「それはルビーも、明美さんのところに行くってことよね?」
「ミチ兄とのドライブデートに行きたいだけ。アタシより先に、とも姉がミチ兄の助手席に座るなんてイヤだもん」
ガルル…と噛みつく勢いで睨んだルビーにともみは「ミチさんと2人で行く?」と聞いてみたのだけれど。
◆
「着いたぞ」と、助手席のルビーを起こして車から降りたミチを追いかけるように、ともみも後部座席を出た。蔵王の森に建つ病院の駐車場。緑に囲まれた空気は涼やかだ。
— 3人で行きたいって言われると思わなかったな。
寝ぼけながら目をこすり、放っておけばまた眠ってしまいそうなルビーを助手席から引きずりだしながら、ともみは「私とミチさんだけだと恥ずかしくなっちゃうかもしれないから」と、同行を頼まれたことを思いだした。
ミチの店、BAR・Sneetの定休日に合わせた月曜日。大規模な医学学会といくつかのコンペティションが重なったせいで、駅前のレンタカーショップには選べる車が少なく、小さな国産車を借りることになった。
一時間ほどの運転席。190cm近い体には窮屈だったのか屈伸と伸びを繰り返しているミチは8月だというのに、長袖のネイビーの襟付きシャツ。二の腕から肘にかけて入ったタトゥーが見えない、透けないようにという気遣いだろう。それでも。
「オレは病院の中に入らない方がいいだろうから、車で待ってるよ」
目の下の傷に大きな体、1つにまとめられた長髪。東京では気にする人が少ないミチの容貌だが、田舎町の病院では確かに目立つ。堅気ではない人との付き合いがあるのは、など、明美に変な噂が立つことは避けた方がいいと、車にもたれたミチの腕をようやく覚醒したらしいルビーの腕ががっちりと掴んだ。
「一緒に来てくれないと困る。というか、ミチさんが行かないならアタシもいかない」
「…何言ってんだよ」
「3人じゃなきゃ会わない。さ、行こ!」
ぐいぐいとミチを引っ張り、駐車場をずんずんと病棟へと進んでいく2人の背をともみも追いかける。振り向いたミチが車に鍵をかけた、ピッという電子音が妙に響いて、ともみの緊張感が増した。
受付に行くと、まずは高橋医師の診察室へと案内された。「娘さんですか?」と聞かれ「血だけは繋がってますね」と答えたルビーに、高橋医師はそれ以上を返すことなく、病状を再度説明したあと、3人を病室へと案内した。
明美は眠っていた。呼酸素マスクを付けられ、いくつかの機械と点滴を繋がれた腕は以前より細く白く痛々しくて、ともみは目をそむけたくなる弱さをグッと堪えた。少し離れて立つルビーの表情からは感情が読めない。ただがっちりと掴んだミチの腕を放す様子はなかった。
「今は薬で眠られていますが、あと30分もすれば目を覚まされるのではないかと」
そう告げた看護師に、高橋医師はいくつかの数値の確認したあと、帰りにまた診察室に寄ってくださいねと出て行った。カフェテリアもあると教えられたけれど部屋から出る気持ちにはなれず、ミチに促されて、ともみとルビーはそれぞれ窓際に置かれていたソファーに並んで座った。
TOUGH COOKIES
SUMI
港区・西麻布で密かにウワサになっているBARがある。
その名も“TOUGH COOKIES(タフクッキーズ)”。
女性客しか入れず、看板もない、アクセス方法も明かされていないナゾ多き店だが
その店にたどり着くことができた女性は、“人生を変えることができる”のだという。
心が壊れてしまいそうな夜。
踏み出す勇気が欲しい夜。
そんな夜には、ぜひ
BAR TOUGH COOKIESへ。






この記事へのコメント
東カレに泣かされるとは…