
~「家族」を描き続けたからこそ、映画の先に見えてきたものがある~
令和のニューリーダーたちに告ぐ
コロナ禍により開催が延期になった東京オリンピック。多くの人が翻弄される中、公式記録映画のカメラを回し続けていたのは、総監督の河瀨直美氏だ。
カンヌ国際映画祭では1997年にカメラ・ドール(新人監督賞)を最年少で、2007年にはグランプリを受賞するなど、国内はさることながら、国外でも、その作家性が非常に高い評価を受けている。
高校時代はバスケットボール一筋で国体出場まで果たした体育会系。そんな河瀨氏がどのように映画と出合い、どんな思いで制作を続けてきたのか。
大阪・関西万博のテーマ事業プロデューサー兼シニアアドバイザーなど、多方面で活躍する河瀨氏の素顔に迫る。
河瀨直美氏 生まれ育った奈良を拠点に映画を作り続ける映画作家。一貫した「リアリティ」の追求はドキュメンタリーフィクションの域を越えて、カンヌ国際映画祭をはじめ、世界各国の映画祭での受賞多数。世界に表現活動の場を広げながらも故郷奈良にて、2010年から「なら国際映画祭」を立ち上げ、後進の育成にも力を入れる。東京2020オリンピック公式映画総監督、2025年大阪・関西万博のテーマ事業プロデューサー兼シニアアドバイザー、ユネスコ親善大使、奈良県国際特別大使を務めるほか、CM演出、エッセイ執筆などジャンルにこだわらず活動を続け、プライベートでも野菜やお米を作るなど活動的。
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金丸:本日は映画作家の河瀨直美さんをお招きしました。お忙しいところ、ありがとうございます。
河瀨:こちらこそお招きいただき光栄です。
金丸:今日の対談の舞台は『元あざぶ くしま』です。大将の串間さんは宮崎県のご出身で、大門の『くろぎ』の黒木さんとは高校の同級生という間柄だそうです。『くろぎ』で腕を振るわれたのち、独立するかたちでこちらを昨年10月にオープン。正統派日本料理に、肉をフィーチャーした“肉懐石”をいただけるそうです。
河瀨:これ、本気で食べていいんですか?食べるフリとかじゃなくて。
金丸:もちろんですよ(笑)。
河瀨:こんな素敵なお料理をいただきながらなんて、テンション上がりますね。
金丸:河瀨さんの映画は何本か拝見しています。今日初めてお会いして、想像していた雰囲気とまったく違って驚いています。
河瀨:よく言われます(笑)。取材される方が緊張してはることがめっちゃ多いんですよ。
金丸:映画で描かれる人間模様からは重たい空気を感じましたが、監督がこんな気さくな方だったとは。それに関西弁なんですね。
河瀨:奈良生まれの奈良育ちで、今も住んでるのは奈良ですから。
金丸:映画を撮っているときは、何かスイッチが入るんですか?
河瀨:そうかもしれません。ひいひいおばあちゃんは奄美のユタ、つまりシャーマンでした。
金丸:ルーツはそちらだったんですか。私も鹿児島市で育ちました。
河瀨:奈良生まれなので、山の物語ばかり撮っていますが、唯一の海の映画『2つ目の窓』は奄美大島で撮ったんですよ。
金丸:映画のほかにも多方面で活躍されていて、大阪・関西万博のテーマ事業プロデューサー兼シニアアドバイザーのひとりでもいらっしゃいます。たまたまなのですが、前回は同じくプロデューサーの中島さち子さんと対談しました。
河瀨:さち子、めっちゃしゃべってたでしょ(笑)。賢すぎて、しゃべりだしたら止まらない。万博に携わる8人のプロデューサーは、東大や京大の出身が多いので、一緒に並んでると自分だけ浮いてないか心配です(笑)。
金丸:さらには、バスケットボール女子日本リーグ会長も務めていらっしゃいましたよね。
河瀨:そうです。実は高校時代に国体に出場したことがあって。
金丸:めっちゃ体育会系じゃないですか!?私はいま、日本ハンドボール協会の会長を務めています。お会いする前は緊張していましたが、今日はいろいろとお話が盛り上がりそうです(笑)。どうぞよろしくお願いします。