A1:積極的に進めてくれるのが良かった。
哲也とは、結婚相談所を介して知り合った。
31歳で、結婚相談所に登録するのは早いとも言われた。しかし地元長野の友達たちはみんな結婚して子どももいるし、東京の同期たちも半分はもう既婚者。
もともと私は結婚願望が強く、早く子どもも欲しい。
そう考えると結婚願望がない人とデートしている時間はない。
そこで相手の身元が最初からわかって、結婚願望がある人が揃っているという意味で効率がよい結婚相談所の門を叩いた。
「31歳、未婚子無し。一橋大学卒業で、長女。現在は大手のメーカーに勤務…」と私のプロフィールは悪くなかったと思う。
だからなのか、結婚相談所へ入所した直後から、たくさんのお見合い話が来た。
お見合い2人目のタイミングで出会ったのが、哲也だった。
京都の国立大学卒業で、専門商社勤務。今年で40歳、バツなし独身。年収や家柄、学歴も申し分なかった。
お見合い当日は、六本木にある外資系ホテルのカフェで待ち合わせをした。5分前に到着したら、哲也はもう席で待っていた。
「初めまして、怜です」
「初めまして、哲也です」
私を見た途端に、さっと席を立って挨拶をしてくれた哲也。待ち合わせ時間より前に到着していることや、しっかり挨拶できる姿から「真面目でいい人なんだろうな」と容易に想像がついた。
また哲也は身長が高く、ヒールを履いた私でも少し見上げるくらいだった。
「身長、お高いんですね」
「そうなんですよ。無駄に185cmもありまして」
「羨ましいです」
「とりあえず、座りますか。何を飲まれますか?」
「じゃあ…カフェラテをいただきます」
簡単な挨拶を済ませて、カフェラテが運ばれてくるのを待つ。
しかしここで、沈黙になってしまった。
― あぁ、何か話さないと。
いつもそうだった。何か盛り上げようと思うのに、上手く言葉が出てこない。
私の周りのモテる女子や結婚している子は、大体気遣いができて、異性に対しても臆せず話せるし“お話し上手”だ。
結局、私が発したのは無難な一言だった。
「何を話せば良いか、迷っちゃいますよね。気軽にお願いします」
すると哲也は優しく私に微笑みかけてきてくれた。
「怜さんのお勤め先は、どの辺りですか?」
「私は日本橋です。哲也さんは?」
「日本橋、いい所ですよね。僕は大手町です」
「そうなんですね。近からず遠からず…という感じですね」
ここから急に話のテンポが良くなり、あっという間に1時間が過ぎる。優しい雰囲気と、無理に話さなくても大丈夫な空気感が心地よかった。
― もう一度、会いたいな…。今度はゆっくり話せるといいな。
そう思っていると、哲也が急に驚く提案をしてきた。
「怜さん、他も何人か進められていますか?」
「実は…はい…」
入会してから知ったのだが、結婚相談所には、「本交際」という他の人とはもう会わないステータスへと進む前に、「仮交際」という制度がある。この期間は、他の人と並行してデートしてもよいということになっている。
だから、初めてお見合いした相手とも「仮交際」していたし、これから他の人にも会ってみたいと思っていた。
ところが哲也は、今日会ったばかりで本交際の申し込みをしてきたのだ。
「ですよね、怜さんモテそうですし。ただ、僕は本交際へ進められたら嬉しいなと思っています」
「え?仮交際もせずにですか?」
順番的に、仮交際をしてから本交際になると思っていた。でも哲也なら、いいかもしれない。
― 運命の相手って、こういうことなんだ。
そう思い、私はその夜、相談所の人へ哲也と本交際へ進む旨を報告した。






この記事へのコメント
ただ、怜も不安に思う事があるのに何故何も聞かずにプロポーズOKしてしまったのか。 しかも“勿論返事はYESだ” って威張っておきながら速攻でキャンセル(破棄)
バカなの?
家柄云々もいいけどその前に本人の価値観とか人柄を見ないとダメじゃん。