リアル働きマン葉子!黒革の編集手帳 written by 内埜さくら Vol.11

リアル働きマン葉子!“おばさん”扱いされた翌日に、「結婚前提」オファー!

前回までのあらすじ

食雑誌である『月刊東京ウォーキング』の編集者・高嶋葉子(35)は、この道10年目の中堅、未婚、彼氏アリ。

誠実で愛すべき 年下彼氏である橘 京太郎(28)は心優しき性格が災いして、浮気問題に発展。「信じる」と決めた葉子の前に、また新たな“コムスメ”という強敵が……。

しかもモトカノというスタンス、若さというアクセサリーで揺さぶりをかけてくるマウンティングがこれまた……!

そんななか、思い出深い夜のお相手が目の前に現れる。

駅で2人が別れたのを見届けてから、梨沙は紗耶香の肩をぽんぽんと叩いて呼び止めた。

「あなた、京太郎と同じ会社の人でしょ?」

 訝しげな目で見つめ返す紗耶香を無視して、さらに言葉を重ねる。

「私、京太郎とはK大の同級生なの。会社帰りに偶然、見かけたんだけどあなたとなんだか揉めているみたいだったから、声をかけそびれて駅まで来ちゃったってわけ」

 京太郎の出身大学を知っていた紗耶香は、同じ大学名を出されたことで心を許した。

「そうだったんですね。すみませんでした」
「あなた、彼のことが好きなんでしょう」
「なんでそれが……」
「さっきの2人を見てたら誰だってわかるわよ。それに彼、大学でも女の子に人気があったから、京太郎に片思いしてる子たちの相談、しょっちゅう聞かされてたのよ、私。よかったらお茶でもどう? なにか力になれるかもしれないわ」

 人を疑うことを知らない紗耶香は、梨沙が京太郎を待ち伏せしていたことも、大学時代、京太郎に片思いしている同性から恋愛相談を受けていたのが嘘だということも勘繰ることはせず、名前を聞かれて「倉田紗耶香です」と、素直に答えて梨沙とカフェに向かった。

梨沙がよく来るという『M/HOUSE』のスタイリッシュな外観、それに沿う内観を目にして、紗耶香は息を呑んだ。

「すごい……! こんなお洒落なお店、私来たことありません」
「紗耶香ちゃん、会社帰りだからお腹空いてるでしょう。たくさん食べて」

 にこりと親しみ深げな笑みを投げかけ紗耶香に嫌いなものはないかを確認した後、梨沙がウエイターにシーザーサラダやサーフ&ターフ、キッシュにパスタ、ハーブティーなどを次々とオーダーする。

 紗耶香は焦った。いくら給料日後とはいえ、割り勘でも支払いが多めになると予測できたからだ。

月収は手取り15万円だし、初対面の相手と高額な割り勘を強いられるのは気乗りしない。だが、梨沙1人で完食できる量でもない。

「あの、私いまお腹が空いてないので……」
「気にしないの。今日は私がごちそうするから」
「どうして初めて会う私に、そんなに親切にしてくれるんですか」
「紗耶香ちゃんを見てたら大学の同級生を思い出して、なんとかしてあげたくなっちゃったの。今夜はお近づきのしるし。でも、ごめんなさい。私、お節介だったかしら」

 京太郎の学生時代の友人である梨沙が、悪い人であるわけがない。それに、年上の相手に「ごめんなさい」と言わせてしゅんとさせてしまった申し訳なさも追い風となり、紗耶香は今夜だけ、梨沙に甘えることにした。

この立ち位置が決まってしまえば、紗耶香は梨沙の策略に嵌められたも同然だった。言葉巧みに現状を聞き出され、紗耶香は、入社当時から京太郎に憧れていたこと、2人で飲みにいった際、酔って京太郎の自宅に泊めてもらったこと、そして自分からキスしてしまったことを打ち明けた。

(なにかあると思ったけど、やっぱりね)

 ほくそ笑みたい気持ちを押し殺しながら、梨沙は、入れ知恵して焚きつけることも忘れなかった。

「家に泊めてくれたってことは、憎からず思っている証拠よ。もっと強気で押したほうがいいと思うわ。じゃないと、結婚を急かしてる年上の彼女に持っていかれちゃうわよ」

 梨沙が紗耶香を手中に収めかけているころ、葉子は才島と青山の裏手にある『ヒロヤ』で食事をしていた。

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