裕也とは、友人が誘ってくれた食事会で出会った。
私より2つ上の29歳で、外資系証券会社勤務。ドラマにもよく出ている、王子様キャラのジャニーズタレントによく似た甘いマスクで、一目見て相当モテるだろうと思った。
そして、そんな彼が、ほかの女性ではなく私を気に入ってくれたことに驚いた。
「寧々さん、お酒苦手ですか?実は、僕も」
「そうなんです。すぐ酔っちゃうし、顔も赤くなっちゃうんですよ」
「あ、僕もそれ一緒です!」
2人ともお酒が得意ではないとわかると、食べ物の好みの話題で盛り上がり、その場でLINEを交換。
翌日、裕也から“今度食事に行きましょう”とメッセージがきたのを皮切りに、2日に1回のペースでやり取りが始まったのだった。
「このレストラン、来てみたかったんです!嬉しいっ」
「よかった、ここ寧々ちゃんも好きだろうなと思ったんだ!」
2人きりでディナーをしたのは、出会ってから2週間後。
場所は、東京駅近くにあるホテル内のフレンチレストラン。食事のペースを合わせてくれるうえに、会話も盛り上げてくれる裕也のおかげで、心地がいいと思える2時間だった。
「寧々ちゃんって、映画も好きなんだよね?今度の休み、一緒に見に行かない?」
次の誘いも、もちろん彼から。こうして、他愛ない連絡を重ねたり、定期的にデートをしたりしてきた。まさに「付き合う前のいい感じ」といったところだ。
ところが、私がこんなふうに浮かれていられたのは、4ヶ月目くらいまでがいいところだった。
― あれ、そういえば、もう4日も裕也くんからLINEがきてない…。
これまでも、基本的には私が送ったLINEでやり取りは終わっていた。けれど、次の約束が決まっていることが多かったから、不安にはならなかった。
ただ、その間隔が徐々に開いてくると、イヤでも“既読スルー”という言葉がチラつきはじめる。
私たちは、出会ってから結構な時間を一緒に過ごしてきた。デートだって何度もしてきた。
― なのに、関係が進まないのはなんで?
焦った結果、既読スルーされた後に追いLINEをすることも増えた。
裕也から返事をもらえるように、彼が好きなスポーツやレストランをネタに試行錯誤の末、LINEをしてみたこともある。
しかし、それも長くは続かず、スタンプのみの返事も増えてきた。このあいだ映画の話題を振ったときなんかは、完全にスルーだった。
― どうにかして、距離を縮めなくちゃ!取りあえず、なにかLINEを…ゴホゴホッ。んんっ…。
突然、悪寒がして、体温計で熱を測ると38.2度もあった。
さらに、咳まで出てくる。
この日は、幸いにも土曜日。私は、震える体でベッドに横になることにした。
目が覚めたのは、16時。
寝る前よりも頭が痛くて、寒気もひどい。体は思うように動かない。そこで、助けを求めたのは、裕也だった。
寧々:裕也くん、熱が出ちゃった…。ベッドから動けなくてツラいよ。
すると、15分後。
裕也から返事が送られてきて、私は期待しながらそれを開いた。
この記事へのコメント
しかも、追いLINEしていいことないよね、うざーと思われるだけなのに。