~大量生産できるものではなく、周りを巻き込んだ一点物を作りたい~
令和のニューリーダーたちに告ぐ
鉄道車両や駅舎、バスや船といった公共交通から、医療クリニックや幼稚園まで幅広く設計・デザインを行う川西康之氏は、グッドデザイン賞をはじめ、国内外のさまざまな賞を受賞してきた。
華々しい業績の裏には、川西氏の徹底した仕事ぶりがある。ある駅舎のリノベーションでは、3日間泊まり込んで利用者の姿を観察したことも。
自身が生まれた町にある駅舎のリノベーションでは、住民たちとのワークショップを16回も実施した。
利用者の目線に立ち、利用者を巻き込みながらデザインを作り上げていく手法はなぜ生まれたのか。新進気鋭の建築家がどのように生まれ育ち、何を仕事の軸としているのかを探る。
川西康之氏 1976年奈良県生まれ。千葉大学工学部建築学科卒。同大学大学院自然科学研究科デザイン科学(建築系)博士前期課程修了後、デンマーク王立芸術アカデミー建築学科に招待学生として進学。その後、オランダDRFTWD office Amsterdam、フランス国有鉄道交通拠点整備研究所(SNCF-AREP)、株式会社栗生総合計画事務所で勤務、グッドデザイン賞審査員兼フォーカス・イシューディレクターを経て、2014年株式会社イチバンセン 一級建築士事務所を設立。現在、千葉大学工学部建築学科非常勤講師、グッドデザイン賞審査員、奈良県川西町タウンプロモーションデザイナーも務める。
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金丸:本日は建築家・デザイナーの川西康之さんをお招きしました。お忙しいところ、ありがとうございます。
川西:こちらこそ、お招きいただき光栄です。
金丸:本日の対談の舞台は六本木のイタリアン『Brando(ブランド)』です。隠れ家的な立地にあり、カウンター7席ということで、落ち着いた雰囲気でコースやアラカルトを楽しめるそうです。
川西:料理もすごく楽しみです。私の両親は長らく喫茶店をやっていたので、こういうカウンターだと実家を思い出します。子どもの頃はほとんど一日、L字のカウンターの隅っこに座って過ごしていました。さすがにこんなに立派ではないですが(笑)。
金丸:喫茶店のカウンター育ちというのは、ちょっと意外です(笑)。川西さんは鉄道に関する建築やデザインを多数手掛けていらっしゃいますね。
川西:鉄道に限定しているつもりはないんですが、「鉄道デザイナー」と呼ばれることも多いです。
金丸:私は鹿児島県出身ですが、熊本と鹿児島を結ぶ肥薩おれんじ鉄道のお仕事もされていますよね。
川西:20代の駆け出しの頃に、個人の仕事として初めて採用されたのが、肥後おれんじ鉄道のロゴマークです。その後、土佐くろしお鉄道の中村駅のリノベーションや、えちごトキめき鉄道の観光列車「雪月花」、最近では、今年の7月に就航した熱海と初島を結ぶ高速船「金波銀波(きんぱぎんぱ)」などを手掛けてきました。
金丸:列車や駅舎だけじゃなくて、船までデザインされているのですね。
川西:ほかにも歯科医院や幼稚園などもやっていますが、やっぱり公共交通機関が多いですね。
金丸:川西さんはこれまでにグッドデザイン賞のほか、国際的な鉄道関係の賞も多数受賞されています。そんな建築家がどのように生まれ育ったのか、生い立ちからじっくり伺いますので、どうぞよろしくお願いします。





