こんな僕のファム・ファタル Vol.4

“会社社長”を切り札にこぎつけた憧れの美女とのデート。男が屈辱を受けた予想外の出来事とは

ほどなくして、久保からおススメの店のリストがLINEで送られてきた。

「ん…『サルヴァトーレ クオモ ブロス』って、聞いたことがあるな」

リンク先を見ると、愛宕グリーンヒルズにあるレストランだった。マイがよく行くと名前を挙げていた場所だということを思い出す。

― げっ。アイツと鉢合わせするじゃないか…。

「…でも、まてよ」

候補から外そうとしたが、不思議とそれもいいかと思いとどまる。

立石の大衆酒場に自分を連れていった男が、数日後には誰もが振り返る美女とスタイリッシュなレストランでデートしている…。彼女はどんな気持ちになるだろうか。

必ず来るという保証はないが、そんなハプニングもいいだろう。

明人はその店にすることを決めたのだった。


「…では、奇跡の再会に乾杯」

「ふふふ。なんか照れちゃいますね」

東京タワーを間近に堪能できる絶景の席。明人は恭香とまずはシャンパンで乾杯した。

明人は社長就任祝いにあつらえたフルオーダースーツを身に纏い、この日に臨む。

一方、恭香は仕事帰りということもあり、パンツスタイルにフラットシューズという装いであったが、彼女から自然とにじみ出ているエレガントな美しさは若干のカジュアルさを十分カバーしている。

出会った頃は女子大生だった彼女。現在は30を越えているだろうが、それでもなお肌艶はよく、華やかさは変わらない。

― 彼女と今、こうして2人きりで食事ができているなんて…。

改めて、自分は勝ち組になったのだと実感する。

「夢みたいだな。初めて会ったときは僕なんかなしのつぶてだったのに」

「そうだったかしら…。10年以上前だし、全然覚えていなくて」

「はは。当時の僕は金もなくて、いわばフリーターだったからしょうがない」

ポロリと本音と自虐が出てしまう。彼女が返答に困る姿を見て、明人は我に返る。昔の自分と今の自分は違うのだ。

明人は、自分が今では社長であることを改めて主張し、芝浦の高層マンションでひとり暮らしをしていることや、何回か訪れた星付きの名店の話題など、華やかな会話で彼女を楽しませる。

「へぇ…社長さんって、すごい生活をされているんですね」

「そんなことないさ。経営者なんて、そこらへんにゴロゴロいるし」

美女の羨望のまなざし。それは明人にとって社長就任の最上のご褒美だった。

「あれ…アキヒトさん?」

恍惚の中、背後からどこかで聞いたことのある声が聞こえる。

デートの高揚感から、明人はこの店を選んだ理由をすっかり忘れていた。

この記事へのコメント

Pencilコメントする
No Name
身長180センチ越えのイケメン2人、ジェームズと蓮なら良かった。
明人、性格悪過ぎるから成敗されて欲しい〜😆
2022/05/11 05:2899+返信6件
No Name
明人、この前はマイの事パートかアルバイト程度だろうとか言ってたのに、ほら女性経営者だったじゃない! しかも東大卒! 
面白いなぁこの連載。
2022/05/11 05:2499+返信8件
No Name
明人もお子ちゃまだよね。恭香に、自分は今社長でどうのこうの…芝浦のタワマン暮らしで…今まで訪れたミシュラン星付きレストラン自慢など。
恭香は相当退屈だったから、マイ達の同席を快諾したんだね。
2022/05/11 05:4892返信4件
No Name
マイが東大卒の起業家で明人より高スペックって明人ざまあ。しかもwithBには叩き上げ社長が興味深かったとか明人惨めじゃないの。
て言うか仕事放置してデート決めて一緒に来た恭香放置して何やってるの。
2022/05/11 05:3151
No Name
この連載、わりと表現も面白いしキャラクターもしっかりしてて好きかもしれない笑
2022/05/11 06:2539
もっと見る ( 67 件 )

【こんな僕のファム・ファタル】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo