シンプルな和食は料理人の嗜好や経験が顕著に表れる。それらは普段の食生活でも養われ、異ジャンルが与える影響は大きい。
そこで、和食店主の慕う「洋」な店を聞いた。
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『とくしま青柳』で15年、都内の日本料理店で5年腕を磨く。
2016年にソムリエの飛田泰秀さんと『乃木坂 しん』を開業。ふたりの力量が合わさって、和食随一のワインペアリングが叶う。
1.『乃木坂 しん』の石田伸二さんが惚れる『レストラン リューズ』の匠な絶品フレンチコース
“一流を確信する美しきひと皿の連続に思わずため息がこぼれる”
石田伸二さんと『レストラン リューズ』の飯塚隆太さんの出会いは約20年前。
徳島出身の石田さんが『とくしま青柳』の若手としてがむしゃらに働く中、同社のフランス料理主任教授だった飯塚さんに話を聞いてもらっていた。
交流は続き、いまも家族の祝い事などで飯塚さんの店を訪れ、都度感銘を受けている。
“繊細な職人技が光る料理に、いつ来ても新鮮な驚きがあります”
「優しい人柄がお料理にも反映されています。しっかりクラシックをされてきた土台があるからこそ、新しいことに挑戦しても、お料理にまったくブレがない。
美味しいのは元より、日本人が作るフレンチらしい繊細な盛り付けと食材の使い方が、ジャンルは違えど、勉強になります」
飯塚さんは、『ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション』の料理長も務めた日本屈指のシェフだが「和食の料理人から学ぶことは多いです」と話す。
アオリイカの料理が良い例で、包丁の切り込みは『青柳』で学んだ。
そこにアスパラガスのクーリや実山椒、シトロンキャビアを合わせるのはさすがの経験値。
フェンネルのエスプーマの中にウニとキャビア、ゼリーで固めたフェンネルときゅうりが入っている。
周りはオマールのフォンがベースの甲殻類のカスタードソース。コース¥24,200~。
「ジャンル問わず、いままで学んだ知識や技術があって新しい組み合わせが生まれます」と飯塚さん。
その想いに石田さんも共感し、新たな驚きを求めて何度でも通ってしまうのだ。
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多国籍料理店や和食店での修業を経て2007年に久我山に『器楽亭』を開業。
2020年に銀座へ移転し、より贅沢に各国要素を効かせたコースを提供する。お酒好きでスタッフともよく飲む。
2.『銀座 鼓門』の浅倉鼓太郎さんが愛する『スペインバル ジローナ』の“飲める”パスタパエリア
“肩肘張らずに美味しく、楽しいワイン飲みが叶う最高のお店です”
和食の枠にとらわれず、自由な発想で食通を魅了する浅倉鼓太郎さん。
その姿勢はラテン気質に通じるものがあり、今回推薦する『スペインバル ジローナ』も、本国らしい“楽しさ”がキーワードとなっている。
「一度訪れたサンセバスチャンのバルを思い出させてくれる賑やかな雰囲気と、日本の食材を多く使ったワインをがぶ飲みできるお料理、そして山岸治郎さんの兄貴分的人柄にどハマりして数年前から通っています。何を食べても美味しくて、とにかく楽しいのが好きです!」
店名からジローナの郷土料理があると思いきや、実は店主の名前ジローが由来。そんなお茶目さもある山岸さんが目指したのは、“西五反田に根ざすバル”だ。
“圧倒的コスパの逸品とスペイン各地のワインが相性抜群です”
スペインに溢れる生活に密着したバルのように、気楽にワイン片手にお喋りしてもらうべく、ワインはグラス¥700から、料理は¥1,000前後が大半だ。
塩胡椒とオリーブオイルだけで仕上げた「豚肩ロースの炙り焼き」¥880。下に敷くのは玉ねぎのマリネ。
「ホタルイカのアヒージョ」(¥1,200)は、最後に卓上で白ワインをかけて完成させる。刻んだ生ハムとエシャロットがアクセント。
「真鱈のピルピル」(¥1,500)のピルピルとは、鱈の旨みをオリーブオイルで乳化させたソース。
店ではこのソースのために鱈を干し、頭や骨、皮、貝の出汁で作る。
浅倉さんの好物は裏メニューの「イカ墨のフィデウア(パスタのパエリア)」。イカ墨の旨みにワインが進み、「楽しく酔える最高のお店」との浅倉さんの言葉にも沿う逸品だ。
美味しいのはもちろん、感情を解き放つことのできる酒場が、ユニークな料理人のエネルギーを養っていた。
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1980年生まれ、北海道出身。『大木戸 矢部』などで腕を磨き、2014年に独立を果たす。
2024年には移転を機に店名を『御料理 太いち』と改め、コースと単品を組み合わせるスタイルに。
3.『御料理 太いち』の佐藤太一さんが選ぶ『ビストロ ミカミ』のやみつきトマトパスタ
“ぎっしり書かれたメニューから選ぶのが楽しいです”
創業は1994年。『ビストロ ミカミ』が30年以上にわたり東京で愛され続ける理由は、ゲストの声に耳を傾けながら、料理もスタイルも進化してきたから。
マダムの真夕美さんは「常連の方の食べたいものを出していたらいつの間にか増えちゃって」と笑う。その言葉どおり、黒板には細かい字でびっしりとメニューが並ぶ。
「とにかくメニューが多くて選べるのが魅力的ですね。アラカルトで自由に頼めるのも楽しいし、どの料理も手を抜かず、しかもリーズナブルなんです」と語るのは佐藤太一さん。
“気取らない街のビストロで、ワインを呼ぶ逸品たちに癒やされます”
中にはコロッケや春巻きなど、フレンチの枠にとらわれないメニューもあり、さらにいろいろ楽しめるようにポーションは小さめ。
こうした、フレンチでありながら洋食の自由さを兼ね備えたスタイルが、佐藤さんの心を惹きつけている。
力を入れなくてもほろりと切れる「和牛ホホ肉の赤ワイン煮込み」¥1,500。
セロリの食感も小気味よい「白イカとセロリのサラダ」¥1,100。ビネガーを効かせたマスタードソースで和える。
また食事の〆にパスタを楽しめるのも、ここならではの魅力。佐藤さんのお気に入りは「フレッシュトマトの辛いパスタ」。
ワインの種類もそろっているので、「その日のオススメを選んでもらうのが毎回の楽しみです」と話す。
そんな佐藤さんにとって、親しい友人と美味しい料理とワインで心地良く過ごすことのできるかけがえのない場所なのだ。
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1989年生まれ、北海道出身。『青山 えさき』、赤坂『松川』などの名店で腕を磨き、2024年に自身の店『無題』を開店。
まっさらな表札は何にもとらわれずに料理を味わってほしいという意。
4.『無題』の鈴木智之さんを虜にした『PST 六本木』のもっちりジューシーピザ
“巨大なピザ窯で焼き上げるライブ感に、食欲が駆り立てられます”
「世界中のレストランを食べ歩いているアメリカ人のグルメなお客様から、“世界一美味しいピザはローマではなく東京にある”と聞いて初めて訪れたときの感動は、いまでも忘れられません」と語るのは鈴木智之さん。
それ以来、東京のオススメのレストランを尋ねられると、決まって「世界一のピザは東京にあるらしいですよ」と『PST 六本木』紹介しているという。
“月替わりピザも確かな味わいで、個人的ナンバーワンピザです”
そのピッツァは、オーナーの玉城 翼さんオリジナルブレンドの生地に、農園から届く野菜、イタリア直送のフレッシュなモッツァレラチーズなど、素材一つひとつを丁寧に選び抜いている。それをシンプルに組み合わせるセンスが『無題』の世界観とも響き合う。
「月替わりのピッツァは、素材の組み合わせが楽しくてワクワクします。ラザニアやミートボールといった一品料理も本当に美味しくて」と家族そろってファンだという。
また鈴木さんがハマったのが「自家製リモンチェッロソーダ」。ここで出合って、家でも自分で飲むようになったほどだとか。
窯で熱を入れる熱々の「国産牛の窯焼きラザニア」¥1,880。
赤ワインで煮詰めたトマトソースの下にベシャメルソースがしのばせてある。たっぷりのとろけるチーズが食欲をそそる。
トマトソースで煮込んだ合い挽肉の「ミートボール」¥1,980。肉の旨みが凝縮している。
「席数が多いから、当日に思い立って電話しても入れることも多いんです」と、鈴木さん。
気軽な日常使いができるお気に入りの一軒として、足繫く通っているのだ。
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京都『嵐山 吉兆』で8年、『銀座小十』で5年修業したあと、姉妹店である『銀座 奥田』で店長を任され2年務める。
2020年3月に独立し『赤坂おぎ乃』をオープンした。趣味は料理。
5.『赤坂おぎ乃』の荻野聡士さんが唸る『ドゥエリーニュプリュス』のひんやり鱧料理
“ここでしか食べられない唯一無二感に、つい足を運んでしまいます”
荻野聡士さんが10年以上通うのが『ドゥエリーニュプリュス』。元は四谷3丁目にあり、4年前に牛込柳町に移転してからも訪れる。
その理由について、「癒やされたいときに来ています。店主の瀬野景介さんは、人柄もさることながら料理が素晴らしいです。和洋中どのジャンルの知識もあり、美味しく楽しい料理が多い。ここでしか食べられない料理ばかりで勉強になります」と荻野さん。
“シェフの自宅に招かれたような心地良さに癒やされます”
瀬野さんは欧州での修業も含めフレンチとイタリアンの経験が長く、中華も研修し、独学で和食も知る。
2021年に移転し、「僕の自宅にお招きしたかのように、気の置けない雰囲気で美味しいものを食べてもらいたい」と小体な店をひとりで営む。
コースには料理人も驚くレシピが多く、荻野さんは「鱧のお料理が特に好き」と話す。
さっと出汁に通した“落とし”の鱧と合わせるのはレモングラスのスープ。繊細な身質の鱧がさわやかな香りを纏い、和食店ではまずない仕上がりに。
また、パスタ生地で作る小籠包も斬新。中に豚肉とコンソメを入れ、生地には季節のフレーバーを練り込み、初夏なら新茶が香る。
よく知る食材の魅力の引き出し方が未知の領域で、荻野さんほどの料理人もときめくのだ。
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