～いいか悪いかは、実験してみないと分からない。好奇心とデータを武器に未来のかたちを探る～(3/5)[東京カレンダー

厳しい家庭環境、父の失踪。過酷な学生生活を過ごす

金丸：ところで、子どもの頃について聞かせてください。お生まれはどちらですか？

成田：東京都北区です。

金丸：成田さんはどんなお子さんだったんですか？

成田：普通だったと思います。ただ、家がカオスで。

金丸：お父様が失踪されたというのは聞いています。

成田：父は変わった人でした。失踪したのは僕が高校を卒業する頃ですが、小学校に上がる前まで父はあまり仕事をせず、昼間もずっと家にいたのを覚えています。とにかく賭け麻雀が好きで。

金丸：麻雀で生計を立てていたんですか？

成田：逆ですよ。麻雀で借金を作って帰ってくるんです。すると母が絶叫して、泣きわめいて。小さい頃は、両親、僕、弟の4人家族で、掘っ立て小屋みたいなワンルームのアパートに住んで、生活がぐちゃぐちゃだったという記憶しかありません。

金丸：なかなか厳しい環境ですね。

成田：ただ、僕が小学生になったあたりで、父がなぜか社会復帰して、サラリーマンとして働き始めたんですよ。少しまともになって安定したように見えたけど、実はそうじゃなかった。だから、後で爆発して失踪に至るのですが。

金丸：勤め人が無理なら、何か自分で事業をやるという選択肢もあったはずですが。

成田：それは無理でしょうね。父は思想家というか、哲学者みたいなところがあって、人と違う考え方、感性の持ち主でしたが、昼間でも寝ていましたから。

金丸：でも、成田さんはそんな厳しい家庭環境から、東京大学に行かれたんですよね。

成田：勉強は、子どもの頃からたまたまできたんです。

金丸：たまたまで東大に行けるものですか？

成田：子どもの頃に足が速い人だって、たまたま足が速く生まれたわけですよ。それと同じだと思います。勉強に関しては、努力したり競争したりしたという感覚はありません。中学から中高一貫の麻布学園に通いましたが、受験のために塾に通うということもなく。

金丸：麻布学園を選ばれたのは、何か理由があるんですか？

成田：「制服がない」という話は事前に聞いていたような気がします。

金丸：麻布学園は自由度が高いんですよね。

成田：結果として、その選択は正解でした。僕も父と同じで、朝起きられないんですよ。でも麻布の先生って、「学校に来い」とは言わない。学校に行かずにどこかでふらふらしていても、それはそれでいいという感じで。

金丸：そんな中、高校卒業前にお父様が失踪されたんですよね。

成田：弟はまだ中学生だったから、僕よりダメージが大きかったと思います。

金丸：その後、お父様とは再会することはできたんですか？

成田：いえ、まったく。いなくなって20年近く経ちますが、どこにいるのやら。

金丸：実は私も一時期、失踪したくなった時期があります。起業した後、会社の資金繰りのことばかり考えるのが嫌でしかたなくて。いつも鞄にパスポートを忍ばせていました。

成田：うちの父ならともかく、金丸さんほどの立場の人が失踪したら大変じゃないですか。

金丸：「1週間くらいいなくなって戻ってきたら、社員がもうちょっと優しくしてくれたり、リスペクトしてくれたりするんじゃないか」って（笑）。結局、思っただけで実行しませんでしたけど。