TOUGH COOKIES Vol.62

「一生分の恋をしたから、もう恋はしない」そう言った彼に落ちた、23歳女の選択

SUMI

港区・西麻布で密かにウワサになっているBARがある。
その名も“TOUGH COOKIES(タフクッキーズ)”。

女性客しか入れず、看板もない、アクセス方法も明かされていないナゾ多き店だが、その店にたどり着くことができた女性は、“人生を変えることができる”のだという。

タフクッキーとは、“噛めない程かたいクッキー”から、タフな女性という意味がある。

▶前回:女性からのアプローチにうんざりしていた男が、最終的に彼女にドはまりしたワケ

松本公子に連絡をした翌日。来客予定のないTOUGH COOKIESに出勤したともみは、発注などの事務仕事を終わらせてから、ルビーに電話をかけた。

ルビーがともみを頼ったように、ともみもルビーのことを頼るのだ。

「私にも――店に呼びたい人がいるの。普通のお客さまというわけではないから、ルビーの仕事ではないんだけど、一緒にいてもらえたら…」

1人では少し怖い、とまでは素直に伝えられなかったけれど、もちろんだよ!というルビーの即答は、思わず携帯から耳を離してしまうほどに力強くて、ともみは照れ臭くもホッとした。

「ちなみにどんな人なの?」

言いにくければ言わなくてもいいと付け加えたルビーに、ともみは電話で全てを伝えるのは難しいのだけれど、と前置きして続けた。

「私にとって唯一のトラウマ、かな。でもルビーも言ってたでしょ。…明美さんと話す前に」

母親の名に、耳元の向こう側のルビーが強張ったのが見えるようだ。ともみは気づかぬふりで明るく続ける。

「店に来てくれたお客さんたちの話を聞くたびに、自分も自分の過去に決着をつけなきゃいけないって思えたって。私も…紗和子さんと話してから、ずっとモヤモヤしてたんだけど――やっと言語化できた」

「何を?」

「私は、過去に決着をつけたふりをしてただけで、実はずっと納得できてなかった。甘い言葉でそそのかして、旨味がなくなれば切り捨てる。そんな大人たちを心の底では…汚い、許せない、悔しいって感じてたはずなのに、理不尽が起こる度に芸能界なんてそんなものなんだからって自分の心を麻痺させてたんだよね。

努力が報われないことなんて当たり前だと、スレた大人ぶることで、諦めることを肯定してきた。そして結局…“私には才能がない”って、自分から手を放す体裁で引退した。

まあ実際、私の実力が足りなかったのも事実だけど、夢にすがりつくのが辛くなって逃げたんだよね。それ以来、芸能界に未練なんてない、もう全然平気ですって顔して生きてきた」

電話だというのに、熱くなりすぎている。そう思うのに、ルビーの優しい相槌に、なおさら言葉は止まらなくなった。

「大輝にね、ともみちゃんはどうしたいの?どういう店にしたいの、って言われたんだ」

本当は、ミチにも同じことを問われた。店だけじゃなく、お前はどうなりたいのか、と。でも今、ルビーの前でミチの名を出すことは憚られた。

「あ、それはアタシも聞きたいって思ってた。店ができてまだ半年くらいだけど、ともみさんは光江さんとはタイプが真逆でおもしろいなぁって思ったから」

この記事へのコメント

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ミチが根負けしていつかルビーと付き合う展開になったらいいなと…
ルビーの明るさとか性格の良さとか人を見る目とか…全部まとめて好きだからミチとの事やお母さんとの関係含めて応援したい!
2026/05/12 05:2818Comment Icon1
No Name
ルビーの野生の勘通りミチはともみのこと好きなんだろうな
ミチとともみお似合いなんだけどルビーに幸せになって欲しいのでルビーがんばれ
2026/05/12 07:0612Comment Icon3
No Name
来週は更新あるのですね、よかった
2026/05/12 07:1211Comment Icon2
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TOUGH COOKIES

SUMI

港区・西麻布で密かにウワサになっているBARがある。
その名も“TOUGH COOKIES(タフクッキーズ)”。

女性客しか入れず、看板もない、アクセス方法も明かされていないナゾ多き店だが

その店にたどり着くことができた女性は、“人生を変えることができる”のだという。

心が壊れてしまいそうな夜。
踏み出す勇気が欲しい夜。

そんな夜には、ぜひ
BAR TOUGH COOKIESへ。

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