港町の風情ただよう横浜で、東京と変わらぬムードの店を選ぶのは無粋。
独自の食文化を築いてきた横浜で、真に格好いいとされるのは流行りではなく「本当に旨い老舗」を知る知的な大人だ。
どこか温もりを感じる空間で、実直で確かな味を前にして、大切なあの人は、紡がれる歴史と小粋な店選びに心つかまれる。
今回は、勝烈・蕎麦・おでんの名物で食通を魅了し続ける「至高の和の老舗」3店をご紹介します。
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1.唯一無二のソースのとりこになる。ハマっ子が愛するソウルフード
『勝烈庵 馬車道総本店』
横浜には浪漫という言葉がよく似合う。歴史的建造物を眺めながら、ガス灯に照らされた道を歩くと、思わずドラマの主人公になったような気分になる。
3回目のデートで流行りの店ではなく、あえて港町の歴史を紡ぐ老舗を選んでくれた彼の粋な選択に、密かに胸がときめいた。
高揚する気分を抑えながら辿り着いた『勝烈庵 馬車道総本店』は、昭和2年に創業したかつれつの専門店。
暖簾をくぐると店内のいたるところに棟方志功の作品が飾られていて、温もりある空間にふっと緊張がほどけていく。
絶品ソースをだくだくに。なんだか彼との距離が縮まった気がする
着席し、ほどなくして運ばれたヒレかつのこんがりとした揚げ色にうっとり。
「ソースはなみなみとかけるのがいい」という彼のアドバイスに従い頬張ると、しなやかな肉の旨みとキレのあるソースの甘みが口いっぱいに広がった。
旬の果実をふんだんに使った秘伝のソースにこそ、100年近く愛される秘密があるのだろう。
2軒目で向かった『BAR 馬車道』で煌めくバックバーに圧倒されながら、ドラマティックで奥の深い横浜の夜と彼のセンスの良さに、すっかり魅了されている自分がいた。
■店舗概要
店名:勝烈庵 馬車道総本店
住所:横浜市中区常盤町5-58-2
TEL:045-681-4411
営業時間:11:00~LO21:00
定休日:無休
席数:カウンター12席、テーブル118席
2.偉人たちの胃袋も掴んだ圧巻の海老天に驚愕する
『⻆平』
横浜駅から歩くこと数分。駅前の喧騒を少し離れると、温かい明かりが夜に浮かび上がっていた。
「見たことない蕎麦、見せてあげる」と彼に連れられたのは、創業76年を迎える『⻆平』。
店内を見渡せば、三角巾姿の女性たちが忙しなく行き交い、「天丼がついて、3杯大つけ!」と威勢の良い通し言葉が響く。
中心できびきび指示を出す2代目の藤江壽子さんは、15歳から店を手伝い、3代目となる孫に暖簾を譲った今もたまに店に立つのだとか。長年店を守るその姿が、なんだか格好いい。
贅沢にはみ出した海老天の先の自慢げな笑顔に、つられてワクワクする
登場した「つけ天」は、「ざるそばでは物足りない、天ぷらそばだとそばの良さを活かしきれない」と先代が考案した、温かいつゆに、そばと天ぷらをつけて味わうスタイル。
大ぶりの海老天と艶やかなそばをキリッとしたつけ汁が風味を引き立て、思わず顔がほころぶ。
彼が帰りにエスコートしてくれたのは『バー シーガーディアンⅢ』。
横浜の夜景を見下ろして、今日のデートの思い出を振り返る時間が、とても心地良かった。
■店舗概要
店名:⻆平
住所:横浜市西区平沼1-36-2
TEL:045-321-4341
営業時間:11:00~LO20:00
定休日:火曜、第1・3水曜
席数:テーブル68席、座敷5席、個室1(6席)
3.漆黒の出汁に歴史ありの絶品おでんの名店
『野毛おでん』
伊勢佐木町の商店街からちょっと入った路地に佇む『野毛おでん』。
明治36年創業という老舗の暖簾を「ただいま」とでも言わんばかりにくぐる、彼の後ろ姿が頼もしく思えた。
濃い見た目に反して実は優しい味わい。そんな裏切りまでも、全部楽しい
おでんの「盛り合わせ」を頼んで最初に目を奪われたのは、上から下まで真っ黒に染まった大根の黒さ。口にして驚いたのは出汁。
芯まで染みているけれど少しもしょっぱさを感じず、むしろスッキリ。醤油がキリッと香ったあとで、大根の美味しさが際立って感じられる。
お出汁は飲めるほど優しい味わい。そんなところもポイントが高い。
「甘くないのは砂糖もみりんも使ってないからなんだよ」
彼によると甘さが必須の東京に対し、横浜は蒲焼のタレなどもキレある味に仕上げるのだそう。
「いらっしゃい」と柔らかい笑顔で常連を出迎える女性は、御年90歳の3代目女将・蕪山良子さん。品のある接客にどこか横浜らしさを感じる。
「山下公園の方にレコードを楽しめるいいバーがあるんだ」と言う彼に、今夜はとことん身を委ねたいと思った。
■店舗概要
店名:野毛おでん
住所:横浜市中区吉田町2-6
TEL:045-251-3234
営業時間:11:30~LO13:45(土のみ)、16:00~LO20:15
定休日:日曜
席数:カウンター8席、テーブル40席
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