2023.07.28
下北沢には、店主の世界観を前面に出した、個性的な店が揃っている。
食の経験値の高い大人を満たす美味も多く、知れば必ず行きつけにしたくなるだろう。
日常使いにぴったりな“下北沢らしさ”あふれる人気店を、7軒ご紹介!
本格フレンチをカジュアルに提供するビストロは多いが、『lumielune』は名店譲りの美しい料理に加え、早くから自然派ワインに着目してきた実力店だ。
“月明かり”を意味する店名どおり、静かな場所にポツンと明かりが灯り、連日美食を愛する大人が集う。
『lumielune』がストックする自然派ワインは約3,000本。フランスに日本、イタリア、オーストラリアなど、各国の銘柄がそろう。
2014年の開業当初から集めるが、きっかけは「安くて美味しく可能性を感じたから」とオーナーソムリエの阿武亮介さん。
グラスでの提供にも積極的で、泡から食後酒まで常時15種ほどをリストアップ。
あらゆるタイプが楽しめると愛好家からの信頼も厚い。
日常使いのビストロで、心華やぐ見目麗しい料理と出合える至福
料理はあのミシェル・ブラスの薫陶を受けたシェフがレシピを考案しており、今は志を受け継ぐ吉田風雅さんが腕を振るっている。
ミシェル・ブラスといえば、食材ありきで直感的に皿を創造する現代フランス料理界きっての巨匠。
野菜を主役にした麗しきスペシャリテ〝30種の季節の温野菜〞のように、彼のエスプリを感じられるメニューも多く、そんな料理をアラカルトで楽しめるのが最大の魅力だ。
ヨーロッパの風情漂う店内で自然派ワインと味わえば、成熟したふたりでも満たされる。
■店舗概要
店名:lumielune
住所:世田谷区北沢3-18-5 伊東ビル 1F
TEL:03-3465-0573
営業時間:【火~金】18:00~(L.O.22:00)
【土・日・祝】15:00~(L.O.22:00)
定休日:月曜、不定休
席数:カウンター10席、テーブル16席
異国情緒あふれる外観に、自転車のフレームを飾った店内と、ハードだけですでに“下北”な雰囲気満点。
『サーモンアンドトラウト』は、提供する料理も合わせるお酒も、前衛的な街の象徴だ。体験すれば、自ずとセンスは磨かれる。
食材名のみが記された独創的な料理と、ツイストの効いた美酒が完璧にマッチ
いきなりスッポンというコース冒頭から想定外。
各皿に使われる食材もバナナ、米なす、スモモと聞いただけでは完成形が推し量れない料理の連続だ。
「黒胡麻 豆腐 大蒜 夏蜜柑 ヤングコーン ブルーベリー」×「リタ&ルドルフ・トロッセン ムッケロッホ・リースリング・プルス13」。
初夏のヤングコーンが主役。黒ごまを混ぜ、にんにくを忍ばせた木綿豆腐のペーストや、夏みかんのコンフィチュールと味わう。
ワインはドイツの無添加醸造。柑橘類を思わせる味わいがあり、コーンの甘みを引き立てる。
『サーモンアンドトラウト』のシェフ・中村拓登さんの創造力は、ますます旺盛になっている。
完成までの過程は「いろんなパターンが」と断りつつ、例えば「暑い時季なら東南アジアでバナナ。そこに辣油を合わせたら?」と、経験に裏付けられた閃きを連想ゲームのようにつないでひと皿を組み立てていく。
オーナーカヴィスト・柿崎至恩さんのペアリングも同様。
シェフの試作品を味わった後で「これまで飲んだお酒の記憶を頼りに、トライ&エラーを繰り返して1本を導き出します」。
ワインや日本酒はもちろん、時には蒸留酒などを用いて料理とのシナジーを追求。「とにかく味わっていただければ」と柿崎さん。
促されるまま試すと新しい発見が連続。ふたりで味わえば、その刺激は倍以上になる。
■店舗概要
店名:サーモンアンドトラウト
住所:世田谷区代沢4-42-7-101
TEL:080-4816-1831
営業時間:18:00~21:00
定休日:火曜、水曜
席数:カウンター6席、テーブル4席
下北沢では、生産者の志に触れられる自然派ワインが人気で提供する店も多いが、『abill』ほど初心者に優しいビストロはない。
合わせる料理はジャンルを問わず自由闊達。理屈ではなく、本能で味わう楽しさを提案している。
「この子は貴婦人のようで、すごく真面目」と1本のボトルを紹介する女将の後藤麻里奈さん。
