麻布には麻布台ヒルズ。銀座には、GINZA SIX。六本木には、六本木ヒルズ…。
東京を彩る様々な街は、それぞれその街を象徴する場所がある。
洗練されたビルや流行の店、心癒やされる憩いの場から生み出される、街の魅力。
これは、そんな街に集う大人の男女のストーリー。
▶前回:妻子を大阪に残して、東京へ単身赴任中の39歳男。ある夜、紹介された年下美女と意気投合してしまい…
Vol.6 『女性の幸せ、自分の幸せ/六本木ヒルズ』紗耶(28歳)
「あれ、このメッセージ…?」
赤坂にある広告代理店で働く紗耶は、スマホを見ながら眉をひそめた。
ゴルフ練習仲間である会社の上司、前園からの妙なメッセージ。その意味を、すぐには読み取ることができなかったからだ。
『紗耶ちゃん、ごめん。やっぱり軽井沢には行けない。代わりに社内コンペを企画するから、よかったら参加してください』
― 今度ラウンドに行こう、って話してた件かな。軽井沢はNGだけど他の場所ならOKってこと?
『はい。コンペいいですね!楽しみです』
『そう言ってもらえてよかった。気を持たせていたらごめん』
― 気を持たせていたら…?え、もしかして。
前園の脳内では、「ふたりで」軽井沢に行くことになっていたのか。と、紗耶は気づく。
よくあることだ。この世代の男性は、若い女性とちょっと気が合ったと思うと、自分に気があると勘違いをする。
― 私が前園さんのことを持ち上げすぎたかな…。単に、気軽に練習して美味しいご飯に行けるゴルフ仲間が会社にいるのいいな、と思っただけなんだけど。
兄二人を持つ末っ子として生まれ、父の営む会社の社員たちに幼い頃から可愛がられて育ったせいか、目上の男性に気に入られる術を紗耶は心得ている。
そして、日常から無意識にそのように振る舞ってしまうことも、自覚していた。
「だって、しょうがないよね…」
この記事へのコメント
そんな男性ばかりではないし、お前が思わせぶりな態度だからだろ!バカヤローが。
社長やエンジェル投資家などのわかりやすい成功者に近寄り、起業の資金調達をしようとしてたのは紗耶。