609dd3ca9ea41edd62aafb8aa94f14
SPECIAL TALK Vol.128

~兄に、家族に支えられて、もう一度オリンピックの舞台を目指す~


一歩先を行く兄と家族の愛情に支えられて


金丸:燃え上がってからの成績は、どうだったんですか?

阿部:中学1年生のときは県大会で優勝したけど、全国大会ではベスト16。2年生のときは全国大会の決勝で負けて、3年生でついに優勝しました。

金丸:着実に実力をつけていったんですね。

阿部:でも、一二三は中学2年生で日本一になっているんですよ。私は「天才肌」なんて言われることもあったんですが、一二三はものすごい努力家です。

金丸:一番近いところに一番の目標というか、お手本のような存在がいる。素晴らしい環境ですね。

阿部:まあ、優勝した兄を見て、すごいと感動したのと同時に、「同じ血が流れているんだから、私も優勝できるだろう」なんて思っていました。

金丸:なんだかポジティブでいいですね(笑)。

阿部:振り返ると「自信過剰になっていたかも」ということが何度かありましたね。たとえば高校1年生のときも、優勝するつもりで出場した夏のインターハイで1回戦で負けてしまって、すごくショックでした。毎試合、自分の出せる力を100%出し切るつもりで臨まなきゃダメだ、って改めて思い知らされましたね。そのおかげもあって、翌年3月の全国高校選手権で優勝することができました。

金丸:よかったですね。一二三さんと詩さんは、おいくつ離れているんですか?

阿部:3歳違いです。だから私が高校1年生のとき、兄は大学1年生。ちなみに高1の12月の国際大会「グランドスラム東京」では、私が準優勝、当時日体大にいた一二三は優勝しています。

金丸:いや、本当にすごい。その後も、同じ大会できょうだいそろって好成績をあげ、東京オリンピックではともに金メダルに。

阿部:3つ離れているから、一二三がいつも先にいる。そんな存在がいてくれることがとてもありがたいです。一二三だけじゃなくて、家族みんなに支えられています。

金丸:お父様が無理にピアノを続けさせなくてよかったですね(笑)。

阿部:まだ実家にいた頃、父はものすごく熱心に一二三の練習に付き合っていたんです。でも私に対してはそこまでじゃなくて……。それを不満に思うこともありました(笑)。

金丸:男親だから、娘との接し方にちょっと戸惑うところがあったんだと思いますよ。でも寄り添う気持ちは、お父様もお母様もきっと同じだと思います。

阿部:大学は兄と同じ日体大に進んで、初めて親元を離れて東京に来たんですが、たった1週間でホームシックになってしまって。

金丸:愛情深いご家族のもとで育っているから、そのぶん寂しかったんですね。

阿部:泣きながら家に電話をかけたら、母から連絡を受けた一二三が会いに来て、夜中なのに一緒にパンケーキを食べに行ってくれました。それで寝て起きたら、今度は母が来てくれて。

金丸:えっ!?お母様が飛んできてくれた?

阿部:「喫茶店は閉めるから、一緒に暮らそう」って。それ以来、いまも母と一緒に暮らしています。

金丸:家族の絆が本当に強いですね。ご本人の努力や才能も当然あると思いますが、こういう家庭で育った子どもは、ピンチになったとしても家族が支えてくれると信じられる。だから挑戦することを恐れずに、どんな分野でも活躍できると感じます。ちなみに、お父様はまだ神戸にいらっしゃるんですか?

阿部:はい。母が東京に来てしまったので、ひとりで寂しがっていると思います(笑)。

SPECIAL TALK

SPECIAL TALK

この連載の記事一覧