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30歳になりまして Vol.3

「マッチングはするのに、続かない」2回目のデートもすぐにお開きに…30歳女の切実な悩みとは

宏伸さんからのLINEの内容は『今週末会えませんか?』というシンプルなものだった。

それだけでも、水を得た魚のように呼吸がしやすくなる。私はあえて時間を置いてから「はい、日曜日はどうでしょうか?」と返事をした。

そして、約束の日曜。

私は早起きしてしっかりとメイクを施し、いつもはしないハーフアップにして、ヘアセットまで頑張ってみた。

ランチの場所として指定されたのは、六本木の中華料理店。

個室に案内され、宏伸さんが笑顔で出迎えてくれる。

「今日は前回の反省を活かして、ちゃんと予約をしてきました」


照れたように言う宏伸さんを、可愛らしいと思った。

食事は美味しく、会話も初回のデート以上に盛り上がった。特に宏伸さんが、趣味の鉄道について語ってくれたのが面白かった。

少年のように夢中に、でも、私を置いていかないようにわかりやすく噛み砕いて話してくれる。初対面ではコミュニケーションがあまり得意ではないように見えた宏伸さんだが、案外会話のテンポが合う。

もっと彼を知りたい。食事が終わる頃には、純粋にそう願っていた。

「はあ〜満腹!宏伸さん、ここのお店とっても美味しかったです」

「美味しかったですね。このあとは、六本木ヒルズの美術館なんてどうでしょうか?手塚治虫の展示をやっているみたいで」

「いいですね!私も気になってました」

「よかった。じゃあ、とりあえずお会計してきます」

私は慌ててお財布を出すが、宏伸さんは笑顔で首を横に振る。

― ああ、素敵な人だな。


実際のところ、大手保険会社営業の勇斗さんのほうがタイプではあった。でも、1週間も連絡がないことを思うと、彼はきっともう自分に興味がない。

― だったら、どうにか、宏伸さんと…。

個室のドアが開き、宏伸さんが帰ってくる。

「お会計ありがとうございます。ごちそうさまです。美術館は、私がお出ししますね…」

私の声のボリュームが徐々に下がったのは、あんなにニコニコしていた宏伸さんが、なぜか真顔のままだったからだ。

「あの…宏伸さん、何かありましたか?」

すると宏伸さんは席にゆっくりと座り、突然頭を下げた。

「菜穂さん、ごめんなさい」

「え?」

「デートはここまででもいいでしょうか」

私は戸惑いながら、支払いに何か問題があったのだろうかと思った。うっかりお財布を忘れたとか、そんなことかと。

しかし、宏伸さんが口にした言葉は、予想外のものだった。

この記事へのコメント

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No Name
「はあ〜満腹!」 オッさんかよ。どうも好きになれないこの女。次は結婚相談所か。前にも読んだ事あるような展開....
2025/05/21 05:2216
No Name
ほらー。先週、まだまだ市場価値があるとか調子に乗ったから。
アプリだし菜穂も複数人とデートしてたんだから、まぁ相手も同じだろうし仕方ないよ。
2025/05/21 05:1612
No Name
何だろうね。勇斗はイケメンだったっけ、もっと美人な女性とマッチしたからとかそんな感じ? 忘れた頃またLINEくると思うよ。ただ、菜穂が勇斗に対して34歳でバツもないなんて問題でもあるのか…とんでもない爆弾抱えてたら嫌だとか思って探りを入れてたから、それに彼が気付いたのかもしれない。 宏伸さんいい人だったのにねぇ。まぁ相手によっては話が合わないと感じる可能性もあるのかな。 
相談所で様々ダメ
出しされて婚活に疲れが出始めた頃、時短勤務の同僚との対談で彼女に既婚マウント取られて落ち込み、元カレに連絡とかそんな話の流れか?笑
2025/05/21 06:378
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30歳になりまして

「30歳」

その数字は、女性の心に妙に重くのしかかる。

「年齢なんてただの数字」と本人は思っていても、世間がそれを許してくれない。

職場では、つい最近まで若手だったはずなのに、いつのまにか中堅どころになっている。

マッチングアプリだって自動的に30歳になった途端に「いいね」が減った気がする。

気持ちは追いついていないのに、30歳という年齢の重みがが急にのしかかる。

大手IT企業のマーケティング部で、課長職を担う桜庭菜穂は、30歳になって迷いが生じ始めた…。

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