ハワイに憧れて Vol.9

離婚して10年経っても、元妻に会い続ける男。不審に思った現妻が、夫を問いただすと…

透き通る海と、どこまでも続く青い空。

ゴルフやショッピング、マリンスポーツなど、様々な魅力が詰まったハワイ。

2022年に行われたある調査では、コロナ禍が明けたら行きたい地域No.1に選ばれるほど、その人気は健在だ。

東京の喧騒を離れ、ハワイに住んでみたい…。

そんな野望を実際にかなえ、ハワイに3ヶ月間滞在することになったある幸せな家族。

彼らを待ち受けていた、楽園だけじゃないハワイのリアルとは…?

◆これまでのあらすじ

由依(35)と夫の圭介(38)、愛香(10)と春斗(6)は、アラモアナの高級マンションで3ヶ月間の短期移住をすることに。ある夜、由依は圭介が、女性と2人きりで会っているのを目撃する。そんな時、元彼と偶然再会して慰められるが…。

▶前回:夫の鞄に“GPS付きイヤホン”を忍び込ませた女。21時過ぎ、彼が向かった先は…


Vol.9 姿の見えない元妻の影


「ただいまー」

由依が散歩から家に戻ると、いつも賑やかな家の中はしんと静まり返り、誰もいなかった。

『子どもたちとプールに行ったあと、ショッピングセンターに行ってくるね』と、日菜子から連絡が来ていたのを、由依は思い出した。

由依たちは9月終わりに帰国を予定している。

そのため、2学期の授業に遅れないようにと、日菜子は、勉強を教えてくれたり、時々、海や公園などにも連れて行ってくれたりしているのだ。

― でも、圭介は、どこに行ったんだろう…?

由依は圭介と2人になるのが気まずかったので、内心ホッとする。

歩いたせいで火照った体を鎮めようと、冷蔵庫に入っていた冷たいペットボトルの水で喉を潤わすと、玄関のドアが開く音がした。

「ただいまー…」
「圭介?おかえり…」

どことなく気まずい空気が漂う。

「由依帰ってたんだな。どこに行ってたの?」
「気分転換したくて、海まで散歩に行ってた。圭介は?」
「あー、俺も、走りに行ってた」

すると圭介は、由依の持っていたペットボトルを奪うようにして手に取り、喉へと勢いよく流し込んだ。

驚く由依の方を見もせず、言った。

「…だれ?あの男」
「あの男…?」

由依は何の話かと戸惑う。すると圭介は不敵に笑った。

「さっき、会ってたでしょ?親しそうに」

そこで、圭介が言っていることの意味がわかった。

「あぁ、中学の同級生。この間偶然会ったのよ。こっちに住んでるって知らなくて。今日もたまたま会ったのよ…」

「ふーん、そう」

納得していないような表情に、由依は思わずイラッとする。

この記事へのコメント

Pencilコメントする
No Name
ハワイの高級コンドミニアムでしょう、ドアの覗き穴から直子の顔が見えた? 鍵も無いのに部外者がセキュリティを突破してエレベーターを押して部屋まで来るなんて考えられないけど😆 
2023/05/14 05:2584
No Name
この話に出てくる人達誰にも共感出来ないけれど、1歳にも満たない娘と離婚届を置き去りにして蒸発した母親でしょう? 今更ハワイにまでのこのこ現れて子供に近付いて何なの? 会ってる夫も意味不明だし、子供を捨てた親に娘を返す必要もないし。由依しっかりしてと思う。
2023/05/14 05:4662
No Name
ようやく本丸が登場、長かった。
2023/05/14 05:2144
もっと見る ( 12 件 )

【ハワイに憧れて】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo