『幸せになる、 小さなお店。』 Vol.4

驚きのカウンターとキッチンの距離。コンセプトはコミュニケーションバール

※こちらの店舗は、現在閉店しております。

写真左の門脇シェフを中心に店を守り立てるスタッフの面々

ビストロ・アバ

Bistro Abats

世界を巡り辿り着いた、想像力を盛り込む内臓料理。

北海道で生まれ育ち、18歳で料理の世界に飛び込んだひとりの青年。彼は3年間の修業の後、世界が見たいと、かねてからの目標であった単身陸路でのヨーロッパを目指す旅に出る。大連、チベット、インドと旅を重ね、1年半でアジア横断。数えきれない人に出会い、数えきれない郷土の味を食した。

当時を振り返り、「視野を広げたかった。食文化が知りたくて、市場を巡るのが楽しみだった」と、門脇憲シェフは照れ笑いする。その後、イタリアでの修業や中南米の旅も含め6年半を異国で過ごした青年は、敏腕の料理人として凱旋帰国。銀座のイタリア料理店でシェフを務めた後、昨年、本郷に『ビストロ・アバ』を誕生させた。

仏語で“内臓”を意味する店名は、長い旅路で彼が見出したひとつの答え。店では、世界中で味わった内臓料理やシャルキュトリーをビストロ料理にアレンジし、豪快かつシンプルに楽しませる。例えば、得意とする仔羊の腸詰は、肩肉に腎臓やレバーを加えつつ、アンチョビで風味をプラス。溢れ出る肉汁と食感が幾重にも広がり、“仔羊丸ごと”の旨みの連続に、ついついワインも進んでしまう。

ここには、漲る情熱で客を迎えるシェフと、世界を巡った経験が紡ぐ美食が待ち構えているのだ。

右.自家製シャルキュトリー盛合せ。プリフィクスコース¥3,200に+¥600で前菜を盛合せに。以下、料理はプリフィクスコースの一例 左.本日の内臓料理。今宵は約30㎝はあろう仔羊の腸詰

右.豪州産仔羊のロースト 上富良野 大田農園のラベンダーの香り 左上.店内はシェフがすべてのテーブルを確認できるよう設計した 左下.自然派ワインは納得の品揃え

金子崇裕氏と及川博登氏(右)

イル スカンピ

Gli Scampi

自らが信じる美味を、衒うことなく披露する。

店名に掲げたスカンピ(=赤座海老)が文字通りのスペシャリテ。3種のメニューが黒板に並ぶ。もうひとつの看板がヴェネツィアの郷土料理。魚介だけでなく野菜も特産のヴェニスらしく、イワシやイカのほか、耳慣れない野菜の名もメニューには掲げられている。

オーナーの及川博登氏は元々、設計事務所で働いていた人物。仕事で関わるうちに飲食店の愉しさに開眼。某バールのマネージャーを経て、9月にこの店を開いた。

「店のデザインも自分でした」。コンセプトはコミュニケーションバール。「いい意味でラフにしたかった」とのことだが驚くのはカウンターとキッチンの距離。その近さは「少しやり過ぎたかも」と自ら語るほどで、スツールに座れば、調理工程のすべてが見渡せてしまう。及川氏が腕と情熱を見込んだ若きシェフ、金子崇裕シェフも言う。「裸になった気分です」。

店と客とのコミュニケーションの中から感じて欲しかったのは、「理屈でなく美味しいから飲んで食べて」という想い。店名をシンプルにしたのも、10坪までの物件にしたのも、料理を観光地として名高いヴェネツィアに特化したのも、親近感を表現したかったから。

己の信じるものを伝える姿勢に好感が持てるのだ。

右.ズワイガニとラディッキオのサラダ¥880。クモガニなどを使うヴェネツィア郷土料理をズワイガニでアレンジ 左.魚介類のフリット盛り合わせ¥880

右.スカンピと自家製フェットチーネ¥1,480 左上.及川氏デザインの店内 左下.ワインもベネト州のみで揃えた。右からビゾル・ジェイオ・ブリュット¥5,200、テッラ・フラスカ・ビアンコ¥2,800、ロッソ・マシェリ¥4,500

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