東京レストラン・ストーリー Vol.38

原宿のおしゃれな2LDKで「ルームシェア」する24歳女。でも、現実は一緒に住むのは難しくて…

レストランに一歩足を踏み入れたとき、多くの人は高揚感を感じることだろう。

なぜならその瞬間、あなただけの大切なストーリーが始まるから。

これは東京のレストランを舞台にした、大人の男女のストーリー。

▶前回:「え、ここって?」深夜の六本木。終電を逃した25歳女が男に連れて行かれた意外な場所


「そのままの自分で」エマ(24歳)/ 原宿『竹の下そば』


コーヒーテーブルの上で、遅い朝の光に照らされた空の白ワインのボトルがピカピカと光っていた。

そのかたわらには同じく空のワイングラスと、つまみにしたであろう生ハムのゴミ。

そしてテーブル前のソファには、おそらくひとり夜中の晩酌中に寝オチしてしまったルームメイトの女子──ヒナタの姿があった。

― はぁ…。せっかくの休みなのに、嫌なもの見ちゃった。私やっぱり、ヒナタのこと苦手かも…。

めくれ上がったアメコミ柄のTシャツからは、ヒナタの無防備なおへそが丸見えになっている。

自室からリビングに出てきたエマは、うんざりしながらため息をついた。

― あーあ。この原宿の一等地のマンションが1人で住める値段だったら、すぐにルームシェアなんて解消するのに。

そんなことを考えながらエマは、ソファの肘掛けに腰を下ろし、ヒナタのあられもない姿をじっと見つめる。

すうすうと寝息を立てるヒナタのお腹は、余計な脂肪が一切なくうつくしくくびれている。手足はすらっと長く、まっすぐな首筋はさっぱりとしたショートカットに映えている。

まっすぐ通った鼻筋は、憎たらしいほど形がよく美しい。けれど、その上にパラパラとそばかすが散らかっているのが見えるや否や、エマは無性にイラつきを覚えた。

エマの勤務先は、外資の化粧品会社だ。

成分は全てオーガニックで植物性。動物実験もしていないというこだわりのポリシーを掲げている自社製品は、どれも実力派コスメとして評判が高い。

ヒナタのこの醜いそばかすを、健康的でツヤのある肌からすっかり消し去り、絶世の美女にしてあげることなんて簡単にできる。

けれど、どれだけメイクやスキンケアを勧めても、ヒナタは全く聞こうともしないのだった。

この記事へのコメント

Pencilコメントする
No Name
良かったね、エマ。
しかし、レストランストーリーは人気連載なのにPR記事の下に埋もれていて危うく見逃すところでした!
来週から月曜の毎週更新になるのかな?楽しみ♡
2024/11/20 06:328
No Name
ヒナタは確かにだらしないけど細かい事は気にしない大らかな人なんだね。エマは正反対な性格か? 努力もいいけど24歳にして美肌に命かけてノンアル&22時には寝たいとかスムージーに2万の酵素ドリンク入れるだのプチ断食だのちょっとやり過ぎてたよ。これじゃ彼氏出来ても面倒臭がられて直ぐフラれちゃう。 気づかせてくれたヒナタに感謝だね!
2024/11/20 06:488
♩ let it go
これで
いいの
自分を好きになって
2024/11/20 06:547
もっと見る ( 4 件 )

【東京レストラン・ストーリー】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo