豚肉ラヴァーが溺愛する、変化系豚料理 Vol.3

ロクロナン

LOCRONAN

料理人は基本に実直であれ。お客は食欲に忠実であれ

豚バラ肉のピペラード¥2,100。本日はハンガリー産を使用。トマトと卵が、脂の旨みを引き立てる

「こだわりは、無いんです」

そう、はにかむように笑う、石井啓資シェフ。産地や肉質等、素材を選ぶ条件聞くと、こう返ってきた。この言葉、思えば久しぶりに聞いた気がする。赤坂『オー・バカナル』を皮切りにフランス料理人修業に入り、渡仏した2年間を挟み、数店で腕を磨く。今年4月まで神田『ビストロ・マルサンヌ』でシェフを務めた後、7月、晴れて奥沢『ロクロナン』を独立開業した。

小体な店は、スタッフとふたりだけで切り盛りする。だが前菜11品、メイン7品、デザートは8品を用意。しかも丁寧な仕込みを必要とするものばかり。バスク、ボルドー、南仏、リヨン、サヴォワと地方ばかりを巡ったフランス時代に出合い、心惹かれた定番郷土料理が並ぶ。

豚バラ肉のピペラードはマリネしてカリッと焼いた豚バラ肉を、たまねぎやパプリカを加え、ピマン・デスプレットで風味付けしたシンプルなトマトソースの上に置き、揚げ卵を添えたひと品。バスクのウフ・ア・ラ・ピペラードはスクランブルエッグだが、この店の限られた条件では作り置きができない。苦肉の策の揚げ卵にナイフを入れると、とろり濃密な黄身がソースとなり、肉の脂を優しく包む。結果良ければ、全てよし、だ。豚肩ロースのグリエは、できるかぎり厚く切り出した肩ロースに、メース、コリアンダー、クミンなどをまぶしつけ、弱火でじっくりと焼く。落ちた脂が跳ね返り、それがまた香ばしく焼けた表面に風味をつける。

「表面がカリッとしていて、中はロゼ。ちゃんとジューシーで『肉を食べてる』実感がある。そんな料理が好きなんですよ」

地方の星付きレストランで学んだのは、古典的手法を崩さず調理し、少々の洗練を以って皿の上に軽やかさを出す料理。

「守りたいのは、それだけ」

肉は四ツ谷の大御所と同じ食肉業者から仕入れ、ピカルディ風フィセルに使う豚の燻製は、多摩川べりで自家製する。のんびり屋さんに見えて、しんどくても押さえ所は外さない。素直さが、ちゃんと味に染みている。

左.スタッフと2名で切り盛りするも、細かな作業まで手は抜かない

右.豚肩ロースのグリエ¥2,310。ポム・リヨネーズとベニエを添える。本日のベニエは何と、おかひじき

左.ブフ・ブルギニョン¥2,835。基本に忠実な皿のアクセントは、クレーム・ド・カシスのほのかな甘み

右.オープンキッチンのカウンターは5席。ひとりでふらりも、OK

左.シェフ・石井啓資氏。奥沢の学園通りが好きでぜひここで開業を、と物件を探したら、一軒目で出合ったという幸運の持ち主

右.サンセール・ル・トゥルヌブリッド¥5,985(左)、サヴィニ・レ・ボーヌ¥8,925(右)。肉に合わせた、シェフセレクトの2本


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