SPECIAL TALK Vol.114

~勝負の気持ちから感謝の気持ちに。青森の伝統を守り、盛り上げたい~


最高賞も獲得し、父からもライバル視


金丸:だけど、本来の修業期間からすると、まだまだ短いですよね。

北村:そうなんです。だけど、その翌年に今度は大型ねぶたの依頼が来たんです。

金丸:北村さんに対する期待がすごいです。

北村:依頼してきた会長さんに、父は「さすがに無理だ。あと3年の修業期間が欲しい」と返事したそうです。ところが、「だったらあと3年間、大型ねぶたを作りながら勉強すればいい」と。

金丸:素晴らしい考え方だ!

北村:それで、正式にねぶた師としてデビューすることになりました。

金丸:それが何年のことですか?

北村:2012年です。

金丸:じゃあ、正式なデビューからは、すでに10年以上経っているんですね。運行しているねぶたに「◯◯賞」とついていることがあるじゃないですか。

北村:毎年8月5日の夜に審査発表があって、6日にはそれをつけて運行します。

金丸:北村さんも、これまでいろいろな賞を受賞されているんですか?

北村:実はデビューの年にいただきました。

金丸:いきなり受賞!?

北村:といっても、最優秀とか、そういうものではないですが。

金丸:賞にはどんなものがあるんですか?

北村:ねぶた大賞、知事賞、市長賞、商工会議所会頭賞、観光コンベンション協会会長賞、それから制作者の部として、最優秀制作者賞、優秀制作者賞があります。デビューの年にいただいのは、優秀制作者賞です。

金丸:「伸びしろがある」と見抜いた方は、慧眼でしたね。

北村:いきなり賞を取ったこともあって、最初の2、3年は父が作っているんじゃないかとも言われましたけど。

金丸:そういうことを言う人には、言わせておけばいいんですよ。むしろ、それだけ北村さんの実力が評価されているということです。最高の栄誉は、やはり「ねぶた大賞」なんですか?

北村:そうですね。父は「田村麿賞」という名前だった時代から、通算12回も大賞を受賞しています。

金丸:さすが名人。ちなみに北村さんは?

北村:私は二度。2017年にねぶた大賞を。また2021年のコロナ渦、小規模での実施でしたが最高賞の金賞をいただきました。

金丸:すごい!その時、お父様は何かおっしゃいました?

北村:それが何も。ただ、そのあと、父は私をものすごくライバル視するようになりました(笑)。

金丸:悔しかったんだ(笑)。でもそうですよね。親子であり、師匠と弟子でもあるけれど、ねぶた師として、他のねぶた師には負けたくない。そういう気持ちがあるからこそ名人になれるんだろうし、長く創作を続けられるのだと思います。ところで、女性初のねぶた師として壁を感じるようなことはありましたか?

北村:むしろ、いろいろと注目していただく機会が多かったように思います。でも最初のうちは「女性ならではの」というフレーズが、あまり好きではありませんでした。

金丸:「女性ならではの気遣い」とか、「女性ならではの繊細さ」とかですか?

北村:まさに。私としては女だからどうこうではなく、純粋にねぶたに向き合って制作しているだけなので、何かしっくり来なくて。ただ、よくよく聞いてみると、みなさん褒めてくださっているだけなんですよ。だから、いまではすんなり受け入れられるようになりました。

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