前回:「キャリアに迷って…」28歳女性が、難解な社内公募に挑戦。影で支えるありがたすぎる彼の存在とは…
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『We regret to inform you that unfortunately we are unable to offer you the position this time.(残念ながら今回、あなたは不採用となったことをお知らせします)』
― ダメ、だった。
試験を受けてから3日後、木曜日の朝9時半。出社してすぐ起動したPCで朝一番に開いてしまったメールは、拝啓的な前置きも、あなたのこれからのご活躍を祈ります的な結びの文章もない、至極あっさりとしたシンプルな不採用通知だった。
合否は1週間後にはお伝えできると思いますと言われていたので、今日の通知は予定より随分早い。確かに人事部署からのメールではあったけれど、件名には社内連絡的な要素しか書かれておらず、何の覚悟もなく何気なく開いてしまった。
クレアは既に知っているのだろうかとその席の方を見て、そうだ彼女は今日、出張だったと思い出す。
すみませんと声がして振り返ると、入社3年目の後輩、角田さんだった。急遽13時までにと和訳を頼まれたんですが自信がなくて…と困り顔でタブレットを差し出される。
それは本社から届いた新薬リリースについての詳細が書かれた英文書類だった。確かにこの量はあと3時間じゃ…と彼女に頼んだ主を聞いてみると、無茶ぶりで有名な男性社員で私は角田さんに同情した。
幸い私には急ぎの仕事はない。
手伝えるよとその書類の後半を引き受けることにして、英文を日本語に変えていくうちにじわじわと…どこからともなく不採用の実感がこみ上げてきてしまう。
ダメだ、集中しないと。私はリアルに首を横にふることでその邪念を払い続け、なんとか13時までに英訳を終わらせ、ランチに出ることにした。
会社のすぐそばにあるイタリアンカフェ。いつものランチプレートを頼んでから、報告をしないと…と重い気持ちで携帯を取り出す。
愛さん、雄大さん、大輝くんとのLINEグループ。そしてトモさんとスクールの先生。クレアには、明日直接伝えよう。
テストダメでした!でも挑戦できて良かったし、元々合格は難しいと言われていたからこの結果は想定内です…!と、極力明るい文章を打ち、応援への感謝を綴り、送信ボタンを押した瞬間。
― …え…?ダメだ。ちょっと待って、ダメ。
......
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この記事へのコメント
宝ちゃん残念だったし悔しいだろうけどその妬みとも思える感情をバネに次頑張りそうだし、バージョンUPした宝第ニ章も引き続きずっと読んでいたいと思ったのに、来週最終話なんて😭
雄大 x 愛さん
大輝 x 京子さん
みんなが皆ハッピーで終わりを迎えそうなのでよかった。 あー、この連載だけは終わって欲しくないけど。