2024.11.19
駅前を起点に四方八方に延びた路地に、飲み屋が所せましと軒を連ねる「三軒茶屋」。
歩けば魅力的な店に出合える街だけに、店をハシゴしながら楽しめるのも、三茶ならではの魅力だ。
そこで本企画では、1軒目に行きたい間違いのない人気店をご紹介。
◆
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新旧の飲食店が入り交じる、三角地帯の奥の方。
酒場やラーメン店といった大衆的な業態の店が多いエリアに溶け込むような、リラクシーな空間で料理とナチュラルワインを楽しめるのが、ここ『umbilical』だ。
店を切り盛りするのは、シェフの小野貴裕さんとソムリエの高橋 春さん。
代々木上原で人気を博したカジュアルフレンチ『Gris』で経験を積んだ小野さんの料理は、フレンチをベースにしつつ自由なアレンジもプラス。
お通し代(¥600)で供される「フォアグラのマカロン」もファンが多い一品。
また、ふたりとも岩手県出身なことから、スペシャリテのブイヤベースなど大船渡漁港から届く旬の魚介を使った料理も多くそろえる。
ボトルを抜いてワインと料理をじっくりと楽しむ。あるいは、軽いおつまみとグラスワインでサクッと。
どんなシチュエーションでも気負わず訪れられる、さりげなくも頼もしい1軒だ。
開店から1年足らずで大盛況な『赤星』。
90年代のJポップが流れるカウンター中心の店内や縄のれんの外観など、絶妙なレトロ感とお洒落さで人気を集めているが、渋谷の『タートル』を手がけた久我耕輔さんの新店と聞いて納得。
修業時代を過ごし、在住歴もある三茶で「いつもの酒と肴が今日も変わらず美味しい大衆酒場」をさすがのセンスで形にしている。
料理はタートルと同じく『銀座 鼓門』の浅倉鼓太郎さんと共同開発。渋谷でおなじみのメニューもそろうが、飲んでいるといつも以上にほぐれていく。
地味なビジュアルが逆に映える「肉豆腐」(¥748)は、味の染みた豆腐が抜群。
ねっとり甘い身にお酒も進む。漬けダレも濃厚な「酔っぱらい海老」3尾¥748、追加1尾¥253。
「同じ酒場ですが、こちらは引き算で空間を構成しました」と久我さん。
そのせいか、地元にいるような温かい雰囲気もある。その上、接客もフレンドリーとくれば、賑わうのは当然。
すべてにおいてレベルが高いネオ酒場こそ、夜の始まりにふさわしい。
三茶で本場のナポリピッツァといえば『トラットリア ピッツェリア ラルテ』一択。それほど街で愛されてきた名店だ。
修業先も独立1号店も中目黒だった、店主で職人の井上 勇さんが三茶に2号店を開いた理由は「当時、飲み歩いていた街だったから(笑)」。
知人がバーを開いたことを契機に通うようになり、街の良さを実感して出店を決意。2011年に創業した。
特注の石窯で薪を使って焼くピッツァはもちろん、ほかの料理も本場さながらの美味しさ。
定番「マルゲリータ」と塩豚が旨い「ポルケッタ」のハーフ&ハーフ¥2,600。
ナスでチーズを巻き、トマトソースをかけてオーブンで焼いた「冷製リコッタチーズの揚げナス巻き」¥1,600。
しかし、それ以上に抜群のチームワークを見せるスタッフと本物を求めて集まった地元客との交流によって醸される、この賑々しさが人気店に上り詰めた最大の理由だ。
最近は若い人も増えた、いまの三茶でも変わらずに心地良い喧騒は続いている。
まずはキリリと冷えた白ワインで乾杯を。笑顔から始まる一夜はいつだって最高に決まっている。
茶沢通りから三宿方面に延びる「太子堂中央商店街」。
そこに立ち並ぶ飲食店の中でも先輩株なのが、2010年にオープンした『ジェネラルストア ミカワヤ』。
NYでの学生生活を経て、ハワイや香港でも飲食業に携わってきた木村亮一さんが切り盛りする店は、肩肘張らずに過ごせるオープンな雰囲気。
メニューも、肉も魚も野菜も〆も、という全方位型で、訪れるゲストのお腹と心を満たしてくれる。
名物の生牡蠣は、開店1周年パーティを開く直前に東日本大震災があり、チャリティの会にシフトして宮城から仕入れたことがきっかけでメニューに。
あまりの人気に、10年以上採算度外視で続けている一品だ。
また、常連客のリクエストに応えて作ったハンバーグがメニュー化するなど客思いの逸話も。
ふらっと行っても無論楽しいが、顔なじみになりたくなる店だ。
地元民の暮らしが根付く、太子堂商店街にある人気酒場といえばこちら。
創業10年目を迎える『三茶呑場 マルコ』は、三茶に『ニューマルコ』、『COMARU』、『食堂かど。』を展開し、下北沢、虎ノ門にも姉妹店があるマルコ系列の総本山。
いまやハイコスパな酒場が増えたが、そんな三茶のニュースタンダードは同店が築いたと言っても過言ではない。
ひと手間かけた創作和食は、全国から厳選した食材を使った本格的な味わいで、酒が進む一品ばかり。
〆の名物「塩引鮭とイクラの釜飯」1合¥2,000(写真は4合分)。
¥7,000コースの一品だが、予約時に注文すれば単品も可。
旬の魚を豊洲で仕入れ。お刺身5種盛り合わせ¥2,600(2人前)は1種類おまけが付く日も!
