前回:「もう少しだけ、このままでいいかな?」初デート中、東京タワーまでの道で突然手を握られて…
◆
恋を教えてと言われた日に、はじめて手をつないだ。そして、その日から彼女との関係が始まったのだと言った大輝くんに私は聞いた。
「はじめて手をつないだ日に恋人になったの?」
「まあ、京子さんは既婚者なわけだし?オレが恋人って名乗っていいのかわからないけどね」
確かに。不倫という響きに嫌悪感を捨てきれない私にとっても、不倫相手を恋人だと表現されるのはちょっと…という違和感があるけれど、でも、大輝くんが、恋人という肩書を躊躇する様子には切なさを感じてしまう。
しかもその切ない関係が、手をつないだことで始まったのだというのだから、私は急に、大輝くんの左手と繋がれた自分の右手をソワソワと意識してしまい、落ち着かなくなってきた。
つないだ手が解かれたのは東京タワーに着いてから。購入済みの展望デッキへのチケットをスタッフの女性に見せようと、大輝くんがポケットから携帯を取り出した時。
チケットの確認が終わっても、手をつなぎなおす様子がないことにホッとしていると、大輝くんが小さく笑った。
「そんなにあからさまにホッとされると男は傷ついちゃうから気をつけて」
ちっとも傷ついていない様子でそう笑った大輝くんに、スタッフの女性が、こちらでタワーの歴史や周辺の説明などが流れます、とイヤホンとスマホ型の音声ガイドを差し出した。すると大輝くんは、ありがとうございます、でも、と言った。
「僕たち、今日がはじめてのデートなので、音声ガイドにも邪魔されたくなくて。音声ガイドはお断りさせて頂いてもいいですか?」
......
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この記事へのコメント
あと、エリック登場場面では「誰だっけ?」となる読者がすぐ思い出せるように書かれていて、さすがだなぁと。天然ときめき製造機との行方が気になるけど、伊東さんともうまくいって欲しいよね♡
それに京子さんは不倫夫とその後どうなったんだろう? あの図々しい不倫女と別れないなら離婚じゃない? その辺り気になって仕方ないので、大輝と京子連載の方もそろそろ読ませてください。