オトナの5分読書 Vol.37

低年齢からのハードな塾通いがもたらす弊害。受験を突破し、名門校に通う子たちの悲鳴

忙しい毎日の中で幼い頃から日常的に十分な睡眠時間が取れず、脳が上手く育たなかった結果、不登校や体調不良といった症状が現れていることがわかりました。

彼らと向き合う中で私が思うことは、昼夜問わず勉強し、念願の名門校に合格できたとしても、必ずしも幸せになれないということ、それどころか、代償を伴うケースが非常に多いということです。

世間一般でいう「いい学校」に進学できたとしても、子どもの心身に異常をきたすようでは本末転倒です。

2. 中学受験で心が壊れた子どもたち


中学受験を目指す小学生の中には、毎日ハードな塾通いによって心身を壊してしまう子どもが本当にたくさんいます。

私が代表を務める「子育て科学アクシス」には、連日そのような親子が相談にやってきます。

学習塾の存在を一概に否定するつもりはありません。ただ、子どものタイプや塾の教育方針によっては、一定のリスクがあることを知っておいてほしいのです。

リスクの1つは、低年齢からのハードな塾通いと、塾で出される膨大な宿題によって生活のリズムが崩れ、脳の大事な部分が育たなくなることです。


小学生のうちは、脳の土台部分を作る大事な時期であり、十分な睡眠と規則正しい生活が何よりも大事です。夜遅くまでの勉強で生活リズムが乱れ、睡眠不足が続くと自律神経の不調による様々な身体症状が現れる可能性があります。

もう1つのリスクは、塾の先生や友達からのプレッシャーにより、必要以上に不安になってしまうことです。

塾では常に成績を競わされ、家に帰っても親が勉強させようと待ち構えている。そのような心休まらない毎日が、子どもの脳育てにいい影響があるとは到底思えません。

では、どうすればよいのか。

規則正しい生活の中で、よく食べ、よく眠り、子どもも家庭の一員としての役割をしっかりと果たす。たったそれだけのことで、さまざまな症状を抱えていた子どもたちの心身はもちろん、親の状態もみるみるうちによくなることがあります。

以前、小学4年生の息子の国語の出来が悪いからと、毎日学習塾に通わせ、家に帰ってからも夜中の12時までつきっきりで宿題を見ているというお父さんがいました。

問題を間違えるたび、お父さんに怒鳴られていたため、息子さんのほうはすっかり畏縮しています。おまけに連日の寝不足により自律神経が乱れ、毎朝決まった時間に起きられなくなっていました。

そこで、とりあえず塾に通うことをやめてもらい、早寝早起きの生活習慣を取り入れてもらったところ、みるみるうちに息子さんの状態が良くなっていったのです。

ある時、お父さんがふと息子さんを見ると、机に向かって何かを一生懸命書いていたそうです。聞くと自分で思いついた小説を書いているとのこと。

文章を読むのが苦手で、自分で物語を書くことなんて絶対にできないと思っていた息子が、壮大な長編小説を書いていて、しかも読ませてもらったら内容も面白い。お父さんは驚きを通りこして感動してしまったそうです。

こうした想像力があるのは、脳がちゃんと育っている証拠です。そのことを伝えるとお父さんは「この子なら大丈夫だ」と安心し、それ以降はテストの点数に一喜一憂することもなくなり、過干渉もなくなりました。

子どもの発達は、学校のテストでは測れません。毎日の生活を通して、親が気づいて認めてあげることで伸ばすことができるのです。

そうは言っても、やはり子どものテストの点数や成績が気になるし、見たら一喜一憂してしまう、という親御さんもいらっしゃると思います。

学校の成績を当てにしすぎるのは危険です。大事なのは、親が子どもを観察することです。

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