「前菜盛り合わせ」¥1,800(2人前)は、マルコの実力を味わえる看板メニュー。
ドリンクは定番ものから、遊び心あるオリジナルカクテル、ナチュラルワインまでそろえる。
器や盛り付けにも気が利いていて、フレンドリーなスタッフの活気も心地良い。加えて、料理はほぼ1,000円以下というコスパの良さ。
三茶らしさを十二分に楽しめる満足度と安心感が、揺るぎない人気の秘訣だろう。
さまざまなジャンルの人気店が軒を並べる「ABCビル」の1階に2022年に仲間入りしたのは、魚介類が主役の酒場。
「鮨屋のネタで飲む」をコンセプトに掲げているだけに、こだわった仕入れが自慢だ。
貝類に強い豊洲市場の仲買を通じて、国産のものを選んでいる。
貝好きならば必ずオーダーしたいのが「貝介ミックス盛り」。こちらは、その日のオススメが一堂に会した盛り合わせ。
醤油が贅沢品だった江戸時代にポピュラーだったという「煎酒」をつけて食するスタイルも新鮮だ。
また、貝といえば生で良し加熱しても良し、な素材なだけに、茨城・鹿島産の大粒を厳選した「焼はまぐり」や「いろんな貝の酒蒸し」も不動の人気メニュー。
希少な銘柄の日本酒、魚介類に合う自然派の白ワインとアルコールの品ぞろえも万全で、ついつい杯が進むはずだ。
今年4月に、世田谷通り沿いに誕生したばかりの『サンサシオン』。
店名の意味でもある「感覚」を大事に、洋食も和食も、合わせるお酒も感覚的に楽しんでほしいというのがコンセプト。
こちらでいただけるのが、ジャンルレスな創作料理。
洋食や焼き鳥、エスニック料理の居酒屋など、これまでさまざまなジャンルの飲食店で修業を積んできた店主の伊藤嘉紀さんによるアウトプットが、ボーダレスにメニューに並ぶ。
その日届く野菜や市場で仕入れた魚でメニューを決めるため、2〜3日ごとにオススメの料理が変わるのも同店を訪れる楽しみのひとつ。
「カオクルックカピ」(¥1,760)はタイ中部の料理。エビ味噌の香りと旨みがくせになる。
人で賑わう駅前とは打って変わり、静かな住宅街が広がるエリアにあえて出店したのは「ゆっくり食事とお酒を楽しんでほしい」という思いから。
近所にそんな店を切望していた大人たちに、さっそく重宝されている。
暖簾だけでなく、看板にも描かれる似顔絵に思わず吸い寄せられる。『居酒屋ひでじろう』は恵比寿『酒 秀治郎』の弟分。
日本酒専門の兄に対し、こちらは三茶らしく瓶ビールからチューハイまで扱う堂々たる居酒屋で、さらに飲み放題、料理も食べ放題を60分なら3,800円で提供している。
あまりの気前の良さにクオリティを疑うが、着席すると間もなく提供される突き出し代わりの「タルタルあじふらい」などを食べれば、想像以上。料理に対する本気度が窺える。
以降は時間までメニューから好みの一品を自由に注文するシステムでラインナップも最高。酒場好きのツボを心得た80種以上の料理がそろう。
たまごとチーズで甘くない肴に仕立てた「塩フレンチトースト」。
仕入れ次第で各種刺身も。この日はサーモン昆布締め、天然ヒラメ、つぶ貝。
“今夜はハシゴ酒”の身からするとやり過ぎは禁物だが、1軒目から気分は上々。
これからは「景気付けにまずは『ひでじろう』集合」が三茶飲みの合言葉になりそうな予感。
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