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SPECIAL TALK Vol.135

~日本随一の「応援のプロ」として、テニス界と日本を励まし続けたい~

金丸恭文氏 フューチャー株式会社 代表取締役会長兼社長
大阪府生まれ、鹿児島県育ち。1989年起業、代表取締役就任。日本ハンドボール協会会長。


「ミスしてすみません」から「ミスしてくれてありがとう」へ


金丸:ふと思ったのですが「頑張って」というのは、「すみません」みたいに、日本独特の言葉のように思います。

松岡:「頑張って」はいくらでも言いますが、「すみません」はテニスには不要です。だけど、ジュニアとやっていると、彼らの口から「すみません」が何度も出てくる。だから「どうして、『すみません』って言ったの?」と聞くと、「ボールが外れたから」って。

金丸:何も悪いことはしていないですよね。

松岡:そう。失敗したら、次に良くすればいい。だから僕はいつも「失敗したらガッツポーズ!」と伝えています。

金丸:そのスタンスはいいですね。それにAIの時代になって、失敗の価値は上がっているんです。というのもAIを進化させるには、成功データだけではなく、失敗データも必要。自動運転も山ほどの運転ミスがAIを強くしています。

松岡:じゃあ、「ミスしてくれて、ありがとう」なんですね。

金丸:まさに。そして、その考えが日本社会には欠けています。チャレンジしてこそ成長があるのだから、ミスを恐れずにどんどんチャレンジしないと。

松岡:僕が現役の頃って、メイド・イン・ジャパンが世界を席巻したところから、バブルが崩壊して沈んだ時代です。あの頃の日本の勢いを、メンタルも含めて取り戻す方法ってあるんですかね?

金丸:日本は、時代の変化にずっと遅れ続けているんです。かつて日本は、ハードウェア市場で世界1位に君臨していました。ハードウェアというのは完璧主義で、欠陥が絶対に許されない。「欠陥がない」ことが価値基準のときは、日本人はめちゃくちゃ強くて、99.99999%のクオリティを出すのが得意でした。

松岡:何となくわかります。

金丸:ところが今は、ソフトウェアの時代です。世界中で使われているWindowsだって、「今把握しているバグはこれだけあります」というリストが存在します。しかも、「バグはあります。使うのはあなたの責任です」がまかり通る。

松岡:価値基準が「完璧さ」ではなくなったんですね。

金丸:そうです。日本は、完璧だけど小刻みに一歩一歩。ソフトウェア企業は大股、ときにはジャンプする。しかも世界では、ジャンプ力に投資する。「3年後にここまで行きます」と未来を語る起業家に対して、それを信じる人たちが100億円単位で投資しているんです。一方、ひと昔前の日本では、不動産は担保になっても、目に見えないソフトウェアではお金も借りられなかった。日本のソフトウェア企業が勝てないのも当然です。

松岡:じゃあ、その価値観を変えなきゃいけませんね。金丸さんは小刻み派ですか、それともジャンプ派?

金丸:僕は両方です。ジャンプにはリスクが伴いますが、リスクを最小化し、何度でもジャンプします。

松岡:いいとこ取りですね。見習いたい。実は、これから何をやっていこうか、ちょっと迷っているんですよ。あと数年で60歳。ジュニアの強化ももう30年近くやってきて、体制は出来上がった。それをどこかのタイミングで、錦織選手にバトンタッチしたいと考えているところです。

金丸:あの松岡修造から「迷い」という言葉が出てくるとは。これまでのお話を聞いていると、無理に何かをしたというより、自然に道を選ばれてきていますよね。これからも「応援のプロ」として、テニスだけでなく、世界に挑戦しようとする子どもたちに「できる!」と声をかけ続けてほしいです。今日はお忙しいところ、本当にありがとうございました。

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