アオハルなんて甘すぎる Vol.3

失恋した27歳女が港区に引っ越し。自分を変えるために決心した“10のチャレンジ”とは?

アパルトマンで待ち合わせていたはずの雄大と大輝とは、結局、レストランで落ち合うことになった。私は“パリの星付きレストランに行く格好”として、愛さんのバレンシアガのパンツスーツを借りた。

最初は、ワンピースを貸したい!と言われて、着せてもらったけれど、胸のサイズが全く合わず、ミントグリーンのシルクシフォンのブラウスに、パワーショルダーのパンツスーツ、となったのだ。

2人でUberを呼び、レストランに到着すると、フォーマルスーツの雄大さんと大輝くんが既にレストランの前に立っていた。

はじめましてならぬ、2度目まして、の対面なのに、まるでずっと前からの友人であるかのように、大輝くんが、宝ちゃんこれてよかったね、と笑ってくれて、すこし緊張感がほどけた。

雄大さんが愛さんを、大輝くんが私をエスコート…という組み合わせで店内に入る。どうぞ、と大輝くんが腕を差し出してくれたけど…男性にエスコートされる図、なんて、ドラマや映画でしか見たことがなく、これであっているのか…とドキドキしながら腕を置いた。

― こんなレストラン、初めて入る…。

3つ星をとる日も近いと評判の現在2つ星のフレンチレストラン。日本人シェフでありながら作るのは正統派のフランス料理で、フランス人にも評判が高いのだという。

3つ星をとるには、店の広さが足りない、ということで、昨年から少しずつ増築、改築を重ね、先月本格的にリニューアルオープンしたそうだ。


「雄大さん、本当に来てくれた!ありがとうございます!」
「伊東くん、改築、おめでとう」

挨拶に来たシェフと立ち上がって握手をした後、雄大さんは、愛さん、大輝くん、そして私を伊東シェフに紹介してくれた。

「こちら、佐々木宝さん。今日は、彼女の決意発表のお祝いも兼ねてるんだ」

― 決意発表?

雄大さんの言葉の意味がわからず、私はキョトンとしたけれど、シェフは、「お祝いなら僕も張りきらなきゃダメですね!まずはシャンパンお持ちしましょう」と笑顔で厨房に戻っていった。

「雄大、今のなに?」

私が質問するより先に、愛さんが雄大さんに聞いた。

「んー?愛が酔っ払って寝てる間の話。人生変えたくて、西麻布に引っ越してきた、っていうから、オレ、応援するって。10個、決まった?変えたいこと…というかやりたいこと?」
「あれ…本気だったんですか?」

本気だよ、というか、宝ちゃん忘れてたの?と雄大さんが笑っている間に、それぞれのグラスにシャンパンが注がれていく。

「それ、意地悪で言ってるんだったら、許さないからね、雄大」

サンテ!とフランス語で乾杯の音頭をとった大輝くんに、グラスを合わせながら、愛さんがそう言うと、意地悪なんかじゃないよ、といい、雄大さんは私を見た。

「人生変えたくて西麻布に来た。スタートとしてはいいよね。その証拠に、宝ちゃんは今ここにいる。1ヶ月前の自分なら想像もできないでしょ。俺たちと出会って、今フランスのレストランにいるなんて」

それは確かにそうだ。2ヶ月前、元カレの祥吾にふられて呆然としていた自分から比べると、人生がひっくり返った感じだ。

この記事へのコメント

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No Name
どんどん面白くなる、この連載!
2024/02/10 05:3141
No Name
愛の「感情論の暴力」を聞いてしまったんだね。登場人物のプライベートを徐々に明らかになってくる所も面白いし、宝がどう変わっていくのか含めて次週が楽しみ〜
2024/02/10 05:3435
No Name
この話と、今日から始まったもうひとつの話、関係があったのね。
最近の東カレにしてはずいぶん凝ってるというか、気合い入ってるね。しかも両方面白い!

良いねぇ🥺🥺
2024/02/10 06:5822
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