2011.08.22
ハレの日に行きたい もてなしの牛肉料理 Vol.2“超熟成黒毛和牛鉄板焼”との看板に偽りはなし
脇役を主役に昇華
熟成の力で、新たなステージ
※こちらの店舗は、現在閉店しております。
「熟成肉、何ものぞ」
リーガロイヤルホテル東京・鉄板焼シェフ時代、宮地康夫氏は日本各地の銘柄牛を訪ね歩いた。ここ数年、話題の熟成肉を使うレストランにも、無論足を運ぶ。だがそれらは硬く、旨みが充実していない。
「その程度のものなのか……」
失望はある食肉業者から入手した熟成牛もも肉で一転する。柔らかくコクがあり、何よりステーキになりえないはずの部位が、主役に化けるだけの力量を備えていた。だがホテルでは専用熟成庫を必要とする熟成肉は取り扱えない。震災で店は一時クローズ、自らの来し方行く末も去来した。思えば節目の50歳。銀座『鉄板焼 宮地』開業を決める。人生を動かす素材に出合い、わずか数カ月後のことだった。
『宮地』で使用する肉は鹿児島・北薩摩牛と島根・松永牛。一頭買いし、部位に合わせ最低40~50日、ドライエイジング(乾燥熟成)させる。“超熟成黒毛和牛鉄板焼”との看板に偽りはない。
熟成肉は通常より脂が甘く、融点が低い。常温に置くとみるみるキラキラと脂が湧き出すように溶ける。常温に置き、焼き、休ませる時間は、部位と状態により全て異なる。的確な作業で肉最大限の能力を引き出す技量は、ベテランならでは。焼き上がった肉を切り分け、時間差で提供し、味のふくらみの違いをも、お客に伝える。芸は細かい。
「元気を失いつつある食肉業界を盛り上げたい」。遅咲きの大輪は、牛もも肉か、料理人か。
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