『abill』は夫婦が営むビストロで、自然派ワインを多くラインナップ。理由は「ワインが苦手だった私でも美味しく飲めたから」。
以来、夫でシェフの後藤宏尚さんと試飲を重ね、国や知名度にとらわれず、ただ美味しいと思う銘柄だけを集めるように。
「私はソムリエじゃないので」と、等身大で説明する姿に親近感を覚える。
ワインから着想を得て作る、世界各国の美味に酔う幸せたるや
パエリアから冷奴までそろう料理は、今はなき四谷三丁目のスペイン料理店『ラ・タペリア』を筆頭に、表参道のフレンチカフェ『アニヴェルセル』など、さまざまなジャンルの人気店で腕を磨いた宏尚さんの力量があってこそ。
その上で、このワインはどんな料理が合うかふたりで意見を出し合い、種類があり過ぎて楽しくなるメニューは完成した。試せば、その相性に納得。
オレンジワインとも相性抜群の「アビルのミックスパエリア」3,300円。
『ラ・タペリア』の店主・カルロスさんのレシピを踏襲。
すっきりとした白には「オニオングラタンスープ」900円。
華やかなピノノワールから着想した「青ネギ、高菜、ごま油風味の冷奴」700円。
香り豊かな赤に合う「イカ墨と白ヒラタケのパスタ カツオ出汁風味」1,500円。
何より、ふたりが醸し出す空気感が心地よく、日常のデートで通いたくなる。
■店舗概要
店名:abill
住所:世田谷区北沢3-30-3 1F
TEL:03-6416-8858
営業時間:18:00~(L.O.23:00)
定休日:水曜
席数:カウンター7席、テーブル12席
『EUREKA』はフランスのビストロ文化に感銘を受けた店主が現地そのままを志して作り込んでいる。
内装やインテリア、BGMなど、細部に至るまで徹底したこだわりが実に“下北”らしい一軒だ。
「現地の空気感を味わえるお店が目標でした」と店主の渡部 巧さん。
欧州留学を経験後、都内のフレンチカフェに勤めたことをきっかけに、フランス文化にハマっていった。その後、再度渡欧してパリでの生活を経験。帰国してすぐに『EUREKA』を開く。
調度品の雑貨や大きな鏡が飾られ、タイルの床にハイスツールのカウンターという店内。
BGMはフランス語の有線放送を流すなど、現地で体験した雰囲気を徹底的に再現した。
料理も徹頭徹尾クラシックに!
料理も直球勝負。
「現地の楽しさを再現したい」と異口同音で語るシェフの水野健治さんが腕を振るう。
仔羊のローストならまずボリュームで同様の迫力を追求。
日本ではあまりなじみのない、酸味の効いた仕上がりのソースには、アンチョビとバジルなどが掛け合わされ、ワインが進む本場仕様だ。
ビストロ定番の前菜がそろう「田舎風パテ、レバーペースト、イワシのリエット、鶏肉のテリーヌの盛り合わせ」2,400円。
流れる時間をふたりで楽しめば、気分は自然と高揚してこの店の虜に。
本物には問答無用で大人を引きつける求心力があるのだ。
■店舗概要
店名:EUREKA
住所:世田谷区北沢2-28-7 エルフェアシティⅡ 102A
TEL:03-5453-3039
営業時間:【月・火・金・土】ランチ 12:00~(L.O.14:00)
ディナー 18:00~(L.O.21:30)
【日・祝】ランチ 12:00~(L.O.14:00)
ディナー 18:00~(L.O.21:00)
定休日:水曜、木曜
席数:カウンター4席、テーブル24席
古き良き酒場が残る“一番街”に店を構えて8年。
自他ともに認める「モツの質と量はこの界隈で一番」の人気店は、そのカジュアルな価格帯で地元民に愛されるのはもちろん、ボクサーから芸能人まで多彩な顔ぶれが連夜訪れるという。
一見コワモテだが、笑顔に人柄がにじむ店主・長光大輔さんは、モツと並ぶ店の顔。
高校時代にボクシングで九州王者になった異色の経歴を持ち、その人懐っこい性格に惚れ込んで通う常連客も多い。
元ボクサー、現在、旨いモツ料理店店主……この経歴にカルチャーを感じる
男気あふれる性分ゆえ「この街に集まる夢を追う人たちを応援したい」と、串は1本198円〜と低価格を貫く。
新鮮でプリプリのモツをひと口食べれば、それがいかに破格の価格設定か分かるはずだ。
酒場らしく、モツ以外に煮物や揚げ物の一品料理も充実。
馬肉の「レバ刺し」2,090円。
滑らかでねっとりした濃厚な味わいが酒を進ませる。
だが年間を通じて注文すべきは、名物のモツ鍋だ。
