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SPECIAL TALK Vol.136

~ずっと花と生きてきた僕にとって、花はコミュニケーションツール~


満開の花だけでなく、蕾や散り際も美しい


赤井:ちなみに高校は3日で中退したんですよ。

金丸:なんでまた(笑)。1週間くらい我慢できなかったんですか?

赤井:僕が中学を卒業するときに、中学校の先輩、もっと言うと近所の兄ちゃんが泉州高校の野球部の監督になったんです。

金丸:泉州高校って、以前は野球の強豪校でしたよね。

赤井:そうです。僕は勉強が壊滅的で、野球部だったけど野球もヘタ。なのに、その監督とのご縁で、セレクションなしで高校に入れてもらえました。だけど、周りはみんな全国大会レベルです。野球をやるという条件で入学したのに、「これは無理やな」って。入学式の次の日に「辞めます」と言って、3日目に辞めました。

金丸:それで、もうスパッと花の道に決めたのですね。

赤井:でも、いろいろとタイミングがよかったと思います。ちょうどその頃、海外からフラワーアレンジメントが入ってきて、吸水性スポンジが普及し始めて。それまでは壁を背にして剣山にお花を生ける、180度展開が主流でしたが、吸水性スポンジを使うと、360度全部使える。モダンなお店も増えてきて、「これまでと違うお花が欲しいから、違うお店に発注してみよう」という流れに。お花そのものだけじゃなくて、「この空間をどう作る」みたいな見せ方も含めて仕事を頼まれるようになっていきました。

金丸:それこそ、赤井さんのユニークさが求められたんですね。ところで、赤井さんはどこかにお店を構えていらっしゃるのですか?

赤井:お店はありませんが、2024年、堺市の浜寺公園に自分のミュージアムを作りました。そこに花そのものやなくて、写真を飾っています。花を写真に生ける、という。

金丸:新たな表現への挑戦になりますね。

赤井:最近60歳を回って、お花に対する考え方、感じ方が変わってきました。満開に咲き誇っているのが一番きれいやと思っていたけど、咲く前の蕾が好きになってきた。そしてかっこええなと思うのは、100%咲いて、咲き切ったあとにちょっと元気がなくなって、花びらが1、2枚、はらっと落ちているとき。そんな花から、ものすごい達成感を感じます。

金丸:分かるような気がします。

赤井:そういうお花はイベントだと嫌がられるけど、写真やったらええんちゃうかなと思って。

金丸:今度関西に行ったときには、ぜひお伺いしたいです。

赤井:続けていると、やっぱり気持ちの変化ってあるんですよね。昔は「どうや、このデザイン。俺が一番かっこいいやろ、独創的やろ」みたいに考えていたのが、今となってはかっこ悪いというか、すごい恥ずかしい。今は「この枝をどう入れたらかっこええかな」じゃなくて「どうやったらええか、枝に聞こう」っていう気持ちでやってます。

ススキで月見ではなく、月から花と地球を見たい


金丸:高校を3日で中退し、仕事として花に携わって、もう40年以上ということですよね。

赤井:45年を超えました。業界は違いますけど、僕の同期は松田聖子さん。松田さんは「花の80年組」で、僕は「花屋の80年組」なんですよ(笑)。

金丸:急に関西風の対談に(笑)。

赤井:だから、勝手にライバル視してます(笑)。松田さんは45年間、ずっとトップ。僕はトップではないけど、それでも負けずに続けていきたい。

金丸:続けていくにあたり、今後の夢は何でしょうか?

赤井:やりたいことばっかりで、思ってることのまだ1%もできていません。でも一番やりたいのは、月で花の個展をしたいんですよ。

金丸:月で!?とんでもないスケールだ(笑)。

赤井:ススキとお団子で「お月見」の逆、「地球見」に自分の花を添えたい。月まで行く途中でも、地球を器にお花を生けてみたい。

金丸:興味をそそられますが、もうちょっと手前の夢はないですか(笑)。

赤井:夢と言えるかは分かりませんが、お花ってやっぱり平和の象徴でもあるので、揉めているところに花を一輪そっと差し入れたら、揉め事がすっとなくなるというか、そういう力がお花にはあると思うんです。そういった力をもっと生かせたらいいし、お花を身近に感じてもらえたらいいなと思います。

金丸:日本だけじゃなくて、海外でお花を披露される機会もあるのですか?

赤井:呼ばれたらどこにでも行きますよ。一昨年は、アラブ首長国連邦のアブダビで30ヶ国の子どもたちと一緒にお花を生けました。大きな作品になるので、高いところだと子どもの背では届かないかもしれない。「そのときは、僕が抱えて花を生けてもらったらええよな」って、アシスタントと練習までしたんですけど、当日来た子どもたちはみんな僕より背が高くて(笑)。

金丸:逆に抱えてもらった?

赤井:くらいの感覚で(笑)。スタッフも「昨日の練習は何やったんや」と大笑い。

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