SPECIAL TALK Vol.94

~いいか悪いかは、実験してみないと分からない。好奇心とデータを武器に未来のかたちを探る~

金丸恭文氏 フューチャー株式会社 代表取締役会長兼社長

大阪府生まれ、鹿児島県育ち。1989年起業、代表取締役就任。


いい意味で飽きっぽい。好奇心が新たな一歩を促す


金丸:私も日本の強みは、文化そのものだと思います。だからずっと「日本文化をまるごと輸出すべきだ」と言い続けていて。

成田:日本というドメスティックな環境から生まれたものが、海外で受け入れられている状況って、面白いですよね。

金丸:海外には京都が大好きで、日本人よりもはるかに京都の寺社仏閣に詳しい方がたくさんいます。以前、ヨーロッパを訪ねたとき、和服を着たスイス人に流暢な日本語で話しかけられましたが、漫画の『ONE PIECE』がきっかけで日本に行きたくなり、YouTubeやインターネットで日本語を勉強したと言ってました。日本人自身がもっと自分たちの文化を勉強して大事にしないといけないし、日本文化を維持、発展させていかないといけません。

成田:京都ブランドや日本のゲームは、世界中にファンがいますからね。ただ、学問もそうですが、何にでも中途半端に国際競争力を持たせようとすると、本来の価値が破壊されるだけだと感じます。

金丸:同感です。かつて日本の製造業に競争力があったのは、職人の技術が生きていたからです。しかし、それを全部工業製品化してしまったために、希少価値を失って価格競争に陥り、ものづくりが衰退していった。

成田:僕は今、ECサイトやIT企業だけではなく、日本の伝統産業やアナログ産業の再興にも目を向けています。ITの発達によってデータやアルゴリズムの恩恵を受けていたのは、これまでは一部の産業に過ぎません。それらの恩恵はもっと広く社会に還流されるべきです。これまでも公共政策に関する仕事を自治体や行政と一緒にしてきましたが、企業や公的機関を巻き込みながら、社会課題・政策課題の解決に貢献していきたいと思っています。

金丸:それは今後が楽しみですね。ところで、成田さんが社会的な問題に気づいたとき、解決に向けて取り組もうとするモチベーションって、どこから湧いてくるのですか?

成田:いろいろ手を出しているのは、僕が飽きっぽくて、好奇心があるからでしょうね。正義感とか規範意識ではなく、「いいか悪いかは、実験してみないと分からない」というのが根底にあります。だから僕が変なことを言っているとき、自分でも正しいかどうか正直分からないまま発言していることもよくある。ただし、他の人が言ってないような切り口で表現すれば、これまでと違う視点で物事が見えるかもしれないと、いつも考えています。

金丸:ちなみに、そんな成田さんから見て、下の世代の日本の若者はどう見えますか?

成田:びっくりするくらい、異常に保守的な“優等生”が多いですね。むしろ上の世代の人たちのほうが元気で。

金丸:やっぱり成田さんもそう感じますか。私は若者がマイルドな意見しか言わない社会に危機感を覚えます。「だから日本はダメなんだ」という自虐的な声をよく聞きますが、だったら、ダメな部分を変えて、良くしていけばいい。そのためには若者の力が不可欠です。いつだってイノベーションを起こす主役は、若者ですから。ビル・ゲイツがマイクロソフトを創業したのも、19歳のときでした。

成田:世界中で注目されているイーサリアム(ブロックチェーンのプラットフォーム)を考案したのも、19歳の学生でしたね。

金丸:最後に成田さんからこれからを担う若者へ、ひと言メッセージをいただけますか?

成田:メッセージ……。そうですね。こんな対談を読んで、金丸さんや僕の話をうやうやしく拝聴してちゃいけないよ、と。

金丸:おっしゃる通りです(笑)。これからの成田さんの活躍に加え、今の言葉に発破をかけられた若者の登場にも期待したいです。今日はお忙しいところ、本当にありがとうございました。

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