2024.02.10
アオハルなんて甘すぎる Vol.3部屋へ入った瞬間、思わず、声が漏れた。ワンルームの宝の部屋が3つくらいは入ってしまいそうな広いリビング。高い、高い、天井からつるされたお洒落なシャンデリアは、ムラーノかな、と愛さんが言っていた。
石膏で塗られた白い壁は、1800年代の建設当時の作りとデザインを受け継ぎながら、塗り替えられ続けているらしく、等間隔に花模様の彫りがほどこされている。
「うちの床もヘリンボーンにしたいんだよねぇ、でもこんな雰囲気の木材、日本ではなかなか見つからないのよ、とか、このソファ、Zanottaだ。テーブルはCARAVANEかな。私も欲しいんだけど…」という愛さんのを願望を聞きながらの解説で、家を彩る全てが上質なものだと知った。
ベッドルームは4つ。トイレとバスは2つずつ。ここが宝ちゃんの部屋ね、と愛さんが連れていってくれたのは、天窓から光が差し込む明るい部屋。テラスからは、暮れゆくパリの街並みと、遠くにエッフェル塔が見えた。
「愛さん、やっぱり宿泊費を…少しでも払わせてください。こんな素敵なところ…」
「今回の宿泊費は私が、ディナーを雄大におごることで話がついてる、って言ったでしょ?宝ちゃんが来ても来なくても、それは決まってたんだから。お金の話はもうなし!」
「…でも、私、自分だけだったら、きっとこんな所に泊まれることなんて、きっと一生…」
なかった、といいかけた私をさえぎるように、私じゃなくて雄大の友達の家だし、お礼なら雄大に言ってあげて、と愛さんは笑った。
「あと1時間くらいで雄大と大輝も戻ってくるみたいだから、それまで部屋でゆっくりしよう。眠そうだったし寝てもいいよ。起こすから!」
2人は昨日到着していて、今は買い物に出ているらしい。じゃあね、とドアを閉めた愛さんの足音が遠ざかるのを聞きながら、改めて、出会って間もない相手に、こんなにオープンで優しい大人がいることに、なんだか感動してしまう。
トランクから洋服を出し、クローゼットに掛けながら、出発前、西麻布での愛さんとの会話を思い出す。
「パリでの食事代と宿泊費は心配しなくていいよ。急に誘ったんだから、私と雄大で支払うし、そうさせてもらいたい。でも、これからずっと私たちが宝ちゃんにご馳走し続けるわけじゃないからね。奢られるばっかりじゃ対等な友達にはなれないから」
勿論です、払わせてください、と私が言うと、愛さんは微笑み、それともう一つ、と言った。
「これから一緒に遊びにいく時の、決まり事を作ろう」
「決まり事、ですか?」
「お金の無理はしないこと。正直…宝ちゃんと、私とか雄大とかは、お金の使い方が全く違うと思うし。あとお坊ちゃん育ちの大輝もね」
宝ちゃんにお金がない、とバカにしてるわけじゃなんだよ。でも、ね、と愛さんは続けた。
「大人の背伸びには、良い背伸びと悪い背伸びがある。悪い背伸び、っていうのは、見栄だよね。派手にお金を使う人達と遊ぶようになって、お金がない、ってことがカッコ悪く思えてきて、借金とかしちゃう子たちもいるの。そうなると、破滅の始まり」
「破滅…」
「飲み代とか食事代を付けにしたまま、夜逃げしちゃった人もいるし。だから宝ちゃんは、私たちが色々誘ったとしても、その金額は私にはキツイです、とかはっきり言ってOKだからね。宝ちゃんには、この街のヤなところ…闇に引きずり込まれてほしくないから」
実は友香からも同じようなことを言われていた。金銭感覚を狂わせないように、と。西麻布という街では、1日の食事で、すぐに1万、2万というお金が消えてしまう。でも借金だけは絶対しないように、と。
西麻布に住むのは次の更新までの2年の予定だ。その間に、コツコツと貯めてきた800万円の貯金から、人生を変えるための費用を捻出するつもりではいたし、パリへの航空券代も、そこから出した。ビジネスの愛さんと違い、もちろんエコノミーではあるけれど。
派手に遊んだことがない。羽目をはずしたこともない。そんな自分がイヤになったのだから、それ相応の金額が必要になることは覚悟していた。でも。
― 借金なんて考えたこともなかったけど、私も…考えるようになる、可能性もあるのかな。
「自分の稼ぎの何倍もの遊びやブランド品が癖になっちゃって、莫大な借金背負って闇に堕ちた女の子、たくさん見てきたからね」と愛さんは悲しそうに言ったのだ。
最近の東カレにしてはずいぶん凝ってるというか、気合い入ってるね。しかも両方面白い!
良いねぇ🥺🥺
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