美食家たちが選ぶ「私を変えた一皿」を14品、一挙ご紹介!

フードライター 森脇慶子のBest Choice

厚さ2~3㎝にカットしたカジキマグロは、肉を思わせる力強さと旨みが圧巻。この厚みも旨さの秘訣。しっとりした食感も印象的。以前は気仙沼産を使っていたが、今は和歌山やオーストラリア産を使用。¥2,600

『トラットリアシチリアーナドンチッチョ』の「カジキマグロのパレルモ風」

私にとってのそのひとつに『トンマズィーノ』(現『トラットリア シチリアーナ ドンチッチョ』のカジキマグロのパレルモ風がある。それまでのカジキといえば照り焼きか粕漬けのイメージしかなかった私に、火を通したこの魚の旨さを初めて教えてくれたのがこれ。

まず目を見張ったのはジューシーさだ。しっかり火が入っているにも関わらず、身はしっとりとして豊潤。口中に溢れ出る旨みのジュースは肉汁とでも呼びたいほどの存在感だ。

旨さの秘訣は、まず上質の脂がのったカジキを選ぶこと。そして回りを覆う細かなパン粉にある。オレガノ、ペコリーノチーズにトマトソースを隠し味に加えたパン粉は、いわばカジキマグロの(美味しい)皮代わり。

旨みを閉じ込めるのに一役買うと共に、炭火の魔力が身をふっくらと焼き上げる。

コース¥12,600の一品。鳩の内臓のソースは、鳩の砂肝とレバーを、ジンやねずの実と共に3年間じっくりと漬け込んだ、いわば塩辛。上には、エスプーマにかけたブータンノワールを添えてある

『ル・マンジュ・トゥー』の
「鳩のロースト」

鳩の真味を脳裏に刻み込まれたのは『ル・マンジュ・トゥー』。谷昇シェフの鳩料理だった。鳩を丸ごと一羽食べたような食後感に圧倒されたビスクも忘れ難い味だが、それにも増して印象深いひと皿となったのは、鳩のロースト。

しっとりと品のいい血(=鉄分)の味が広がる鳩自体の旨さもさることながら、意表をつかれたのは、サルミソース代わりに添えた肉醤。ジンやスパイスと共に塩漬けにした鳩の内臓をそのまま裏漉したソースである。

自然が醸し出す熟れた旨みでバターやクリームに頼らぬコクと深みを演出――その塩梅の心憎さ。
このひと皿からは、谷シェフの、主役は肉、ソースはあくまでも脇役に徹すべきとの主張がこめられている。

新潟県魚沼のコシヒカリの土鍋ご飯コース¥12,600〜の締めは必ずこの炊きたての白飯。甘み、艶共に素晴らしいが、圧巻は何と言っても香り。その香りだけで、何もつけずとも、一杯はいける。おこげも美味

『新ばし 笹田』の「土鍋ご飯」

一方、白飯なら『笹田』。仕事柄、旨いご飯はそれなりに食べこんでいるつもりだったのだが、ここの白飯を口にした時、改めて白飯の醍醐味に息を呑んだ。だからといって特別凄いことをしているわけではない。

米は笹田さん自身が感動したという魚沼産のコシヒカリ。精米仕立てを週に2~3回取り寄せる。これを九州高千穂の豊潤水で客の顔を見てから炊き始める。

こうして炊き上がった白飯は、胸をすく甘やかな香りと艶が素晴らしい。何もつけずとも実りの味に満ちている。

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