は、裕二と名乗る男性からの連絡に心躍らせるが…

前回:香港ガールの野望 Vol.1:シンデレラ・ガールはこうして作られる

午後8時20分。丸の内中央口へと向かう途中、すれ違う女性たちを見てはずいぶん地味になったものだとマギーは眉をひそめていた。

7年前は、あんなにキラキラして見えたのに…

黒髪ブームのせいだろうか。それとも森ガールやら山ガールやらよく分からないオーガニックブームに踊らされて、背伸びするのをやめてしまったから?

聞いた話では、日本の若い世代ではどんどん高級ブランド離れが進んでいるのだとか。銀座に立ち並ぶハイブランドの売上は、大部分が中国人の爆買ブームに支えられているのだとか…

もはや、野望を持たない東京女子は、香港ガールの相手ではない。

「どう?この華やかさ。東京の極上男は、私がいただくわ。」

首を左右に傾け、ビルの光に反射して輝くライトブラウンの髪をたなびかせたマギーは、ウィンドウガラスに映った姿にポーズを決めると「うふふ」と微笑んだ。



「マリちゃん!」

暗くなった空に浮かび上がる、赤レンガの駅舎。まるでお城のようだとうっとり眺めていたマギーは、偽りの名「マリ」を呼ぶ男の声に振り返った。

「あら、裕二さん!」

かしげるように首を傾け、口元にはやさしい笑みを浮かべて。蝶が舞うように男のパーソナルスペースへと舞い込んだマギーは、まるで恋人同士であるかのように彼の目を覗き込むと、ダウンごと裕二を抱きしめた。

「ま、マリちゃん」

急なハグに驚いたのか無意識に後ずさろうとする裕二を、逃さないと言わんばかりに抱き寄せ、「会いたかった」と上目遣いで微笑む。裕二から漂うシーソルトの甘くセクシーな香りに酔いしれながら、マギーはさりげなく裕二の服・持ち物に目をやった。

ヘルノのダウンに、フェラガモの革靴。鞄は恐らくプラダの新作で、時計は…王道のロレックス。

「さすがね」

そう心の中でつぶやいたマギーは、パッと体を離すと、「ごめんなさい、嬉しくってつい」と無邪気に笑い、恥ずかしそうに口に手を当てた。

宮本裕二、33歳。この年にして、丸の内に個人の法律事務所を持つ彼は、「見目好し、性格好し、スペック好し」。三拍子揃った、まさしくマギーの理想の男性だ。

2人が知り合ったのは1ヶ月前、彼の事務所の前で。足を挫き、動けず踝をさするマギーの前に、救世主のごとく現れたのが裕二だった。

「どうしましたか?大丈夫ですか?」

「すみません...足を挫いてしまい、歩けないんです」

涙目で助けを求めるマギーを部屋へと上げ、介抱するうちに、恋心が芽生えていた…そんな映画のような出会いを経て、今夜再会を果たしていた。

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