2026年に向けて再開発真っただ中の自由が丘。しかし大きな進化を目前にしてもヨーロッパを彷彿させる美しい街の雰囲気は健在。
柔らかな風が吹き、足元には石畳が続く。そのハイソな空気に呼応するように地域に根付くのが、洋の風を感じるフレンチとイタリアンだ。
中でも話題と実力を兼ね備える珠玉の4軒を厳選した。
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1.かつての『mondo』が生まれ変わり、地産地消の柔らかなイタリアンへ。名店の誕生に歓喜する
『Siamo noi』
自由が丘で16年間、食通の間で人気を馳せていたイタリアン『mondo』が、今年2月に店名とメニューを刷新した。
新たに名づけられた『Siamo noi』とは“わたしたち”という意味。
半年の充電期間に他店で修業したスタッフはもちろん、産地を訪れてつながった生産者など、「店に関わる全員で最高の料理を提供したい」という想いが込められている。
自由が丘の朝採れ野菜が、繊細なひと皿に彩りを与える
料理に掲げたコンセプトは、日本の恵みを使うイタリアン。食材は自分の足で行ける範囲のものに限り、自由が丘近郊にある「髙橋農園」の野菜や、三浦半島の卸「さかな人」の魚を毎朝自らの足で仕入れ。
秦野の湧水や店の庭で育てたハーブ、果物も織り交ぜた、地産地消のイタリアンが訪れる人を魅了する。
魚は毎朝、宮木シェフが「さかな人」の長谷川大樹さんの元で仕入れる。
長井漁港で取れたヘダイには、天然の明日葉と、1週間かけて抽出した糠漬けとトマトのエキスを。
パスタは秦野産とイタリア産の小麦、全卵で作る生地に空気を含ませ2時間かけて伸ばす。透けるほど薄く軽やかな口当たりは感動もの。
バターで和えたタリアテッレに、「髙橋農園」のつぼみ菜の滋味と秦野「みくるべたまご自然農場」の放し飼い有精卵の濃厚なコクが重なる。
新装されたオープンキッチンでは、目の前で手打ちパスタを作るなどライブ感も味わえるように。
素材の特長を引き立てた美しいひと皿と、美味の裏側にあるストーリーを味わう珠玉のコースは、オーナーシェフの宮木康彦さんを筆頭に4人のスタッフたちで紡ぐ物語のよう。
自由が丘の隠れ家で、感性に響く美食体験が叶う。
― chef's voice ―
店の場所に自由が丘を選んだ理由は?
「駅から少し離れると住宅街が広がり、ゆとりある暮らしをしている人たちが多く、おおらかで品の良い場所。そんな空気感が気に入ってお店を構えました」
2.旬の魚介がぎっしり詰まったパイ包み焼き。ひと口食べれば、リトル・パリの風情を知る
『ル モンド グルマン』
自由が丘マダムが行き着く先は、実直で優しいクラシカルなひと皿
今年で創業10年目を迎える『ル モンド グルマン』。フランス語で“食いしん坊の世界”を意味する店名よろしく、店内の黒板には手書きのメニューがずらりと並び、心は湧き上がりお腹が空いてくる。
キッチンで腕を振るうのは、店主の嘉藤貴士さん。恵比寿『タイユバン・ロブション』『レストラン タテル ヨシノ 銀座』など、名だたる星付きフレンチで経験を積んだ実力派シェフが、自身の店に掲げたのは地元に根付いた“日常的なフレンチ”。
充実するアラカルトメニューの他に、全5皿のコースは¥8,800とお手頃。
「土曜日の晩ごはんをご夫婦や家族で食べにいらっしゃる地元の常連さんが多く、そういった方たちに支えられています」と嘉藤さんは話す。
「食べた瞬間にわかりやすく美味しい料理」をモットーに、クラシカルな手法を用いた料理は手間暇かけた実直な味わい。盛り付けも奇をてらうことなく親しみやすい。
舌の肥えた地元のグルマンたちが、ここを普段使いする風景がいかにも自由が丘らしい。
― chef's voice ―
店の常連客の雰囲気は?
