この1年、東京の焼き鳥を食べ歩く大人たちでこの店について語らなかった者はいないだろう。
いまや予約殺到店として君臨する『酉囃子』。店主の圧倒的な熱量と精緻ともいえるこだわりに迫る。
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世界に誇るYAKITORIを目指す揺るぎない熱意で、いざその頂へ
ミシュランガイドの東京版に初めて焼き鳥店が掲載されたのは2010年のこと。
それからの焼き鳥業界の進化は目覚ましいものがあり、海外でもSUSHIやSUKIYAKIに並ぶ共通語として広く知られるようになった。
焼き鳥の激戦区、麻布十番に店を構える『酉囃子』の店主・林 裕太さんが神楽坂からの移転を決めたのは、海外で勝負する未来を見据えてのこと。
猛者ぞろいのエリアでも「焼き鳥にこんな伸びしろがあったとは」と食通を驚嘆させている。
包丁を使い分けるように熱源も丁寧に選び抜く
日本の炭焼き文化には先人の知恵が詰まっている。
焼き鳥店では炭の組み方にも職人の技量が問われるが、林さんはさらに緻密な火入れを目指すべく、産地やサイズ感が異なるさまざまな炭を用いる。
薪や藁も駆使するのは、食材と向き合うことと熱源を深く知ることは同義であるという考えがあればこそだ。
そして「世界中のいろいろな場所で焼きたい」という願いが叶ったとき、どんな環境でも火をコントロールし、自身が理想とする焼きを実現できるように。鍛錬の日々がやがて大きな糧になる。
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炭をメインに薪や藁を使い分け、仕入れる鶏の種類は固定しないのが自身に課したテーマ。
いまでこそ名職人のひとりとして注目を集めるが、スタートは大阪の『鳥貴族』のアルバイトだったという意外な経歴も。しかし、当時から火力の強弱で肉を焼き分けていたというから大器の可能性を秘めていたのだろう。
銘柄はあえてこだわらない。唯一無二の仕立てで魅了する
焼き鳥店の生命線である、鶏。
どんな鶏を使うかは店や焼き手の“個性”の見せどころのひとつと言えるが、林さんの「あえて鶏にこだわらない」という言葉にはまったく別の意図がある。
タイプが異なる鶏に触れることで例えば、肉質が硬い個体も塊で焼くことで弾力が生きるなど多くの発見があるという。
銘柄に固執はしないが、生産者へのリスペクトは人一倍強い。その想いが、肉の個性を最大限に引き出したひと串から溢れる。
季節を愛でる素材と料理が、緩急に富んだコースを作る
和食の中でも焼き鳥は季節感を出すのが難しい。
“鶏”に軸足をきちんと置きながら、旬を感じさせるコースは日々の探求心から生まれるもので、そうした食材を取り入れる卓越したセンスが食べ手の心をぐいぐいと引きこむ。
ただ、シンプルに旬味を盛り込むのではなく、サプライズ感溢れる一品も。創意工夫の結晶とも言えるコースが、この店の価値をいっそう高めている。
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