アオハルなんて甘すぎる Vol.12

「チープな正義感は通用しない」28歳女が、友人のために経済界に顔が通じる大物を怒らせてしまい…

はい、すいません余計なこと言いました、宝ちゃんもなんかごめんね、と私にまで謝ってくれた大輝くんに、私は首を横にふる。衝動的に愛さんについていってしまった行動が、まさしく考えなしのバカだったと、何もできなかった今は思うから。

ただ、いつもに増してきつい雄大さんの言葉は正直怖い。苛立ちを隠そうともせず、眉間にしわを寄せたままで、雄大さんが私を見た。

「さっきも言ったけど、今日のことは愛も悪い。むしろ愛が一番悪い。ついて行くと言われた時に断らなかったのがアホ。宝ちゃんが自分を思ってくれてることに感動して、とか言うんだろうけど、あの元旦那に隙を与えるだけなのに」

雄大さんの説明によると、元旦那さんの名前は瀧川偉文(たけふみ)さんというらしい。代々、偉人の“偉”を男子にはつけるという家系で、愛さんの息子、タケルくんも“偉瑠”と書くのだと知った。

「愛、今日1日、全く抵抗しなかっただろ?あの元旦那に」


雄大さんに問われて、はいと頷く。普段の愛さんと様子が違って…と話すと、それが愛の作戦だったんだよ、と雄大さんが言った。

「今の愛にとって、唯一の希望は、タケルくんが愛と暮らしたいと言い続けてくれていること。もちろん、愛だってタケルくんと暮らしたい。でも現状ではそれは無理だ。

だからタケルくんが15歳になるのを待っていた。15歳になれば、どちらの親と暮らしたいかという子どもの意志が尊重される可能性が高くなるからね」

でもその願いがあの元旦那にバレるとまずいから、と雄大さんは言った。

「愛とタケルくんはその願いを、その時が来るまで隠しておく約束をしたんだ。だから愛はずっと我慢してきた。1ヶ月に1度の面会でも、その面会時間が元旦那の監視に置かれることがあっても、彼の要求を全て聞いて反論もしていない。

少しでも抵抗の気配を感じられたら叩き潰されるからね。でも裏では弁護士を立てて準備していたし、あと5年。あと5年を待っていた」
「…あ、雄大さんが紹介したあの弁護士さんか」

大輝くんの呟くような反応に、雄大さんがうなずく。2人のやりとりから大輝くんもその弁護士さんと面識があることがわかった。

「だからだよ、宝ちゃん」
「…?」

だから、の意味がわからず首を傾げた私に、雄大さんが溜息をついて続けた。

「彼の家系は古くからの大地主で、企業経営もやっているけど、おそらく違法な裏社会とのつながりも強い。経済界に顔が利くだけじゃなくて、代々続いてきた政界とのパイプもある。

親権争いの時に、白を黒に変えることができたのは弁護士の力だけじゃなくて、裁判官を含む司法界にも根回しした可能性があると言ってる人もいるしね」

まるで韓流ドラマのような話の流れに驚く私とは対照的に、この話を知っていたのか、大輝くんの表情は変わらない。

「…そんなこと、日本でもあるんですか、…本当に?」

信じられず思わず聞いた私に、雄大さんが言った。

「宝ちゃんが想像できなくても、あるよ。権力で塗りつぶされる真実とか、捻じ曲げられる正義とかね。実際に今、愛が対峙してる世界で、オレも何度も経験してる」

この記事へのコメント

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No Name
大輝、頼んだ!!
2024/04/20 05:3354
No Name
確かにこの話は財閥系の韓流ドラマ観てる感覚。本当に面白いし続きがとっても気になる。来週も楽しみ。
2024/04/20 05:3542
No Name
タケフミも、裏で色々悪い事やってそうだし反社との繋がり含めて色々と調べたら最後は何かで逮捕とかになりそうだね。Netflixの見過ぎかもしれないけど。
2024/04/20 05:5136
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