
「性的な噂話」を流したのは他社の社員。それでもセクハラ認定される?
現代のビジネスシーンを生き抜く上で、ハラスメント対策は必須だ。
だが、暴力や暴言など明らかなブラックゾーンの案件は全体の1割で、9割は判断しづらいグレーゾーンといわれている。
では、その見極め方とは?
それらのジャッジを手助けするのが、通称ハラスメント探偵と呼ばれる藤川小五郎。
今回は、他社の社員の噂を流したことがセクハラとして訴えられた案件。
果たして、結末はいかに!?
※この物語は実話を元にしています。※人物名は仮名です。
監修/株式会社インプレッション・ラーニング
代表取締役 藤山 晴久
取材・文/風間文子
前回は:部下から♡の絵文字つきメッセージをもらい、その気になった上司が告白…それってセクハラ?
普段から噂話が大好きな人は要注意!
「〇〇ちゃん、また男を変えたらしいぞ」
「ほんと、男なしでは生きられないんでしょうね」
たまに飲み屋に行くと、同性同士の猥談の一環で、こうした話題を耳にすることは多い。
それで好奇心を満たし、ストレスを発散できるのであれば良いのだが…話す相手と場をわきまえる意識は常に持った方がいいかもしれない。
僕の名前は藤川小五郎、一介のハラスメント問題を専門に扱うコンサルタントだ。
今回事務所に相談にやって来たのは医療機器メーカーBでハラスメント相談窓口の担当をしている小御門綾(43歳)という女性だった。
「ハラスメント探偵さんの噂はかねがね耳にしておりまして、この度、弊社で起こっております事案について、ご相談させていただきたく参りました」
小御門女史とでも言おうか。背筋を伸ばしたまま、ゆっくりと頭を下げる彼女に僕はいつものペースを崩され、“探偵じゃない”と否定するタイミングを失ってしまった。
小御門女史の相談内容はこうだ。
「弊社で営業をしております女性にあらぬ噂が立ち、その内容というのがひどいものでして。『整形までして色気で仕事をとっている。しかも枕営業までやっているらしい』と。
これに本人はひどく傷つき、社外での人的信用を著しく傷つけられたとして、私どもにセクハラとして訴え出たという次第です」
相談者は田辺美由紀(29歳)といい、同社でもトップセールスの有能な社員だという。
問題はそこからだった。噂の発信源が製薬会社Aに勤務する青山翔太(26歳)と地域総合病院の内科部長・白石佳孝(60歳)であり、酒の席であるということ。
さらに事情を聞くと、田辺という女性自らが、噂を流布していたのが医師だと突き止め、その医師が誰から噂を聞いたのかも白状させていた。その際のやり取りも録音しているそうだ。
「本人の名誉のために言いますが、彼女は決して色気で仕事を取ってきているわけではないし、整形したという事実もありません。何より、枕営業だなんて失礼にも程があります!」
職場において「性的な噂の流布」はもちろんセクハラの対象となる。
ただ、今回のように噂話が交わされた場が会社外の飲食店であり、しかも噂を流布したのが取引先の医師と他社の社員の場合はどうなるのか――。…
またはアプリでコイン購入をすると読めます