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30歳になりまして Vol.1

30歳になりまして:「時短で働く女性が正直羨ましい…」独身バリキャリ女のモヤモヤ

3日後、日曜日の昼。

四ツ谷駅にある商業施設周辺を一人でブラブラしていた私は、ふとLINEを確認し、足を止めた。

中高一貫校時代のダンス部のグループLINEが、久々に動いている。

『このたび結婚することになりました。そして実は今、お腹の中に赤ちゃんがいます』

その報告に、私は思わず「えっ、すごい」と声を漏らす。

友人は、高校時代からずっと子どもがほしいと言っていたのだ。それで、ここ数年、一生懸命に婚活をしていた。苦労を知っているから、報告だけでも涙が出て、視界が揺らぐ。

このグループLINEには、こういった結婚報告や妊娠報告、出産報告が、数ヶ月に一度は上がっている気がする。

― 私だけが、全然投稿してないな。…っていうか。

8人いるダンス部の同期は、これで、私以外みんな結婚したことになる。そのことに気づくと、少しだけしょんぼりした。


歩きながら、みんなのことを考える。

― みんな結婚したり、子どもができたり、海外に移住したり。すごいよなあ。

私がそう言うと、友人たちは、よくこう返してくれる。

「でも、菜穂。結婚=幸せではないから」
「そうそう。菜穂みたいにバリバリ働いているの、本当カッコいいよ」
「結局、独身時代のほうが幸せだったよねえ」

彼女たちの温かい心づかいは、どういうわけかいつも、みじめな気持ちを連れてくる。

確かに、別に結婚や妊娠がすべてではない。今の自分は、悪くない。そう思っていても、周囲と歩調がズレている自分に落ち込んでしまう。

10分弱歩いて自宅に戻ると、私はすぐにソファに寝そべった。ふと頭に浮かんだのは、マッチングアプリの存在だ。

― 久々に動かしてみようかな。

2年ほど前まで、よくアプリを使って異性と会っていた。でも真剣な交際に至ることはなく、そのうち億劫になってやめてしまった。

以来、デートすらせずに仕事に邁進してきた。

非アクティブになっていたアプリを起動し、プロフィールを入れ直す。不思議なことに、それだけで少しだけ気が楽になった。


1週間後。

― 気のせい、だと思いたい。

リモートワークの日の朝、コーヒーを飲みながらスマホを見ていた私は、マッチングアプリを開いてそっと伏せた。

なんだか3年前よりも、「いいね」が来る数が大きく減っている気がする。

― 30歳になったから?

そういう話は、聞いたことがある。アプリを始めたり、結婚相談所に登録したりするなら、20代のうちが断然いいと。

― でもそんな、一昔前じゃあるまいし。そこまで関係ないよな。

自分に言い聞かせつつも妙な焦りがあり、私は目についた何人かに「いいね」を送ってみた。

― リアクションがあるといいけれど。

恐ろしくなってきた私は、現実から逃げるようにマッチングアプリの画面を閉じ、社用PCを開いた。


▶他にも:アプリで出会った女性と2回目の神楽坂デート。32歳男が帰りに女を家に誘ったら…

▶NEXT:5月14日 水曜更新予定
30歳、自分の願う幸せに向かって動き出した菜穂。マッチングアプリの手応えは?

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この記事へのコメント

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No Name
東カレは本当に年齢を絡めた後ろ向きな話が好きだよねw
30歳なんて気の持ちようだし人生まだまだこれからなのに。
2025/05/07 05:4431
No Name
ぜひお受けさせていただきます🤣
2025/05/07 05:2020Comment Icon3
No Name
そりゃ安西さんとの対談は嫌だよ。会社も悪意を感じる。
2025/05/07 06:5216Comment Icon1
もっと見る ( 18 件 )

30歳になりまして

「30歳」

その数字は、女性の心に妙に重くのしかかる。

「年齢なんてただの数字」と本人は思っていても、世間がそれを許してくれない。

職場では、つい最近まで若手だったはずなのに、いつのまにか中堅どころになっている。

マッチングアプリだって自動的に30歳になった途端に「いいね」が減った気がする。

気持ちは追いついていないのに、30歳という年齢の重みがが急にのしかかる。

大手IT企業のマーケティング部で、課長職を担う桜庭菜穂は、30歳になって迷いが生じ始めた…。

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