TOUGH COOKIES Vol.63

「友情にも片思いがあるなんて…」女同士はいつもライバルだったから知らなかった

SUMI

港区・西麻布で密かにウワサになっているBARがある。
その名も“TOUGH COOKIES(タフクッキーズ)”。

女性客しか入れず、看板もない、アクセス方法も明かされていないナゾ多き店だが、その店にたどり着くことができた女性は、“人生を変えることができる”のだという。

タフクッキーとは、“噛めない程かたいクッキー”から、タフな女性という意味がある。

▶前回:「一生分の恋をしたから、もう恋はしない」そう言った彼に落ちた、23歳女の選択

「私たち、もうこれ以上、諦めるのをやめよう。もう何も諦めないって…お互いに約束しない?だから――私の提案を聞いてくれる?」

ともみはそう言うと、ぐしゃぐしゃに頬を濡らしたルビーを、自分の横に座らせた。ルビーは甘えるように、コテンと、その頭をともみの肩に預けた。

「ともみさん、アタシに、幸せになって欲しいんだ?」
「うん」
「2人で諦めない、ってなんかいいね」
「うん」
「てか、ともみさんって、やっぱアタシのこと大好きなんじゃーん♡ やだ、照れちゃう~」

鼻をすすりながらもふざけた口調で、「でも超うれしい」「アタシも大好きだよ」と、ルビーが繰り返す度に、胸がぎゅっとなる。恋の締め付けとはどこか違う、体が少しだけ浮き上がってしまいそうなむず痒さだ。

「ほら、友情にも片思いってあるからさ」と言われても、幼い頃から芸能界にいたせいで、同世代の同性といえば、仕事仲間かライバル。たぶん、堂々と友達だと名乗り合える人はいなかったともみには、よくわからない。でも。

― ルビーのことが、大事、だ。とても。

そう思ったら、むず痒さはさらに増してしまい、なんだか恥ずかしくなって、「ちょっと暑い」と身をよじって離れようとすると、不服そうに起き上がったルビーの顔がさっきよりぐしゃぐしゃで、ともみは思わず笑いながら、可愛いなと愛おしさがこみ上げた。

「で、ともみさんの提案って?」

一旦トイレ…と立ち上がった後、盛大に鼻をかみながらそう聞いたルビーに、緊張感が緩み、ともみはホッとしながら答える。

「1つは――明美さんのこと」

ともみはもう、言葉を選ぶことをやめた。眉間にしわを寄せたルビーが拒絶の言葉を発する前に、ともみは続けた。

「明美さん、ガンなんだって。しかも末期」

目を見開いたルビーに構わず、心で明美に謝りながら、軽さを装う。

「余命宣告されちゃったみたいで、お医者さんには、もって1年って言われてるって」

「…は?…つか、誰からの情報?」

「ルビーが帰った後、明美さんから…本人から聞いた。私1人の時に聞いちゃったし、明美さんに口止めもされたから、今日まで黙ってたんだけど、やっぱり話すべきだと思って。明美さんとは守秘義務の契約書も交わしてないしね」

たとえ契約書を交わしていたとしても、外には絶対に漏らさない代わりに、店内での情報共有は制限がない。つまりルビーと光江が知る分には契約違反にはならないということが、TOUGH COOKIESが客と結ぶ秘密保持契約書には書かれている。

「ルビーのビールもうないじゃん。もう一杯くらい飲んどく?」

黙りこんだルビーのグラスを手に、ともみはカウンターに入った。サーバーから生ビールを注ごうとしたとき、ルビーが唸るように言った。

この記事へのコメント

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No Name
話せる友達誰もいなくて、結局光江さんにかまって欲しかっただけにも思える、お気の毒だけど嫌いなキャラ紗和子。
ともみは次からルビーに相談対応をやらせてゆくゆくは店を去るつもりなのかなぁ....
2026/05/19 05:3111
No Name
お久しぶりの光江さん!!大好きです
2026/05/19 07:055
No Name
紗和子さんのコンプレックスなのだろうけど、人を生まれながらの天才肌か凡人かで括るのをやめたらいいんじゃない? 決め付けるのもよくないし、才能潰す件もまとめて光江さんにガツンと怒られて😆
2026/05/19 11:225

TOUGH COOKIES

SUMI

港区・西麻布で密かにウワサになっているBARがある。
その名も“TOUGH COOKIES(タフクッキーズ)”。

女性客しか入れず、看板もない、アクセス方法も明かされていないナゾ多き店だが

その店にたどり着くことができた女性は、“人生を変えることができる”のだという。

心が壊れてしまいそうな夜。
踏み出す勇気が欲しい夜。

そんな夜には、ぜひ
BAR TOUGH COOKIESへ。

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