A2:男としての器の小ささ、人としての小ささを感じた。
本来ならば何度かデートを繰り返してから「本交際」に進むのだろうが、出会ってすぐに、真剣交際へと進むことになった私たち。
でもだからこそ、お互いのことをもっと知るために真剣にデートを繰り返した。
「哲也さん、結婚したら子どもは欲しいですか?」
ここは、私にとって重要なポイントだった。
私は早く結婚して、早く子どもが欲しい。そう思っている。だからこそ、この擦り合わせは絶対にしておきたい。
「はい。2人くらい欲しいですね。怜さんは?」
「私は1人でいいかなと思ってます」
「そうですか…」
「あ、でももちろんそれはタイミングとか、神様のみが知るというか…。とりあえず早く結婚したいと思っています。早ければ早いほどいいですね」
「そうですよね」
哲也は、物事を進めるペースは早いけれど、今回の真剣交際へ進む前にも、「焦らずにゆっくり考えてください。怜さんのお気持ちが優先なので」と言ってくれた。
だから、この強引な感じが嫌ではなかった。
しかしデートを繰り返しているうちに、少しだけ気になることが出てきた。
「怜さんは、どうして結婚相談所に入会されたんですか?プライベートでも、出会いとか多そうなのに」
「ちゃんとした相手が良くて…。結婚相談所だと、お相手の学歴とか家柄とかも、クリアに見れるので」
結婚相談所は、嘘がない。それがとても良かった。
しかしこの話をしている時の、哲也の言い方が私はとても気になってしまった。
「わかります。そこは大事ですよね。僕も、相手は家柄が大事だと思っていて。すごく裕福でなくても良いのですが、僕の稼ぎに寄生するような家柄は嫌だなと」
― 寄生って…。
親に何かあるかなんて、誰にもわからない。自分たちが今後どうなるかも、わからない。
「ちなみに、結婚後も怜さんはお仕事を続けられるんですか?」
「はい、そのつもりです。ダブルインカムの方がいいなと思っていて」
「それは大事ですよね」
結婚しても、仕事は続けたい。それは本心だ。
でももし仮に、私が今の仕事を急に辞めなければならなくなったり、病気になって働けなくなった時。彼はそっと寄り添ってくれるのだろうか。
そしてこの不安が決定的になったのが、哲也にプロポーズされた時のことだった。
「怜さん。僕と結婚してください」
順調すぎて驚いたけれど、プロポーズしてもらえるのは純粋に嬉しいし、このチャンスを逃したくない。
だからもちろん、返事はYESだ。
「もちろんです…」
感動で、言葉に詰まる私。
「本当ですか?じゃあ僕たち、結婚相談所を退会しないとですね」
「そうですね。嬉しい限りです」
相談所は、結婚が決まった時点で退会となる。これは幸せな退会だ。しかし次の発言に、私は耳を疑ってしまった。
「でも、成婚料を払うのってなんかもったいないですよね。怜さんのところは成婚料いくらですか?」
結婚相談所は、システム的に、成婚となると成婚料を支払うのがルールだ。お互い結婚相談所を介して知り合っているため、それぞれが登録している相談所にきちんとお礼を兼ねて支払う…それが、当たり前のこと。
しかしまさかの、その成婚料をもったいないと言い始めた哲也。
彼のこの発言に、私は驚いてしまった。
「その分を、二人の結婚式費用とかに回せたらなって思っちゃいますね…」
「そうですか」
そういう問題ではない。
相談所にはお世話になっているし、成婚料を支払うのは当然のことだと思う。たった数ヶ月で結婚できたのだからむしろ安いとさえ感じる。もし成婚料がもったいないと感じるなら、初めから成婚料を取らないタイプの相談所に入会すればよいだけの話だ。
それを今さら、しかも私の前で成婚料を支払いたくないと言い出す哲也に一気に冷めた。
― この人と結婚して大丈夫?
お世話になった人に感謝を伝えられない人とは、一緒にいられない。きっと結婚しても身近な人に対しても、常に損得感情で判断するに違いないと感じた。
結婚はしたいし、哲也を逃したらこんな条件がいい人は現れないかもしれない。
でも、結婚前から信頼関係を崩すような人なんて御免だ。
― むしろ結婚前に、彼の本性を知れて良かった。
そう思い、私はこの婚約の破談を申し入れた。
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その男、付き合っていて大丈夫?






この記事へのコメント
ただ、怜も不安に思う事があるのに何故何も聞かずにプロポーズOKしてしまったのか。 しかも“勿論返事はYESだ” って威張っておきながら速攻でキャンセル(破棄)
バカなの?
家柄云々もいいけどその前に本人の価値観とか人柄を見ないとダメじゃん。