スープは6種類とレパートリーも豊富だが、初訪問ならば2年間の試行錯誤の末に完成したという「極みの味噌鍋」を。
豆乳のまろやかさと味噌のコク、にんにくのパンチが完璧なバランスのスープは、飲み干したくなること必至。
夏でも汗をかきながら、モツの脂をサッパリとさせるホッピー片手に味わえば、気取らないデートも必ず盛り上がる。
■店舗概要
店名:もつや長光
住所:世田谷区北沢2-33-11 K&F下北沢ビル 1F
TEL:03-6804-8194
営業時間:17:00~24:00
定休日:不定休
席数:カウンター8席、テーブル20席
静かな住宅街に忽然と現れる、昭和の木造住宅を改装したシャビーな佇まい。
しかしガラリと戸を開けると、多くの女性客が楽しそうに飲んでいる意外な光景を目にする。
その秘密は、野菜にこだわるヘルシーな料理にあった。
自家農園の朝採れ野菜を中心に、旬の野菜の美味しい食べ方を追求。
水なすはハチミツを添えてフルーティさを生かし、旨みが蓄えられた極太のズッキーニは、炭火焼きでシンプルに素材の旨みを引き出す。
その他、とうもろこしのかき揚げや肉味噌ピーマンなんかも外せない。
この野菜の旨みを引き出す調理法が秀逸で、野菜だけでもお酒がスイスイ進んでしまうのだ。
もちろん、荒木町にある人気焼き鳥店〝どろまみれ〞の姉妹店ゆえ、焼き鳥のレベルの高さは保証付き。
下北沢の喧騒から離れた立地と郷愁を誘う雰囲気。
心地良さとヘルシーな野菜料理が彼女の笑顔を自然と引き出し、ふたりの温かな夜を盛り上げる。
■店舗概要
店名:焼鳥小屋どろまみれ 笹塚店
住所:世田谷区北沢5-34-11
TEL:03-6407-9947
営業時間:【水~金】18:00~(L.O.22:00)
【土・日・祝】17:00~(L.O.22:00)
定休日:月曜、火曜
席数:テーブル24席、カウンター5席
池ノ上駅からすぐの線路に隣接する裏道に漂うのは、台湾にエスケープしたようなディープな風情。
電球に囲まれた黄色い看板に、赤い中国提灯が妖艶に灯る“光春”を、台湾南部・屏東県生まれの先代が創業したのは、1977年のことだ。
台湾南部の料理をベースに、巧みなアレンジを加えたレシピに魅了され、味に厳しいレジェンド的シェフたちも足しげく通う店として知られている。
現在厨房に立つのは、二代目である菅生勇志さん。
年に何度かは台南を訪れ、現地の料理店に教えを請うことで、父から受け継いだ台南式の味に磨きをかけている。
他店とはひと味もふた味も違う、台南料理の魅力に開眼する
例えば、台湾のソウルフードとして定番の魯肉飯は、角切り肉の上にカジキマグロのでんぶをトッピング。
現地で菅生さんが感動した味を再現すべく、台南・東港の工場に自ら出向いて交渉したというこだわりようだ。
「ソフトシェルクラブの塩卵ソース炒め」2,090円。
三種の揚げ粉を纏った脱皮ガニ、アヒル塩卵の黄身、エビ味噌の金沙(きんさ)ソースが三位一体に。
「コブクロ」990円。数種類ブレンドした豆板醤が味の決め手。
台南の特産品を使った「水蓮菜の破布子炒め」1,540円。
小梅のような破布子(ポーチー)と新生姜がアクセントに。
そんな料理を大切な人とシェアすれば、まるで台南小旅行に来た気分に。
ふたりを非日常的な夜へと誘うのだ。
■店舗概要
店名:台湾料理 光春
住所:世田谷区代沢2-45-9 飛田ビル 1F
TEL:03-3465-0749
営業時間:【月・水~金】17:00~(L.O.22:30)
【土・日】ランチ 11:30~(L.O.14:00)
ディナー 17:00~(L.O.22:30)
定休日:火曜
席数:カウンター7席、テーブル10席、座敷14席
今月の『東京カレンダー』は「下北沢という刺激」特集。初めて特集する「下北沢」で大人が楽しめる店だけを厳選してピックアップ。
普段行き慣れないエリアを攻略してこそ、東京の大人だと改めて実感した。「下北沢」は若者だけに遊ばせておくのはもったいない!
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※東京カレンダーは毎月21日頃の発売です。今号は7/21(金)から。
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