三人の男たち~夫婦の問題~ Vol.2

広尾に住む、共働きエリート夫婦。新婚当初から寝室を別にしたけれど、ある問題が…

そもそも親というのは、どうしてあんなに身勝手なのか、と幸弘は思う。

幸弘の家は、祖父が政治家で、父親は官僚で事務次官を務めたこともある。現在は引退し、独立行政法人で理事を務めている。


幸弘は小さい頃から進学塾に通い、毎日のように「お父さんのようになりなさい」と言われて育った。

父親は仕事でほとんど家にいなかったし、母親は専業主婦だったが父のサポートで忙しくしていたため、幸弘には、両親と遊んだ記憶がない。

学校以外の時間を一緒に過ごすのは、家庭教師か塾の先生。

東京大学に進学した幸弘は、同じく官僚を目指せという父に背き、初めて自分の意思で進路を決めた。

― 父とは違う道を歩んでやる…。

だが、父は言った。

「弁護士になるなら、必ず大手事務所に入りなさい」

結局、父親が裏で口を聞き、幸弘の入所はデキレースとなっていた。

妻の琴子との結婚も、両親が決めたようなもの。

琴子の父親も官僚で、幸弘の父の部下だった。現在は琴子が勤める、通信会社の役員をしている。

学生時代、家族で外食に行くと、何度か“偶然”琴子の家族と出くわした。

琴子とは大学も同じだった。たまにキャンパスでもすれ違うこともあった。

「琴子ちゃんだ、可愛い」

周りが彼女をチヤホヤしたが、琴子は誰にも興味を示さない。そんな姿が、印象的だった。

弁護士になって数年が経った時、親に呼ばれた席で再会したのが琴子。

この時の幸弘には、結婚も恋愛もすべてが面倒だった。

それは、琴子も同じように見えた。仕事を持ち、幸弘に興味を示さない。

― どうせ親の決めた誰かと結婚させられるのなら、俺と同じくらい冷めている人がいい。

だから、幸弘は琴子との結婚を決めたのだ。

― これで親も大人しくなるだろう。

そう踏んでいた幸弘だっただが、今度は「孫はまだか」と遊びに来るようになったのだ。



深夜になり、仕事終わりにLINEを確認すると、琴子からメッセージが届いていた。

『今週やっぱり来るって。泊まっていくみたいだから、朝少しでも顔を見せてあげてね』

疲れた体がさらに重みを増したように感じる。

年を取り、時間ができたのか都合のいい時だけ押しかけてくる両親。

自分に直接LINEしてくれと毎回言っても、琴子なら断らないだろうと計算する狡さ。

幸弘は、小さく舌打ちをするのだった。

小野琴子(31) 大手通信会社勤務


午前7時05分。

琴子が朝の支度を整えていると、LINEが鳴った。

幸弘のお母さんからだ。

『今週末、遊びに行くね!!幸弘に、お土産何がいいかしら???そういえばこの間ね…』

彼女からは3日に1回、LINEや電話が来る。

厄介なのは、彼女に時間の感覚がないこと。

フルタイムで働く琴子には、緊急ではない場合、返せないこともしばしば。

けれど1時間でも返さないと、『どうしたの?体調大丈夫かしら?』などと、催促の“追いLINE”が届くのだ。

毎回長文と絵文字たっぷりで送ってくるので、正直胸焼けをおこしそうになる。

それでも、そんなことは言えるはずもなく、琴子はいつものように丁寧に返事した。

この記事へのコメント

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No Name
複雑な気持ちもあるだろうけど、もう少し親に感謝した方がいいと思った。「子供欲しいと思った事ない」って....一方的に言うだけでなく妻の意見を聞いたり話し合ったりしないのかな?幸弘の意見を通して子供は作らないという結論に達したなら両親にもそれ言わないとだし。なんだかイライラするなこの夫。
2024/04/12 05:2056
No Name
幸弘がいけ好かない男過ぎて、ストーリー内容がちんけに思えてしまう。
2024/04/12 05:1348返信4件
No Name
やっぱりお魚がいいって。あとね腰に枕を置くといいらしいわ♡
生々しいアドバイス! サチ子を思い出すわ。
2024/04/12 05:1541返信1件
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