柳 忠之のこの12本におまかせ Vol.17

お家デートで華やかなワインを楽しむならこの一本。豪快な肉料理と好相性!

“おこもり”が日常になり、お家デートで贅沢ディナーを楽しむ機会も増えたのでは?

本日ご紹介するワインは、そんな食事を盛り上げてくれる極上の一本。

果実味たっぷりのジューシーな味わいとスパイシーな香りがあり、肉料理との相性が抜群なのだ。

左:東京カレンダー編集部 嵩倉伶奈/右:ワインジャーナリスト 柳 忠之氏


専門誌からライフスタイル誌まで幅広い分野の雑誌で執筆を手掛け、切れ味あるコメントに定評があるワインジャーナリスト・柳 忠之氏。

柳氏が東京カレンダーでワイン連載の担当となって4年目。ワインの勉強に日々奔走する編集・嵩倉の質問に、いつも親身になって答えてくれる。

長野のシラーに顕著なコショウ香の特徴


柳「へ、へ、へっくしゅん。」

――柳さん、花粉ですか?

柳「ち〜ん(鼻をかみながら)。ああ、クラリン(編集担当の嵩倉)。いや、違う、違う。今、ラーメンにコショウをかけようとしたら、鼻に入っちゃって。」

――そんな派手にくしゃみすると、壺の中からハクション大魔王が出てきちゃいますよ。

柳「出てきてほしいね。そして願いを叶えてほしい。」

――柳さんの願いって?

柳「世界平和。」

――また、たいそうな願いですこと。

柳「ところでクラリン、ここでクイズです。日本ワインの生産量1位はもちろん山梨県ですが、第2位はどこでしょう?」

――う〜ん、北海道?

柳「ブブーッ。正解は長野県。もともと県央の塩尻市周辺では甘味ブドウ酒用の原料として、コンコードやナイアガラなど寒さや病気に強い北米原産のブドウ品種が盛んに栽培されていた。

今でも大半がこの2品種だけど、甘味ブドウ酒の人気が急落して、70年代半ばに辛口ワインとのシェアが逆転。

独特のフレーバーがある北米系品種は辛口ワインに不向きとの烙印が押され、他の品種、とくにワイン醸造向きとされる欧州系品種への植え替えが急務となった。」

――それで、長野に向いてた品種は?

柳「メルロー。85年が初ヴィンテージの「シャトー・メルシャン 桔梗ヶ原メルロー」は、今なお長野のメルローのベンチマークだし、98年に生まれた「シグナチャー」は、日本ワインの価値基準を大きく変えたと言われている。

ちなみに、このワインの誕生秘話が近々映画化されるらしいよ。」

――おぉ!それは観なければ!

柳「でも……。」

――でも?

柳「メルローが長野に合った品種なのは間違いないけれど、今長野で面白いのはシラーだな。」

長野生まれのシラー
「Chateau Mercian Mariko Syrah 2019(シャトー・メルシャン 椀子シラー 2019)」


東信州の上田市丸子地区にあるシャトー・メルシャンの自社管理畑「椀子ヴィンヤード」のシラーを、オーク樽で約17ヶ月育成。

スミレや赤いベリー系のアロマを、黒コショウなどスパイシーなフレーバーが包み込む。冷涼地らしい酸味と、粒の揃ったタンニンが心地良い。

5,010円/メルシャン TEL:0120-676-757



――シラーって南フランスとかオーストラリアとか、暑い産地向きの品種じゃないんですか?

柳「それが今、オーストラリアでもヴィクトリア州など涼しい産地のシラーが注目されている。

というのも、冷涼地のシラーほどスパイシーなフレーバーが強い。ロタンドンという香り成分が多く含まれ、とくにコショウの香りが顕著に現れると言われているね。

例えばこの「シャトー・メルシャン 椀子シラー」は、黒コショウなどスパイシーな特徴がよく出てる。」

――ひ、ひ、ひっくしょん。

柳「おや、クラリン。ワインに含まれるロタンドンの影響かな?」

――いえ、花粉症です。

日本ワインの金字塔、誕生秘話を映画化!


『ウスケボーイズ』を手掛けた柿崎ゆうじ監督の最新作『シグナチャー』が今秋公開。

長野の名品を造った実在の醸造家、安蔵光弘を平山浩行が演じる。


▶このほか:楽しくって映える“ネオ酒場”が大ブレイク!好奇心をくすぐる、刺激的な新店2選!

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