2024.09.21
アオハルなんて甘すぎる Vol.32前回:「合格した人が妬ましい…」28歳女性に初めて芽生えた“欲”に、男友達がかけた意外なひと言とは
◆
どんな人にも平等に…時は過ぎる。
引越してきたばかりの時には夜の西麻布交差点を歩くだけでも怖くて緊張していたのに。酔っぱらった人たちの大きな笑い声や叫び声、夜のお店のお姉さんたちの色っぽさにも今ではすっかり慣れた。
どんなに目新しく刺激的なことも時間と共に日常になるものなのだということを、その西麻布交差点の信号待ちで、私はなぜか突然実感した。
今は8月。10月末で西麻布に引っ越してきてから2年になる。ホブソンズの前から西麻布2丁目方向へ…Sneet(スニート)へ向かうこの道を歩くこともまさに日常そのものとなっていた。
引っ越してきた時、この街で過ごすのは2年の予定だった。でもマンションの更新に迫られている今この街から離れたくないと思いながらも、更新に悩む理由があった。
信号が青になり歩き出しながら、私はここ数ヶ月のトモさんとのやりとり…そして一昨日のケンカを思い出す。
「マンションの更新のタイミングでさ…少しだけ、フランスで暮らしてみない?」
そんな提案を受けたのは、4ヶ月前。ゴールデンウィークの休みを利用して私がパリのトモさんを訪ね、そのアパルトマンで夕食を食べている時だった。
「そろそろ、一緒に暮らしたいけど、どうかな」
そう言ったトモさんがどこか申し訳なさそうなのは、一緒に暮らすという選択肢の中に、私の今の生活を変えないこと…つまり、日本で暮らすことを入れられないからだと思う。
自分のレストランを持つトモさんがパリを離れられないことは当たり前だし、となれば私がフランスに引っ越すということになり、そのために必要なビザのことを考えると、結婚という形をとる方が良いことも分かっている。
トモさんと付き合い始めたのは西麻布に引っ越してから約3か月後の1月末。その間に私がパリを訪れたのはそのゴールデンウィークを含めて2回だけれど、パリはステキな街だと思う。
フランス人はあえて英語を話さない…?という都市伝説みたいな噂に怯えていたけれど、十分英語は通じるし(フランス語アクセントの英語をうまく聞き取れるかは別として)、街が日本みたいにクリーンじゃないにしても、その不便さも悪くはないと思えた。
それになにより、私もトモさんと一緒にいたい。心からそう思っているはずなのに、一昨日、付き合い始めて最大ともいえるケンカをしてしまったのだ。
ここ数日、トモさんには厄日が続いていたらしい。
秋の新メニューで取り扱うはずだった食材が思うように手に入らず、そのために多数の予約キャンセルが出たり、厨房スタッフのいざこざを仲裁したり。そんな疲労困憊の中電話をくれたのだけれど。
「こんな時、宝が側にいてくれたらなぁって思うよ。…マンションの更新、どうするか決めた?」
更新の期限まであと2か月程。ただの質問だとは思ったものの、トモさんの口調にいつもにはない棘が混じり、ビデオ通話越しのその表情には苛立ちが見えた気がした。
「…まだ…迷ってる、ごめん」
そう伝えると、トモさんの語気がまた少し荒くなった。
......
読むことができます
アオハル連載ありがとうございました。本当に半年間すごく読むのが楽しみで大好きな連載でした。作者の方、きっと有名な小説家さんなんだと思いますが、出来ればお名前位は知りたかったなぁぁ。個人的に今まで一番好きだなと思ったのは、三茶食堂と成田空港の話だったけれど、アオハルもお気に入りに加わりました。ここまで読み応え抜群且つ面白くて翌週が待ち切れない連載はもう暫く読めないのかな…
今日で終わるけれどそれぞれの “続き話” を是非読みたいです。
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