「常連さまは自由が丘在住の50代前後が多く、かしこまりすぎず品の良い賑やかさ。ご夫婦やカップルで気軽に楽しんでくださる印象です」
3.四季を感じる洗練のコース。8席限定のカウンターは優雅な熱気に包まれる
『luogo』
旬を閉じ込める繊細な技法に、感度高き大人も息をのむ
「聖地と呼ばれる川で取れる天然鮎は、清涼感のあるメロンの香りがします」と店主の泥谷俊介さん。『luogo』の小さなL字カウンターでは、香りと旨みを引き出す旬のコース料理が奏でられる。
泥谷さんは岐阜の農業高校出身で、生産者となった全国の友人のつながりで上質な素材が手に入る。だから店には、直接生産者から四季の恵みが届き、客は素材の味が鮮烈に感じられるひと皿がいただけるというわけだ。
加えて京都の『イル・ギオットーネ』で腕を磨いた経験を持ち、和の素材や手法を用いたイタリアンはお手の物。
これから夏にかけてコースのメインとなる食材は“鮎”。
なんと泥谷さんの父・高弘さんはアマチュアながら鮎釣りの名手で、聖地・高原川から香り豊かな鮎が毎日届けられる。その上質な鮎を活かすため、多くの料理で炭火焼きを採用。
「鮎を丸ごと味わうとき、コンフィにされることが多いですが、それだと香りが消えてしまう。ぜひ炭火焼きを食べてほしいですね」と泥谷さん。
「群馬麦豚の生ハム 木更津のモッツァレラチーズ」。
熟成12ヶ月の麦豚の生ハムは脂の口溶けが良く、オリーブオイルなしでもチーズとの相性抜群。
「真鯛のカルパッチョと山菜のサラダ仕立て」。
昆布締めした真鯛を生ハムで炊いたたけのこで包む。柑橘の香りをつけたホワイトバルサミコのドレッシングでさっぱりと。
素材を活かした美しい盛り付けとともに、自然の恵みを存分にいただく幸せがある。
― chef's voice ―
来店するゲストの印象は?
「自由が丘近隣のご夫婦やご家族、食を趣味とする美食家の方が多く、たくさんの出会いがあります。営業中の会話も楽しく、充実した時間を過ごしています」
4.「学園通り」に佇む心温まるフレンチは、品の良い夫婦たちの憩いの場になる
『LOCRONAN』
フレンチ激戦区の自由が丘で、地元民に寵愛される『LOCRONAN』。
店主の石井啓資さんは、バスクやリヨンで研鑽を積み、帰国後は『オーバカナル』や神田のビストロなどを経て2011年に同店をオープン。
丁寧で滋味深いひと皿にフランスの優美な古都を想う
黒板に目をやると、パテカンに鮮魚のポワレやジビエ料理……フレンチの定番にまじって、「郷土料理が好きで自分の色を出せるように」とクネルやピペラードといった各地方の料理も顔を覗かせる。
アラカルトも充実するが、ディナーのフルコースが¥6,985からというハイコスパでこちらも人気。さらに驚きはひと皿のボリューム。なんと写真の料理で一人前の量!
ジビエのシャルキュトリーをはじめ、仕込みの丁寧さが伝わる料理はすべて手作り。
ご馳走がコンビになった「豚肩ロースのスパイス焼き、蝦夷鹿ミンチ肉のパイ包み焼き」。
「タラとオマールのクネル」は、リヨン時代のスペシャリテを再現。タラのすり身の中にはオマールエビが入る。
スペシャリテコース(¥11,550)より。
デザートに至っても、近所の人気パティスリーも驚く美味しさで、その満足度の高さからわざわざ足を運ぶ食通も少なくない。
当日予約でふらりと訪れ、2皿とワインを楽しんでいくご近所さんが多く、時に仕切りの向こうが“常連専用カウンター”になることも。
地元を大切にするおもてなしも、この街の上質な大人に愛される所以だ。
― chef's voice ―
自由が丘のゲストの15年間の変化は?
「お客様は田園調布や九品仏に住む大人層が中心ですが、最近は20~30代の方も。舌の肥えたフレンチ好きや美食にこだわる人が多いのは昔から変わりません」
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