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SPECIAL TALK Vol.136

~ずっと花と生きてきた僕にとって、花はコミュニケーションツール~


花屋の母親の口癖は「この仕事は最高や」


金丸:赤井さんの生い立ちを伺いたいのですが、お生まれはどちらですか?

赤井:大阪南部の泉州にある忠岡町です。東西は4キロあるけど、南北は広いところでも850メートルしかないという、日本一面積が小さい町に1万6,000人住んでいて。僕は忠岡の観光大使もやらせてもらってます。

金丸:忠岡!?私は一時期、泉大津に住んでいました。

赤井:南海電鉄で隣の駅ですね。そんな近くに住んでおられたんですか。

金丸:びっくりしました。小学校、中学校は地元ですか?

赤井:そうです。忠岡中学校に。泉大津だと、確か中学は誠風、東陽、小津とあって。

金丸:東陽中です。休み時間になったら隣の中学と乱闘騒ぎになるような学校でした(笑)。

赤井:僕らのときも校内暴力の時代なので、窓ガラスはなかったですよ。ガラスを入れてもすぐ割るので、全部ベニヤ板。

金丸:まさか、いきなりこれほどローカルな話になるとは(笑)。その忠岡で、お母様が花屋さんをされていたんですよね。

赤井:はい。うちは母子家庭だったので、学校が終わったら家じゃなくて、母の店に帰っていました。

金丸:お店が家であり、遊び場みたいな。

赤井:そうです、そうです。配達に行くと「小さいのに偉いね」って、お客さんからジュースをいただける。仕事どころか、お手伝いという意識もないくらいでしたね。あと、店にいるだけだと暇なんで、毎日のようにあちこちのお花の教室に通っていました。月曜日はこの教室、火曜日はあの教室って。

金丸:それだけ通わせたお母様もすごいけど、嫌になることはなかったのですか?

赤井:僕はひとりっ子だったので、行った先で若いお姉ちゃんに遊んでもらえるのが楽しかったんですよ(笑)。お茶も習っていましたが、それもお茶と一緒に甘いお菓子が食べられるから。

金丸:不純な動機ですね(笑)。赤井さんにとって、やはりお母様の影響は大きいですか?

赤井:大きいです。母がよく「この仕事は最高な仕事なんや」と言うてました。「お金をもらってんのに、配達して、こんな喜ばれる仕事はないよ」って。

金丸:確かに花を届けられて、嫌な顔をする人はいませんから。

赤井:花があまりにも身近すぎて、自分の中では、今も仕事をしてるっていう感覚はないんです。市場で花を選ぶのも、「仕入れる」というより「いいの見つけたから連れて帰ろ」みたいな感じです。

家を花で溢れさせるのが、親子のコミュニケーション


金丸:小さい頃から華道を習ったことで基礎が鍛えられたと思いますが、今に至るまでに、デザインの勉強をする機会はあったのでしょうか?

赤井:勉強らしい勉強はしていません。ただ、子どもの頃からずっと自分の家に花を飾っていました。月曜から土曜まで毎日教室に行って、お花を持って帰ってくるんですが、生けるところがないんですよ。当時住んでいたのは、玄関とか床の間がきっちりある家じゃなくて、文化住宅。それに水盆だってない。だから、テレビの上に飾ったり、水盆の代わりにフライパンを使ったり。

金丸:それは面白い。そういう発想だったら家中、あらゆるところに飾れますね。

赤井:実際、家のあちこちに飾っていました。下駄箱の中に生けたこともありますし。

金丸:いいですね。だけど、「いらんことしなや!」みたいに、お母様から怒られたりしなかったんですか?

赤井:それがまったく。最初のうちは「飾るとこないもんね」って言うてましたけど、それが毎週続いてお花がどんどん増えていく。僕にとっては習ったこととか、こうやったらええんちゃうかなという発想の発表の場であって、母を喜ばそうとまでは思ってなかったけど、店から帰ってきた母が「今日はどこに生けたんや〜」と探すのが、お決まりになっていました。

金丸:怒るどころか喜んでいたとは。狭くても、家中に花があれば豊かな気持ちになりますよね。お母様が花を見つけて一番喜んだ場所ってどこですか?

赤井:お風呂ですかね。水を溜めて、花を生けて、ふたを閉めておいた。帰ってきた母があちこち探しても見つけられず、「もう分かれへんわ」って。僕がお風呂入れる当番やったんですけど、「お風呂入れたんか?」って、母が風呂のふたを開けたら、そこにお花。

金丸:花を介した親子のコミュニケーション。素敵ですね。

赤井:ずっとお花をやってきたから、コミュニケーションツールが花以外にないんですよ。「それを花で考えると……」みたいな言葉が自然に出てくる。「え、何で花で考えるんですか?」ってアシスタントからツッコミが入るんですけど、花以外で表現できない。

金丸:「花人」という肩書は単に職業ではなくて、赤井さんの人生そのものを表しているように思います。

赤井:僕、ほんまに花以外ないですから。中学卒業して、すぐ花屋で働き始めてますし。

金丸:お母さんの店ではなく?

赤井:心斎橋のお花屋さんです。結構はやっているところで、12坪くらいのお店で30人くらい働いてて。そこで6年やって独立しました。

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